10 / 27
9.マーク視点1
しおりを挟む
「マークさん。旦那様がお呼びです」
お嬢様に商品を勧めて帰ろうとすると、ダニエルさんに呼び止められた。やっべ。もう伝わってんな。さすが有能執事。
先を越されて怒ってるよなー。
けど、先手必勝だ。マーガレットの外見はクールビューティだけど、中身は乙女だからストレートな愛の言葉が効く。きっと今頃、俺の事で頭がいっぱいになってるだろう。
「分かりました。伺います」
不機嫌なダニエルさんと歩くのは居心地が悪りぃけど、これくらい我慢しよう。多分この人、内心めちゃくちゃムカついてんだろーなぁ。
平民の商人が王太子の婚約者を口説くなんて、前代未聞だもんな。
マーガレットを口説く為に爵位がいるんなら、伯爵までは用意できるけどよ。伯爵家と公爵家ならギリありじゃね? 色んな貴族が俺に借金してるからな。爵位を買うのは簡単じゃねぇが可能だ。膨れ上がって返せそうもねぇ額を借りてるお貴族様も多い。
爵位を売り買い出来るこの国は、爵位の価値が低い。俺みたいに、確実に支払いをしてくれそうな奴に売るのは悪い選択ではない。
「着きました。どうぞごゆっくり」
「……ダニエルさんは、入らないんですか?」
「私は大切な用があるので失礼します」
あーこれ、マーガレットのとこに行くな。
……ちぇ、ライバル登場かよ。ダニエルさんは子爵家の次男だったよな。ちょっと調べておくか。ま、それは後回しだ。
今はまず、どうやって生きて帰るか考えねぇと。
「よく来たな」
部屋に入ると、ハリソン公爵とマーガレットの兄上のルーク様が笑顔で待っていた。
チッ……! 部屋に入った瞬間、殺気を浴びせるんじゃねぇよ!
笑顔で殺気って、この人達くらいしか出来ねぇよな。こんなもんに負ける気はねぇけど。あの甘ちゃん王子なら気絶してんじゃね。
「いつも弊社をご贔屓頂きありがとうございます」
商人の仮面を被り、微笑む。こんなもので騙せるとは思ってねぇが、俺の武器はこれしかねぇからな。
「いつも滞りなく支払いをしていたはずだが、今日はずいぶん法外な報酬を要求したらしいな」
ルーク様が、獲物を見定めるように俺を睨みつける。怖えけど、これくらいは想定内だ。
俺は肩をすくめ、余裕ありげに微笑む。これは商談だ。
「くれ、なんて言ってませんよ。口説く許可を頂きたいとお願いしただけです。それに、まだ許可すら頂いていませんよ」
「まずは我々に話を通すべきだろう」
そんな事したら、手に入らないだろう。だから裏技を使ったんだよ。
「マーガレットは喜んでいた。貴様! いつからマーガレットを狙っていた!」
ルーク様はイライラした様子で俺に殺気を浴びせる。
そう。マーガレットは俺の事を気に入ってくれている。彼女の好みは強く優しい男。だから俺は、体を鍛えて紳士的な振る舞いを身に付けた。
「私は商人です。欲しいものが手に入るチャンスを逃すほど愚かではないのです」
お嬢様に商品を勧めて帰ろうとすると、ダニエルさんに呼び止められた。やっべ。もう伝わってんな。さすが有能執事。
先を越されて怒ってるよなー。
けど、先手必勝だ。マーガレットの外見はクールビューティだけど、中身は乙女だからストレートな愛の言葉が効く。きっと今頃、俺の事で頭がいっぱいになってるだろう。
「分かりました。伺います」
不機嫌なダニエルさんと歩くのは居心地が悪りぃけど、これくらい我慢しよう。多分この人、内心めちゃくちゃムカついてんだろーなぁ。
平民の商人が王太子の婚約者を口説くなんて、前代未聞だもんな。
マーガレットを口説く為に爵位がいるんなら、伯爵までは用意できるけどよ。伯爵家と公爵家ならギリありじゃね? 色んな貴族が俺に借金してるからな。爵位を買うのは簡単じゃねぇが可能だ。膨れ上がって返せそうもねぇ額を借りてるお貴族様も多い。
爵位を売り買い出来るこの国は、爵位の価値が低い。俺みたいに、確実に支払いをしてくれそうな奴に売るのは悪い選択ではない。
「着きました。どうぞごゆっくり」
「……ダニエルさんは、入らないんですか?」
「私は大切な用があるので失礼します」
あーこれ、マーガレットのとこに行くな。
……ちぇ、ライバル登場かよ。ダニエルさんは子爵家の次男だったよな。ちょっと調べておくか。ま、それは後回しだ。
今はまず、どうやって生きて帰るか考えねぇと。
「よく来たな」
部屋に入ると、ハリソン公爵とマーガレットの兄上のルーク様が笑顔で待っていた。
チッ……! 部屋に入った瞬間、殺気を浴びせるんじゃねぇよ!
笑顔で殺気って、この人達くらいしか出来ねぇよな。こんなもんに負ける気はねぇけど。あの甘ちゃん王子なら気絶してんじゃね。
「いつも弊社をご贔屓頂きありがとうございます」
商人の仮面を被り、微笑む。こんなもので騙せるとは思ってねぇが、俺の武器はこれしかねぇからな。
「いつも滞りなく支払いをしていたはずだが、今日はずいぶん法外な報酬を要求したらしいな」
ルーク様が、獲物を見定めるように俺を睨みつける。怖えけど、これくらいは想定内だ。
俺は肩をすくめ、余裕ありげに微笑む。これは商談だ。
「くれ、なんて言ってませんよ。口説く許可を頂きたいとお願いしただけです。それに、まだ許可すら頂いていませんよ」
「まずは我々に話を通すべきだろう」
そんな事したら、手に入らないだろう。だから裏技を使ったんだよ。
「マーガレットは喜んでいた。貴様! いつからマーガレットを狙っていた!」
ルーク様はイライラした様子で俺に殺気を浴びせる。
そう。マーガレットは俺の事を気に入ってくれている。彼女の好みは強く優しい男。だから俺は、体を鍛えて紳士的な振る舞いを身に付けた。
「私は商人です。欲しいものが手に入るチャンスを逃すほど愚かではないのです」
38
お気に入りに追加
2,008
あなたにおすすめの小説
悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました
結城芙由奈
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】
20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ――
※他サイトでも投稿中
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
私のことを嫌っている婚約者に別れを告げたら、何だか様子がおかしいのですが
雪丸
恋愛
エミリアの婚約者、クロードはいつも彼女に冷たい。
それでもクロードを慕って尽くしていたエミリアだが、クロードが男爵令嬢のミアと親しくなり始めたことで、気持ちが離れていく。
エミリアはクロードとの婚約を解消して、新しい人生を歩みたいと考える。しかし、クロードに別れを告げた途端、彼は今までと打って変わってエミリアに構うようになり……
◆エール、ブクマ等ありがとうございます!
◆小説家になろうにも投稿しております
長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
恋も魔力も期限切れですよ。
紺
恋愛
ヴァネッサには王国随一となる守護の力があったが、自覚するよりも先に初恋の青年にその力を奪われてしまう。彼はかねてから守護の力を狙う公爵令嬢と結婚し、奪った力と高貴な立場で英雄へと成り上がった。
───あれから12年。復讐の時を待ち続けていたヴァネッサだが、参加した魔物討伐作戦でとある人物に秘密がバレてしまう。その人とは、真逆の力を持つ国内最強の魔法騎士団長であった。
恋に臆病なヒロイン × 恋に不器用な最強騎士。
ざまぁ必須。徐々に甘々展開。
※誤字脱字にご注意ください。
※ご都合ファンタジーですので実際の歴史や時代背景には一致いたしません。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
【完結保証】あれだけ愚図と罵ったんですから、私がいなくても大丈夫ですよね? 『元』婚約者様?
りーふぃあ
恋愛
有望な子爵家と婚約を結んだ男爵令嬢、レイナ・ミドルダム。
しかし待っていたのは義理の実家に召し使いのように扱われる日々だった。
あるパーティーの日、婚約者のランザス・ロージアは、レイナのドレスを取り上げて妹に渡してしまう。
「悔しかったら婚約破棄でもしてみろ。まあ、お前みたいな愚図にそんな度胸はないだろうけどな」
その瞬間、ぶつん、とレイナの頭の中が何かが切れた。
……いいでしょう。
そんなに私のことが気に入らないなら、こんな婚約はもういりません!
領地に戻ったレイナは領民たちに温かく迎えられる。
さらには学院時代に仲がよかった第一王子のフィリエルにも積極的にアプローチされたりと、幸せな生活を取り戻していく。
一方ロージア領では、領地運営をレイナに押し付けていたせいでだんだん領地の経営がほころび始めて……?
これは義両親の一族に虐められていた男爵令嬢が、周りの人たちに愛されて幸せになっていくお話。
★ ★ ★
※ご都合主義注意です!
※史実とは関係ございません、架空世界のお話です!
※【宣伝】新連載始めました!
婚約破棄されましたが、私は勘違いをしていたようです。
こちらもよろしくお願いします!
欲しいというなら、あげましょう。婚約破棄したら返品は受け付けません。
キョウキョウ
恋愛
侯爵令嬢のヴィオラは、人の欲しがるものを惜しみなく与える癖があった。妹のリリアンに人形をねだられれば快く差し出し、友人が欲しがる小物も迷わず送った。
「自分より強く欲しいと願う人がいるなら、譲るべき」それが彼女の信念だった。
そんなヴィオラは、突然の婚約破棄が告げられる。婚約者である公爵家の御曹司ルーカスは、ヴィオラを「無能」呼ばわりし、妹のリリアンを新たな婚約者に選ぶ。
幼い頃から妹に欲しがられるものを全て与え続けてきたヴィオラだったが、まさか婚約者まで奪われるとは思ってもみなかった。
婚約相手がいなくなったヴィオラに、縁談の話が舞い込む。その相手とは、若手貴族当主のジェイミーという男。
先日ヴィオラに窮地を救ってもらった彼は、恩返しがしたいと申し出るのだった。ヴィオラの「贈り物」があったからこそ、絶体絶命のピンチを脱することができたのだと。
※設定ゆるめ、ご都合主義の作品です。
※カクヨムにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる