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1.婚約破棄ですか。ありがとうございます
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「カトリーヌ! お前との婚約を破棄する!」
え、本当ですか?! やったわ! こんな男願い下げですもの。嬉しいわ!
今にも人を殺しそうな目で睨んでいる侍女を目線だけで宥めながら、話を聞く。この様子なら、問題なく国に帰れそうね。ルイーズが押しかけて来た時からこうなる予感はしていたわ。浮気者はわたくしを睨みつけている。ふん! どうせまたわたくしの悪口でも吹き込まれたのでしょう。以前はこんな人ではなかったのに、恋は人を変えてしまうのかしら。
失礼致しました。言葉が乱れてしまいましたわ。
わたくしは、カトリーヌ・ド・ゼムと申します。先日18歳になり成人致しました。職業は、王女をしておりますわ。
同盟国のカドゥール国の王子であるクリストフ様とは、16歳の誕生日を過ぎた頃から婚約を結んでおります。
最初は、とてもお優しいお方でした。この方となら、生涯仲良くやっていける。そう確信しておりました。ですが、わたくしの17歳の誕生日祝いの夜会で全てが変わってしまったのです。
クリストフ様がわたくしの従姉妹のルイーズに一目惚れしたのです。
それからというもの、クリストフ様はルイーズの話ばかり。それだけならまだしもルイーズの戯言を全て信じてしまわれて、わたくしを悪女と呼ぶようになられました。
ルイーズは、お父様の妹の子です。公爵家に臣籍降下したおば様は、王城での暮らしが忘れられないらしく、ルイーズを連れてしょっちゅうお父様を訪ねて来ます。わたくしは幼い頃から勉強がありましたから、あまりルイーズと話す機会はなかったのですが、ルイーズはどうもわたくしをライバル視していたようです。嫉妬心からなのか、優越感からなのか分かりませんが、ベタベタするクリストフ様を諌める事なく受け入れるルイーズは、わたくしの悪口をクリストフ様に吹き込むようになりました。
ルイーズはふわふわとした金髪をしており、男性から人気があります。対するわたくしは、母譲りの黒髪に茶色の瞳です。最近はよくルイーズの方が華やかで王女らしいと陰口を叩かれますわ。それが王妃であるお母様を侮辱していると何故気が付かないのでしょうか。陰口を叩いた者はしっかり記憶してお父様に報告しています。お母様を溺愛しているお父様は、それはそれはにこやかに報告を聞いて下さいます。
わたくし自身は、お母様譲りの黒髪を気に入っております。以前は、クリストフ様もわたくしの黒髪を美しいと褒めて下さっておりました。
現在は……烏のような頭だと馬鹿にされます。烏に失礼ですわ。烏は賢く、好奇心も旺盛な素晴らしい鳥ですのに。
そんな訳でわたくしは婚約者に疎まれるようになりました。何度もお父様に婚約の解消を申し出ましたが、王族が約束を違える事はあってはならぬと許されませんでした。
ならば、ルイーズがお好きのようだから婚約者の交代をと進言しましたが、婚約を取りやめたいわたくしの嘘ではないかと信じてもらえませんでした。ですから、ルイーズとクリストフ様が乳繰り合っている現場をお父様にお見せしました。
さすがにお父様も驚いたようで、ルイーズのお父様であるシャヴァネル公爵とお父様で、密会が行われました。
話し合いの結果……ルイーズはクリストフ様に嫁ぐには知性が足りず、現状維持となりました。クリストフ様は王太子です。ルイーズに王妃は務まらない。つまり、わたくしに犠牲になれという大人達の決定です。
クリストフ様は短期間の滞在予定でしたし、わたくしはクリストフ様とカドゥール国へ行き結婚の準備を行う事になっておりましたから、ルイーズと離れればクリストフ様も正気を取り戻すだろうと言われました。
絶望したわたくしは、一晩中泣きました。
その夜、お母様がわたくしを訪ねて来て教えてくれました。
「カトリーヌ、貴女は時を戻す魔法が生涯で一度だけ使えるわ」
「魔法は、火・土・風・水の4属性だけだったのではないのですか?」
「普通はそうよ。わたくしも、水魔法しか使えないわ」
わたくしも、水魔法が一番得意です。一応、他の属性も使えますが、火魔法に至っては焚き火を起こすくらいしか役に立ちません。
それでも、幼い頃から勉強や修行をしたおかげでは他の人よりは遥かに出来ると自負しております。風魔法で情報伝達をする事や、土人形で簡単な作業をさせる事も出来ます。
お母様に似たのか、水魔法が一番得意ですけどね。水魔法は、使い方によっては怪我を癒す事が可能です。わたくしは腕を無くした騎士を癒した事もあります。生きてさえいれば、四肢が全て失われても元に戻すくらいの技術はあります。残念ながら、病は魔法で治せません。クリストフ様の浮気症も治せませんわ。
いけません、ついつい嫌味を申してしまいました。
時を戻す魔法とは、一体なんでしょうか。
え、本当ですか?! やったわ! こんな男願い下げですもの。嬉しいわ!
今にも人を殺しそうな目で睨んでいる侍女を目線だけで宥めながら、話を聞く。この様子なら、問題なく国に帰れそうね。ルイーズが押しかけて来た時からこうなる予感はしていたわ。浮気者はわたくしを睨みつけている。ふん! どうせまたわたくしの悪口でも吹き込まれたのでしょう。以前はこんな人ではなかったのに、恋は人を変えてしまうのかしら。
失礼致しました。言葉が乱れてしまいましたわ。
わたくしは、カトリーヌ・ド・ゼムと申します。先日18歳になり成人致しました。職業は、王女をしておりますわ。
同盟国のカドゥール国の王子であるクリストフ様とは、16歳の誕生日を過ぎた頃から婚約を結んでおります。
最初は、とてもお優しいお方でした。この方となら、生涯仲良くやっていける。そう確信しておりました。ですが、わたくしの17歳の誕生日祝いの夜会で全てが変わってしまったのです。
クリストフ様がわたくしの従姉妹のルイーズに一目惚れしたのです。
それからというもの、クリストフ様はルイーズの話ばかり。それだけならまだしもルイーズの戯言を全て信じてしまわれて、わたくしを悪女と呼ぶようになられました。
ルイーズは、お父様の妹の子です。公爵家に臣籍降下したおば様は、王城での暮らしが忘れられないらしく、ルイーズを連れてしょっちゅうお父様を訪ねて来ます。わたくしは幼い頃から勉強がありましたから、あまりルイーズと話す機会はなかったのですが、ルイーズはどうもわたくしをライバル視していたようです。嫉妬心からなのか、優越感からなのか分かりませんが、ベタベタするクリストフ様を諌める事なく受け入れるルイーズは、わたくしの悪口をクリストフ様に吹き込むようになりました。
ルイーズはふわふわとした金髪をしており、男性から人気があります。対するわたくしは、母譲りの黒髪に茶色の瞳です。最近はよくルイーズの方が華やかで王女らしいと陰口を叩かれますわ。それが王妃であるお母様を侮辱していると何故気が付かないのでしょうか。陰口を叩いた者はしっかり記憶してお父様に報告しています。お母様を溺愛しているお父様は、それはそれはにこやかに報告を聞いて下さいます。
わたくし自身は、お母様譲りの黒髪を気に入っております。以前は、クリストフ様もわたくしの黒髪を美しいと褒めて下さっておりました。
現在は……烏のような頭だと馬鹿にされます。烏に失礼ですわ。烏は賢く、好奇心も旺盛な素晴らしい鳥ですのに。
そんな訳でわたくしは婚約者に疎まれるようになりました。何度もお父様に婚約の解消を申し出ましたが、王族が約束を違える事はあってはならぬと許されませんでした。
ならば、ルイーズがお好きのようだから婚約者の交代をと進言しましたが、婚約を取りやめたいわたくしの嘘ではないかと信じてもらえませんでした。ですから、ルイーズとクリストフ様が乳繰り合っている現場をお父様にお見せしました。
さすがにお父様も驚いたようで、ルイーズのお父様であるシャヴァネル公爵とお父様で、密会が行われました。
話し合いの結果……ルイーズはクリストフ様に嫁ぐには知性が足りず、現状維持となりました。クリストフ様は王太子です。ルイーズに王妃は務まらない。つまり、わたくしに犠牲になれという大人達の決定です。
クリストフ様は短期間の滞在予定でしたし、わたくしはクリストフ様とカドゥール国へ行き結婚の準備を行う事になっておりましたから、ルイーズと離れればクリストフ様も正気を取り戻すだろうと言われました。
絶望したわたくしは、一晩中泣きました。
その夜、お母様がわたくしを訪ねて来て教えてくれました。
「カトリーヌ、貴女は時を戻す魔法が生涯で一度だけ使えるわ」
「魔法は、火・土・風・水の4属性だけだったのではないのですか?」
「普通はそうよ。わたくしも、水魔法しか使えないわ」
わたくしも、水魔法が一番得意です。一応、他の属性も使えますが、火魔法に至っては焚き火を起こすくらいしか役に立ちません。
それでも、幼い頃から勉強や修行をしたおかげでは他の人よりは遥かに出来ると自負しております。風魔法で情報伝達をする事や、土人形で簡単な作業をさせる事も出来ます。
お母様に似たのか、水魔法が一番得意ですけどね。水魔法は、使い方によっては怪我を癒す事が可能です。わたくしは腕を無くした騎士を癒した事もあります。生きてさえいれば、四肢が全て失われても元に戻すくらいの技術はあります。残念ながら、病は魔法で治せません。クリストフ様の浮気症も治せませんわ。
いけません、ついつい嫌味を申してしまいました。
時を戻す魔法とは、一体なんでしょうか。
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