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星降る世界とお嬢様編
54.お嬢様とかみたちゃんの裏切り
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「クレナちゃん、みなさん。よく頑張りましたねー」
金色に輝く少女が、私たちに近づいてきた。
両手には女の子を抱えている。
まるで、ゲームのエンディングみたいに威厳のある姿なんだけど。
よく見ると手がぷるぷる震えている。
もしかして……だけど。
由衣が重いとか?
「あのー。早く受け取ってもらえませんかー。思ったよりも大変なのでー」
近くにいたガトーくんが慌てて由衣を受け取った。
かみたちゃんは、両手を痛そうに手をさすっている。
その動作が。
すごく可愛くて。
なんだか……。
「……あはは」
思わず笑みがこぼれてくる。
「もう、何で笑うんですかー」
「だって、だってね」
頬を膨らませて抗議してくる彼女。
私はいつのまにか零れ落ちていた涙を拭いて、笑顔を見せた。
ほほえましい風景に安心して……気が緩んだのかな。
「だって、かみたちゃん。神様みたいなものだから、何でもできそうなのに」
「私の体力は、アナタの中学時代と変わりませんからねー?」
そういえば。
かみたちゃんの正体って結局わからないままなんだよね。
本人は過去の王子様への想いって言ってたけど。
どういうことなんだろう。
何故か……心が無意識にブレーキをかけていて。
ずっと聞けなかったけど。
今聞いておかないと後悔する気がする。
「ねぇ、かみたちゃん。やっぱりちゃんと聞きたいんだけど……」
「ああ、暗黒竜のことですか?」
「……え?」
聞きたかったこととは違うけど。
それはそれで気になるよ。
ゲームのハッピーエンドのように。
――私たちは世界をちゃんと救えたのかな。
――美しい星空を守れたのかな?
彼女は腕を一回させると。
手のひらに黒い球体が出現させた。
「かみたちゃん? それって……まさか」
「ええ。みなさんに倒していただいた暗黒竜です」
首を傾けてにっこりと笑うかみたちゃん。
ものすごく嬉しそう。
彼女の手にある黒い影の塊は、まだ怪しげに光を放っているけど。
もう周囲の魔力を吸収したりはしていない。
……これがあの暗黒竜なんだ。
「それじゃあ、これでホントに終わりなんだよね?」
「そうですねー」
彼女の言葉に。
周囲にいたメンバーが一斉に歓喜の声を上げた。
「よし! 無事にゲームクリアね!」
「いやぁ、やっと終わったねー。ホントに良かった」
「クレナちゃん……おめでとうございます!」
「お姉ちゃん! よかったぁぁ」
ふと手にあたたかい感覚が伝わる。
横を見ると、シュトレ様が優しい笑顔で頷いた。
「ホントに。ここまでは、順調でしたよー」
喜ぶ私たちに向けて。
かみたちゃんの静かな言葉が響き渡った。
……え?
……かみたちゃん、今なんて言ったの?
「かみた……ちゃん?」
「ああ、もうこの口調じゃなくていいわね。うん、ビックリするくらい順調だったわ」
彼女は、口元を抑えながら微笑んでいた。
**********
「どういうことだよ。まさかこの後、真のラスボスがあらわれるとかか?」
「そんな展開、ゲームにはなかったわよね?」
かみたちゃんの言葉を聞いて。
ジェラちゃんとガトーくんが慌てて彼女に詰め寄った。
「うーん、説明とか大変なので。今までありがと。意外と楽しかったわ」
彼女は、唇に人差し指を当てながら考える仕草をした後。
私たちにむかって丁寧なお辞儀をした。
「ねぇ? かみたちゃん。どういうこと?」
「だから、説明はしないんだってば。アナタはそのまま、この世界のヒロインでいてくれればいいの」
「なにそれ? 意味わからないよ?」
かみたちゃんの喋り方も表情も。
中学生の頃の私と全く同じ。
まるで過去の自分に話しかけているみたい。
だから……私だから……わかるよ。
彼女は……何かをしようとしてる。
それが何かまではわからないけど……。
嫌な予感が身体中を覆っていく。
「ねぇ、もうやめようよ。暗黒竜はいなくなったんでしょ?」
「これは私とあの人との約束だから」
かみたちゃんは、嬉しそうにささやくと。
手のひらに持っていた黒い塊を、自分の胸に押し付けた。
塊は……。
まるで吸い込まれるように、彼女の体に入っていく。
「かみたちゃん!?」
「ずっとね、この瞬間を待ってたの!」
――次の瞬間。
彼女を覆っていた金色の輝きが消えて。
黒い炎のような光が、全身を包んでいく。
「かみたちゃん……どうしてそんなことを……」
彼女の体が空高く飛び上がると。
周囲に黒い輝きを放ち始める。
やがて周囲に魔物が次々に集まって。
暗黒竜の時と同じように……吸収されていく。
「これどういうこと? かみたちゃんが裏切ったってことよね?」
「……彼女が真のボスってことなのかな?」
「うそだよ! そんなはず……!」
転生してからずっと。
かみたちゃんは私の味方だった。
困ったことが起きた時に、いつも背中をおしてくれた。
シュトレ様への告白の時だって……。
彼女の優しさが嘘だったなんて。
裏切るなんて。
そんなこと……。
……。
…………。
あるわけ。
あるわけないじゃない!
私は、魔力を集中させると、おもいきり上空に飛び上がった。
かみたちゃん!
絶対理由を教えてもらうから!!
金色に輝く少女が、私たちに近づいてきた。
両手には女の子を抱えている。
まるで、ゲームのエンディングみたいに威厳のある姿なんだけど。
よく見ると手がぷるぷる震えている。
もしかして……だけど。
由衣が重いとか?
「あのー。早く受け取ってもらえませんかー。思ったよりも大変なのでー」
近くにいたガトーくんが慌てて由衣を受け取った。
かみたちゃんは、両手を痛そうに手をさすっている。
その動作が。
すごく可愛くて。
なんだか……。
「……あはは」
思わず笑みがこぼれてくる。
「もう、何で笑うんですかー」
「だって、だってね」
頬を膨らませて抗議してくる彼女。
私はいつのまにか零れ落ちていた涙を拭いて、笑顔を見せた。
ほほえましい風景に安心して……気が緩んだのかな。
「だって、かみたちゃん。神様みたいなものだから、何でもできそうなのに」
「私の体力は、アナタの中学時代と変わりませんからねー?」
そういえば。
かみたちゃんの正体って結局わからないままなんだよね。
本人は過去の王子様への想いって言ってたけど。
どういうことなんだろう。
何故か……心が無意識にブレーキをかけていて。
ずっと聞けなかったけど。
今聞いておかないと後悔する気がする。
「ねぇ、かみたちゃん。やっぱりちゃんと聞きたいんだけど……」
「ああ、暗黒竜のことですか?」
「……え?」
聞きたかったこととは違うけど。
それはそれで気になるよ。
ゲームのハッピーエンドのように。
――私たちは世界をちゃんと救えたのかな。
――美しい星空を守れたのかな?
彼女は腕を一回させると。
手のひらに黒い球体が出現させた。
「かみたちゃん? それって……まさか」
「ええ。みなさんに倒していただいた暗黒竜です」
首を傾けてにっこりと笑うかみたちゃん。
ものすごく嬉しそう。
彼女の手にある黒い影の塊は、まだ怪しげに光を放っているけど。
もう周囲の魔力を吸収したりはしていない。
……これがあの暗黒竜なんだ。
「それじゃあ、これでホントに終わりなんだよね?」
「そうですねー」
彼女の言葉に。
周囲にいたメンバーが一斉に歓喜の声を上げた。
「よし! 無事にゲームクリアね!」
「いやぁ、やっと終わったねー。ホントに良かった」
「クレナちゃん……おめでとうございます!」
「お姉ちゃん! よかったぁぁ」
ふと手にあたたかい感覚が伝わる。
横を見ると、シュトレ様が優しい笑顔で頷いた。
「ホントに。ここまでは、順調でしたよー」
喜ぶ私たちに向けて。
かみたちゃんの静かな言葉が響き渡った。
……え?
……かみたちゃん、今なんて言ったの?
「かみた……ちゃん?」
「ああ、もうこの口調じゃなくていいわね。うん、ビックリするくらい順調だったわ」
彼女は、口元を抑えながら微笑んでいた。
**********
「どういうことだよ。まさかこの後、真のラスボスがあらわれるとかか?」
「そんな展開、ゲームにはなかったわよね?」
かみたちゃんの言葉を聞いて。
ジェラちゃんとガトーくんが慌てて彼女に詰め寄った。
「うーん、説明とか大変なので。今までありがと。意外と楽しかったわ」
彼女は、唇に人差し指を当てながら考える仕草をした後。
私たちにむかって丁寧なお辞儀をした。
「ねぇ? かみたちゃん。どういうこと?」
「だから、説明はしないんだってば。アナタはそのまま、この世界のヒロインでいてくれればいいの」
「なにそれ? 意味わからないよ?」
かみたちゃんの喋り方も表情も。
中学生の頃の私と全く同じ。
まるで過去の自分に話しかけているみたい。
だから……私だから……わかるよ。
彼女は……何かをしようとしてる。
それが何かまではわからないけど……。
嫌な予感が身体中を覆っていく。
「ねぇ、もうやめようよ。暗黒竜はいなくなったんでしょ?」
「これは私とあの人との約束だから」
かみたちゃんは、嬉しそうにささやくと。
手のひらに持っていた黒い塊を、自分の胸に押し付けた。
塊は……。
まるで吸い込まれるように、彼女の体に入っていく。
「かみたちゃん!?」
「ずっとね、この瞬間を待ってたの!」
――次の瞬間。
彼女を覆っていた金色の輝きが消えて。
黒い炎のような光が、全身を包んでいく。
「かみたちゃん……どうしてそんなことを……」
彼女の体が空高く飛び上がると。
周囲に黒い輝きを放ち始める。
やがて周囲に魔物が次々に集まって。
暗黒竜の時と同じように……吸収されていく。
「これどういうこと? かみたちゃんが裏切ったってことよね?」
「……彼女が真のボスってことなのかな?」
「うそだよ! そんなはず……!」
転生してからずっと。
かみたちゃんは私の味方だった。
困ったことが起きた時に、いつも背中をおしてくれた。
シュトレ様への告白の時だって……。
彼女の優しさが嘘だったなんて。
裏切るなんて。
そんなこと……。
……。
…………。
あるわけ。
あるわけないじゃない!
私は、魔力を集中させると、おもいきり上空に飛び上がった。
かみたちゃん!
絶対理由を教えてもらうから!!
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