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三十一話【エドワード視点】

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「エドワード、オリヴィアの様子はどうだ?」

マーティンが心配そうに僕に聞いてきた。そういえば、マーティンはアイザックは婚約解消した方が良いって言っていたな。オリヴィアを解放してあげようって。だけど僕は、ダメだって否定した。僕もアイザックと同じだったんだ。

だってそうしないと、オリヴィアが何処かへ行っちゃうと思ったんだ。自分勝手なのは、僕もだね。

「フラフラになりながら働いてる。ずっとなにか考え込んでる様子だけど、手は動いてる。あの様子だと寝ないで働くつもりだよ」

「なんとか休ませないとまた倒れるぞ」

けど、僕じゃオリヴィアを休ませられない。

「今までならアイザックが言えば休んでくれたけど、今はどうすればオリヴィアを休ませられるか分からないよ」

サイモンが出て来れば休むだろうけど、サイモンは行方不明だ。何かいい手を考えないと。

「あそこまで嫌われるとはな……私がした事を考えたら当然だが……」

「今までのオリヴィアはからは考えられませんが、オリヴィアは本気でアイザック様を嫌っていますね。私も最初は信じられませんでした」

「今更なんだけど、アイザックはオリヴィアの何処が不満だったのさ。あんな良い子、滅多にいないと思うけど」

要らないなら代われって何度も思ったくらいアイザックはオリヴィアに無関心だった。

「……そうだな。今はそう思う。けど、学園に入学してからはそんな事思えなくて……ただただオリヴィアが疎ましかった」

「元々アイザックはオリヴィアを好きじゃなかったもんね」

「オリヴィアと結婚するのだろうとは思っていたが、ロザリーに感じたような感情は持った事がないな」

「正直なのはアイザックの良いところだけど、デリカシーがないよね」

「恐れながら、私もそう思います。あまりにオリヴィアに失礼です」

「……すまん」

オリヴィアがアイザックを見限った理由が分かる。むしろよく今まで耐えててくれたよね。

ロザリーは、そんなアイザックを最低だと罵っていた。ウィルが来て有耶無耶になったけど、あの子なら……王妃になれるのかもしれない。けど、ロザリーはもうアイザックを嫌ってたりしないかな? 僕がロザリーの立場なら、いくらアイザックが好きでも冷める。なんだこのクズとしか思わない。

目の前で仔犬のようにしょぼくれているアイザック。色々気が利かない友人を支えてくれる女性は見つかるのだろうか。

それと……今でも必死で働いてるオリヴィア。彼女はアイザック一筋だった。泣く泣くアイザックを諦めたのかと思ってたけど、違った。今の彼女の方が美しく、可愛らしい。いや、元々可愛かったけど。って、そうじゃなくて!

多分、いろんな男を虜にしているのだろう。オリヴィアを愛しているのだろうなと思う男が何人か思い当たる。オリヴィアは鈍感だから、気が付いてなさそうだけどね。

彼女の婚約が解消されたらすぐにでも誰かに攫われそうだ。それは嫌だな。オリヴィアの笑ってる顔を見るのは僕であって欲しい。

要らないなら代われって何度も思った。けど、大事な友人の婚約者だからと気持ちを押し殺してきた。けど、それももう終わり。

僕は子どもの頃から、オリヴィアが好きなんだ。
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