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19.指輪を付ける時
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フィリップは真面目だから、彼が国の最高責任者になれば無駄遣いを抑えてくれる。最初はキツイかもしれないけど、我が家が独立すれば国土が減るから運営もしやすくなる。わたくしとフィリップが別れるなら、我が家は独立した方が良い。
それくらいしないと、他の高位貴族の不満を抑えられないもの。
国王陛下は、我が家が独立する事を絶対に認めない。だからまず、フィリップを国王にするわ。
その為の根回しは済んでいる。国王陛下のお気に入りの愛妾に、城を出てのんびりしたいと囁いて貰ったのだ。彼女は国王陛下に嫌気がさしていて、愛妾をやめたいらしいのよね。
だから、城を出る時にこっそり逃すと約束した。
愛妾と気兼ねなくいちゃつきたい国王陛下は、あっさりフィリップに爵位を譲ると決めた。まだ公表されてないけど、公爵家と侯爵家は知ってる。
王妃様は、鬱陶しい国王陛下がいなくなって自分が国母として権力を行使できると大歓迎。
フィリップのやる事は全て正しいと言って威張ってるわ。ふふ、ならフィリップの決定には従って貰わないとね。
「……分かった。確かにそれなら問題ない。明日、僕が即位したらすぐ約束を果たす。それまで誰にも言わない。それくらいしか、僕に出来る事はないんだよね。ごめんね」
「充分よ。フィリップが自分の意思を持ってくれて本当に嬉しい。わたくしでは駄目だった。大変な事もあると思うけど、シルビア様と支え合って頑張ってね」
「ありがとう。ごめんね、マーガレット」
「良いのよ。わたくしは行けないけど結婚式を楽しんでね」
まだ我が家が援助したお金が残ってる。素敵な式になるでしょうね。ま、わたくしにはもう関係ないけど。そう思っていたら、フィリップがとんでもない事を言い出した。
「式に出席してくれるよね?」
「え、無理に決まってるでしょ。シルビア様だって、わたくしが参加したら嫌がるに決まってるじゃない」
「そうなの? マーガレットは十年も王家の為に尽くしてくれたし、僕の晴れ舞台を見て欲しかったんだけど……」
は、れ、ぶ、た、い?
わたくしはフィリップの親ではないわ。
そんなもん、見たくない。
イラッとした時に浮かんだのは、マークの意地悪そうな笑みだった。
「無理。フィリップが優先しなきゃいけないのはわたくしじゃなくてシルビア様よ。わたくしが式に来たらシルビア様は嫌がるわ。フィリップは優しいから、大切な伴侶を蔑ろにはしないでしょ? お祝いだけ贈らせて頂くわ」
「そうか。分かったよ。マーガレットにもいい人が現れると良いね」
「そうね。お互い幸せになりましょ」
確かにわたくしは、貴族に向いてない。
貴族なら、王族の依頼を断ってはいけないもの。
……決めたわ。わたくしは絶対、幸せになってみせる。
帰りの馬車で、マークから貰った指輪を身に付けた。
それくらいしないと、他の高位貴族の不満を抑えられないもの。
国王陛下は、我が家が独立する事を絶対に認めない。だからまず、フィリップを国王にするわ。
その為の根回しは済んでいる。国王陛下のお気に入りの愛妾に、城を出てのんびりしたいと囁いて貰ったのだ。彼女は国王陛下に嫌気がさしていて、愛妾をやめたいらしいのよね。
だから、城を出る時にこっそり逃すと約束した。
愛妾と気兼ねなくいちゃつきたい国王陛下は、あっさりフィリップに爵位を譲ると決めた。まだ公表されてないけど、公爵家と侯爵家は知ってる。
王妃様は、鬱陶しい国王陛下がいなくなって自分が国母として権力を行使できると大歓迎。
フィリップのやる事は全て正しいと言って威張ってるわ。ふふ、ならフィリップの決定には従って貰わないとね。
「……分かった。確かにそれなら問題ない。明日、僕が即位したらすぐ約束を果たす。それまで誰にも言わない。それくらいしか、僕に出来る事はないんだよね。ごめんね」
「充分よ。フィリップが自分の意思を持ってくれて本当に嬉しい。わたくしでは駄目だった。大変な事もあると思うけど、シルビア様と支え合って頑張ってね」
「ありがとう。ごめんね、マーガレット」
「良いのよ。わたくしは行けないけど結婚式を楽しんでね」
まだ我が家が援助したお金が残ってる。素敵な式になるでしょうね。ま、わたくしにはもう関係ないけど。そう思っていたら、フィリップがとんでもない事を言い出した。
「式に出席してくれるよね?」
「え、無理に決まってるでしょ。シルビア様だって、わたくしが参加したら嫌がるに決まってるじゃない」
「そうなの? マーガレットは十年も王家の為に尽くしてくれたし、僕の晴れ舞台を見て欲しかったんだけど……」
は、れ、ぶ、た、い?
わたくしはフィリップの親ではないわ。
そんなもん、見たくない。
イラッとした時に浮かんだのは、マークの意地悪そうな笑みだった。
「無理。フィリップが優先しなきゃいけないのはわたくしじゃなくてシルビア様よ。わたくしが式に来たらシルビア様は嫌がるわ。フィリップは優しいから、大切な伴侶を蔑ろにはしないでしょ? お祝いだけ贈らせて頂くわ」
「そうか。分かったよ。マーガレットにもいい人が現れると良いね」
「そうね。お互い幸せになりましょ」
確かにわたくしは、貴族に向いてない。
貴族なら、王族の依頼を断ってはいけないもの。
……決めたわ。わたくしは絶対、幸せになってみせる。
帰りの馬車で、マークから貰った指輪を身に付けた。
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