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4.王妃は嫌
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「分かった……。マーガレット……やっぱり怒ってるよね?」
「お父様やお兄様がどう思うか知らないけど、わたくしは怒ってないわ。フィリップが自分の気持ちを伝えてくれたのは初めてだもの。嬉しいわ。フィリップがシルビア様と幸せになれるように、色々考えてみましょうね」
「あり……ありがとう……。マーガレット……」
「相変わらず泣き虫ね。そんなんじゃシルビア様に愛想を尽かされるわよ」
「うう……大丈夫。シルビアは……僕が泣いていてもいつも慰めてくれるから……」
「そうなのね。シルビア様とはどんな話をするの?」
「シルビアはいつも、今だけは泣いてくれって言ってくれる。けど、そのあとはいつも僕の悩みを聞いてくれて……解決策を一緒に考えてくれるんだ」
……解決策を考える? それは、もしかしたらマズイのではないかしら。急いで念入りに調査しないと。そう思った私の不安は、次のフィリップの言葉でかき消された。
「シルビアは僕が自分の考えを捻り出すまで、黙って話を聞いてくれるんだ。彼女のおかげで、少しだけ自信が持てるようになったんだよ」
「……そう。わたくしには出来なかった事ね。シルビア様は素敵な方なのね」
「マーガレットには感謝してる。どれだけ感謝してもし足りない。一生、償うよ。けど、僕は人生を共に歩むのはシルビアが良いんだ。王となった時、彼女が隣にいてくるたら僕は自分の意見がちゃんと言える。マーガレットには、本当に申し訳ない事を……」
「良いのよ。わたくしはフィリップに意見を言うばかりで、フィリップの意見を聞けなかったものね」
「そんな事ない……! マーガレットはいつも僕の意思を尊重してくれた。何度も聞いてくれたし、待ってもくれた。けど、僕は自分の意思がなかった」
「王になる為には、フィリップが自分の意思を持つ事が大事よ。だから、シルビア様が必要なのでしょう? けど、今の状態で婚約者を変えようとしてもうまくいかないわ。それは、フィリップも分かってるわよね?」
「うん。分かってる」
「具体的な案はある? シルビア様はなんて言ってるの?」
「案は……まだないよ。シルビアは、側妃になって僕を支えるって言ってる」
「フィリップはそれで良いの?」
王妃になると言わないのね。賢い人だわ。
けど、側妃じゃ困る。
わたくしは、王妃になんてなりたくないのだから。
フィリップが側妃を娶らないなら、フィリップを愛する努力はできるわ。百歩譲って側妃がいてもいいけれど、わたくしが一番でないと嫌。他の女が一番と断言する男と結婚する気はない。たとえ、国王であろうともね。
フィリップはどう思ってるのかしら。
シルビア様を側妃にすれば、問題は解決するように見えるわ。
けど、それは最悪なシナリオの始まりよ。
「僕だって馬鹿じゃない。今の王家に側妃を娶る余裕なんてないよ」
「良かった。現実が見えてない訳ではないのね」
「ああ。マーガレットは分かってると思うけど、王家の宝物庫は空っぽだ」
わたくしは、目を見開いた。以前のフィリップでは決して言わなかった言葉だ。宝物庫の話は、前にもフィリップにしたわ。けど、王位を継ぐまで知らなくて良いと騒いだ国王陛下の言いなりだと思っていた。以前は間違いなくそうだったわ。これは……シルビア様に期待しても良いのかもしれないわね。
「そうね。だから国王陛下は我が家が出す持参金が欲しくて結婚式を早めようとしたのでしょう?」
「多分そう。本当にごめん。急に半年後に結婚式をやれだなんて、無茶苦茶だよね」
無茶苦茶ね。フィリップは国王陛下の言葉に素直に頷いていたから、内心ムカついてたのよね。
「こんな事言うのは不敬だけど……」
「お父様やお兄様がどう思うか知らないけど、わたくしは怒ってないわ。フィリップが自分の気持ちを伝えてくれたのは初めてだもの。嬉しいわ。フィリップがシルビア様と幸せになれるように、色々考えてみましょうね」
「あり……ありがとう……。マーガレット……」
「相変わらず泣き虫ね。そんなんじゃシルビア様に愛想を尽かされるわよ」
「うう……大丈夫。シルビアは……僕が泣いていてもいつも慰めてくれるから……」
「そうなのね。シルビア様とはどんな話をするの?」
「シルビアはいつも、今だけは泣いてくれって言ってくれる。けど、そのあとはいつも僕の悩みを聞いてくれて……解決策を一緒に考えてくれるんだ」
……解決策を考える? それは、もしかしたらマズイのではないかしら。急いで念入りに調査しないと。そう思った私の不安は、次のフィリップの言葉でかき消された。
「シルビアは僕が自分の考えを捻り出すまで、黙って話を聞いてくれるんだ。彼女のおかげで、少しだけ自信が持てるようになったんだよ」
「……そう。わたくしには出来なかった事ね。シルビア様は素敵な方なのね」
「マーガレットには感謝してる。どれだけ感謝してもし足りない。一生、償うよ。けど、僕は人生を共に歩むのはシルビアが良いんだ。王となった時、彼女が隣にいてくるたら僕は自分の意見がちゃんと言える。マーガレットには、本当に申し訳ない事を……」
「良いのよ。わたくしはフィリップに意見を言うばかりで、フィリップの意見を聞けなかったものね」
「そんな事ない……! マーガレットはいつも僕の意思を尊重してくれた。何度も聞いてくれたし、待ってもくれた。けど、僕は自分の意思がなかった」
「王になる為には、フィリップが自分の意思を持つ事が大事よ。だから、シルビア様が必要なのでしょう? けど、今の状態で婚約者を変えようとしてもうまくいかないわ。それは、フィリップも分かってるわよね?」
「うん。分かってる」
「具体的な案はある? シルビア様はなんて言ってるの?」
「案は……まだないよ。シルビアは、側妃になって僕を支えるって言ってる」
「フィリップはそれで良いの?」
王妃になると言わないのね。賢い人だわ。
けど、側妃じゃ困る。
わたくしは、王妃になんてなりたくないのだから。
フィリップが側妃を娶らないなら、フィリップを愛する努力はできるわ。百歩譲って側妃がいてもいいけれど、わたくしが一番でないと嫌。他の女が一番と断言する男と結婚する気はない。たとえ、国王であろうともね。
フィリップはどう思ってるのかしら。
シルビア様を側妃にすれば、問題は解決するように見えるわ。
けど、それは最悪なシナリオの始まりよ。
「僕だって馬鹿じゃない。今の王家に側妃を娶る余裕なんてないよ」
「良かった。現実が見えてない訳ではないのね」
「ああ。マーガレットは分かってると思うけど、王家の宝物庫は空っぽだ」
わたくしは、目を見開いた。以前のフィリップでは決して言わなかった言葉だ。宝物庫の話は、前にもフィリップにしたわ。けど、王位を継ぐまで知らなくて良いと騒いだ国王陛下の言いなりだと思っていた。以前は間違いなくそうだったわ。これは……シルビア様に期待しても良いのかもしれないわね。
「そうね。だから国王陛下は我が家が出す持参金が欲しくて結婚式を早めようとしたのでしょう?」
「多分そう。本当にごめん。急に半年後に結婚式をやれだなんて、無茶苦茶だよね」
無茶苦茶ね。フィリップは国王陛下の言葉に素直に頷いていたから、内心ムカついてたのよね。
「こんな事言うのは不敬だけど……」
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