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星降る世界とお嬢様編
11.お嬢様と恋の運命
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ジェラちゃんから告白をされた次の日。
私は彼女の部屋に向かっていた。
ジェラちゃん。
ジェラちゃん。
ジェラちゃん!
ずっとずっと。
小さい頃から一緒だったのに。
私は……彼女の気持ちに全然気づいてなかった。
気づこうとしてなかった。
あらためて、彼女との思い出を振り返ってみたら。
ジェラちゃんはずっとずっと。
私に気持ちをぶつけてきてくれてた。
いつでも本気の彼女に……私は答えてこなかった気がする。
だから、ちゃんと。
逃げないで、今の気持ちを伝えないと。
彼女のいる部屋の前で、何度も大きく深呼吸した。
よし!
行こう!
扉をノックしようとした瞬間。
急に後ろから声をかけられた。
「アンタ……朝からなにしてるのよ?」
「ジェ、ジェラちゃん?!」
振り向くと、ルームウェア姿のジェラちゃんが立っていた。
目が少し……赤い気がする。
「い、いつからそこに?」
「アンタが部屋から出て、廊下を歩いてこの部屋に立ち止まったあたりから?」
「ええええ! それって、ほぼ全部じゃん!」
なにそれ。
ちょっと、恥ずかしすぎるんですけど。
おもわず、その場にしゃがみ込む。
「べ、別にストーカーじゃないわよ? 私も話そうと思ってアンタの部屋に行ったの」
「そうなの?」
話っていうと。
やぱっり昨日の事だよね。
よし、覚悟をきめよう。
そのために来たんだから。
「まぁ、とにかく入りなさいよ。ここで話しても仕方ないでしょ」
「そ、そうだね」
私は彼女に促されて、一緒に部屋に入った。
覚えのある甘い香りが広がっている。
なんだか、すこしだけ気持ちが落ち着いてきた。
……知ってる。
これジェラちゃんの匂いだ。
私たちは、部屋の真ん中で。
向かい合って立っている。
ジェラちゃんはうつむいたまま、私の服をそっとつまんだ。
「私に話があるのよね? き、聞くわよ」
「うん……あのね……」
一晩中考えてきたのに。
本人の前になると、言いたいことがまとまらない。
「えい!」
ジェラちゃんが、急に私の両頬をひっぱった。
「え、ふぁにふるの!」
「寝ていないんでしょ? 目が真っ赤だよ?」
「ジェ、ジェラちゃんこそ!」
彼女の顔を見ると、真っ赤な顔をして。
泣きそうな顔で微笑んでいた。
「アンタに、そんな顔させるつもりなかったのにな……」
それは。
今まで見てきたどんな彼女より、美しくて。
思わず息が止まりそうになる。
「ねぇ、クレナ……」
「うん……」
「わたし達……親友よね?」
「も、もちろんだよ!?」
「……大親友よね?」
「うん! 大親友!」
「私のこと……嫌いじゃないわよね?」
「そんなことあるわけないよ、大好きだよ!」
「よし! 今はそれで満足。答えは保留でいいわ。アンタもそれでいいわよね?」
彼女は大きく伸びをすると、飛び切りの笑顔を見せた。
「ごめん、ありがとう……」
「なによ、あやまらないでよ……」
思わず、ジェラちゃんに抱きついた。
そのまま二人で。
――少しだけ泣いた。
**********
ジェラちゃんと別れて、自分の部屋に戻ると。
赤い頭と、白い頭がひょこっとソファーの後ろから出てきた。
この二人。
それぞれ自分の部屋をもらえたのに、すぐに遊びに来るんだから!
「なぁなぁ、ジェラとの恋バナ、どうなったんだ!?」
「ご主人様……ほどほどにしてくださいね?」
「ちょっと、なにそれ? 別になにもないわよ」
もう。
このドラゴンたちは、からかうの大好きなんだから!
「えー? ご主人様……あれでなにもないとか……本気で言ってます?」
キナコは驚いた表情で固まっている。
ホント、失礼な子なんだから。
「いろいろあったけど、ナイショなの。それだけよ」
「ふーん?」
「あはは、いいんじゃねぇか? 大変だなぁ人間ってのは」
「そんなこと言うんだったら! キナコはティル先輩とどうなったのさ!」
知ってるんだからね。
今でも学校でちょいちょい会ってるの。
キナコが言い出すまで待ってるつもりだったけど。
「えー? それ今気になっちゃいます?」
ティル先輩は、騎士団長の息子で。
乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』だと攻略対象してでてくる美形男子。
中等部の時に、キナコに告白してきたんだよね。
まぁ、その時点では。
ゲームの主人公のナナミちゃんはいなかったわけだし。
高等部になったらどうなるのかなぁ、なんて思ってたんだけど。
キナコは、私の質問に。
にやーっとイタズラっぽく笑った。
なにその顔。
「あのね、ご主人様。ティルくんね、『子供の頃、王宮の訓練場で見かけた赤髪の女の子』が忘れられないんだって」
ん?
「だから、それがキナコなんでしょ?」
「その子は、魔法を使っていて、炎に照らされた赤い髪が印象に残ってるって」
「それで?」
「ねぇ、ご主人様? ボクが王宮の訓練場に人化して行ったのって、中等部からだよ?」
あれ?
そういえば、そうだよね。
それじゃあティル先輩、人違いしてるってこと?
「そうだったんだ。でも、今はキナコの事が好きなんだよね?」
「はぁ……ご主人様、やっぱり病気なんですか? 今ので気づきませんか?」
気づくって何を?
疑問におもって首をひねっていると。
大きなため息をついて。顔を近づけてきた。
「この顔にそっくりな人がいますよね? もう一人!」
「え? もう一人?」
……。
…………。
いや、それはないでしょ。
「私、髪の色赤かったことなんて一度もないよ。別の人でしょ?」
「だーかーらー。炎に照らされて赤かったんですってば。ご主人様の桃色の髪が!」
だめだ。
昨日の夜寝てないし。
ジェラちゃんの話だけで、頭がいっぱいだったから。
頭が理解しようとしてくれない。
「あはは、いやだなぁ、キナコったら。面白い冗談だよね」
「冗談だったら良かったですねー」
よし、寝よう。
もうこれ以上は無理だから。頭が整理できませんから!
「おいおい、星乙女。もうすぐ朝食だぞ。寝てる場合じゃないぞ!」
「ご主人様、おいていっちゃいますよ?」
私はそのままベッドとお友達になることに決めた。
なんでこんなに。
ゲームと色々ちがうのさ!
私は彼女の部屋に向かっていた。
ジェラちゃん。
ジェラちゃん。
ジェラちゃん!
ずっとずっと。
小さい頃から一緒だったのに。
私は……彼女の気持ちに全然気づいてなかった。
気づこうとしてなかった。
あらためて、彼女との思い出を振り返ってみたら。
ジェラちゃんはずっとずっと。
私に気持ちをぶつけてきてくれてた。
いつでも本気の彼女に……私は答えてこなかった気がする。
だから、ちゃんと。
逃げないで、今の気持ちを伝えないと。
彼女のいる部屋の前で、何度も大きく深呼吸した。
よし!
行こう!
扉をノックしようとした瞬間。
急に後ろから声をかけられた。
「アンタ……朝からなにしてるのよ?」
「ジェ、ジェラちゃん?!」
振り向くと、ルームウェア姿のジェラちゃんが立っていた。
目が少し……赤い気がする。
「い、いつからそこに?」
「アンタが部屋から出て、廊下を歩いてこの部屋に立ち止まったあたりから?」
「ええええ! それって、ほぼ全部じゃん!」
なにそれ。
ちょっと、恥ずかしすぎるんですけど。
おもわず、その場にしゃがみ込む。
「べ、別にストーカーじゃないわよ? 私も話そうと思ってアンタの部屋に行ったの」
「そうなの?」
話っていうと。
やぱっり昨日の事だよね。
よし、覚悟をきめよう。
そのために来たんだから。
「まぁ、とにかく入りなさいよ。ここで話しても仕方ないでしょ」
「そ、そうだね」
私は彼女に促されて、一緒に部屋に入った。
覚えのある甘い香りが広がっている。
なんだか、すこしだけ気持ちが落ち着いてきた。
……知ってる。
これジェラちゃんの匂いだ。
私たちは、部屋の真ん中で。
向かい合って立っている。
ジェラちゃんはうつむいたまま、私の服をそっとつまんだ。
「私に話があるのよね? き、聞くわよ」
「うん……あのね……」
一晩中考えてきたのに。
本人の前になると、言いたいことがまとまらない。
「えい!」
ジェラちゃんが、急に私の両頬をひっぱった。
「え、ふぁにふるの!」
「寝ていないんでしょ? 目が真っ赤だよ?」
「ジェ、ジェラちゃんこそ!」
彼女の顔を見ると、真っ赤な顔をして。
泣きそうな顔で微笑んでいた。
「アンタに、そんな顔させるつもりなかったのにな……」
それは。
今まで見てきたどんな彼女より、美しくて。
思わず息が止まりそうになる。
「ねぇ、クレナ……」
「うん……」
「わたし達……親友よね?」
「も、もちろんだよ!?」
「……大親友よね?」
「うん! 大親友!」
「私のこと……嫌いじゃないわよね?」
「そんなことあるわけないよ、大好きだよ!」
「よし! 今はそれで満足。答えは保留でいいわ。アンタもそれでいいわよね?」
彼女は大きく伸びをすると、飛び切りの笑顔を見せた。
「ごめん、ありがとう……」
「なによ、あやまらないでよ……」
思わず、ジェラちゃんに抱きついた。
そのまま二人で。
――少しだけ泣いた。
**********
ジェラちゃんと別れて、自分の部屋に戻ると。
赤い頭と、白い頭がひょこっとソファーの後ろから出てきた。
この二人。
それぞれ自分の部屋をもらえたのに、すぐに遊びに来るんだから!
「なぁなぁ、ジェラとの恋バナ、どうなったんだ!?」
「ご主人様……ほどほどにしてくださいね?」
「ちょっと、なにそれ? 別になにもないわよ」
もう。
このドラゴンたちは、からかうの大好きなんだから!
「えー? ご主人様……あれでなにもないとか……本気で言ってます?」
キナコは驚いた表情で固まっている。
ホント、失礼な子なんだから。
「いろいろあったけど、ナイショなの。それだけよ」
「ふーん?」
「あはは、いいんじゃねぇか? 大変だなぁ人間ってのは」
「そんなこと言うんだったら! キナコはティル先輩とどうなったのさ!」
知ってるんだからね。
今でも学校でちょいちょい会ってるの。
キナコが言い出すまで待ってるつもりだったけど。
「えー? それ今気になっちゃいます?」
ティル先輩は、騎士団長の息子で。
乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』だと攻略対象してでてくる美形男子。
中等部の時に、キナコに告白してきたんだよね。
まぁ、その時点では。
ゲームの主人公のナナミちゃんはいなかったわけだし。
高等部になったらどうなるのかなぁ、なんて思ってたんだけど。
キナコは、私の質問に。
にやーっとイタズラっぽく笑った。
なにその顔。
「あのね、ご主人様。ティルくんね、『子供の頃、王宮の訓練場で見かけた赤髪の女の子』が忘れられないんだって」
ん?
「だから、それがキナコなんでしょ?」
「その子は、魔法を使っていて、炎に照らされた赤い髪が印象に残ってるって」
「それで?」
「ねぇ、ご主人様? ボクが王宮の訓練場に人化して行ったのって、中等部からだよ?」
あれ?
そういえば、そうだよね。
それじゃあティル先輩、人違いしてるってこと?
「そうだったんだ。でも、今はキナコの事が好きなんだよね?」
「はぁ……ご主人様、やっぱり病気なんですか? 今ので気づきませんか?」
気づくって何を?
疑問におもって首をひねっていると。
大きなため息をついて。顔を近づけてきた。
「この顔にそっくりな人がいますよね? もう一人!」
「え? もう一人?」
……。
…………。
いや、それはないでしょ。
「私、髪の色赤かったことなんて一度もないよ。別の人でしょ?」
「だーかーらー。炎に照らされて赤かったんですってば。ご主人様の桃色の髪が!」
だめだ。
昨日の夜寝てないし。
ジェラちゃんの話だけで、頭がいっぱいだったから。
頭が理解しようとしてくれない。
「あはは、いやだなぁ、キナコったら。面白い冗談だよね」
「冗談だったら良かったですねー」
よし、寝よう。
もうこれ以上は無理だから。頭が整理できませんから!
「おいおい、星乙女。もうすぐ朝食だぞ。寝てる場合じゃないぞ!」
「ご主人様、おいていっちゃいますよ?」
私はそのままベッドとお友達になることに決めた。
なんでこんなに。
ゲームと色々ちがうのさ!
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