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魔法学校高等部編
38.お嬢様と扉の奥にあるもの
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大陸の西にある大国『セーレスト神聖法国』。
その地下空間にある封印された扉が開いていく。
「ねぇ、この中になにがあるの?」
私は、隣にいるキナコに耳打ちをした。
扉の入口付近は、封印に使っていた魔法石がラキラと舞っていて。
眩しくて奥があまり見えない。
「ボクも、まさかとは思ってたんですけど……やっぱり……」
キナコは、扉の奥をじっと見つめて動かない。
多分、キナコには見えてるんだ……。
ドラゴンってやっぱりすごいな。
私も、手で光をさえぎりながら、なんとか奥を見ようとしてみる。
「なにをしておられるのですか? さぁ、行きましょう!」
法王様はこちらに向かって振り返ると、両手を広げて笑顔を見せた。
でも……。
なんだろう?
このヘンな違和感を……。
何故か。
この先に……行っちゃいけない気がするんだけど。
私が立ち止まっていると。
不意に、後ろから優しい匂いと共に抱きしめられた。
「大丈夫。何かあっても僕が守るから」
え? なに?
リュート様の顔が……近い。
近いんですけど!
慌てて、彼の腕を振りほどく。
「だ、大丈夫ですよ。行きましょう、リュート様。キナコ」
びっくりした。
昨日、ジェラちゃんが恋愛ルートとか言ってたから。
ヘンに意識しちゃうじゃない!
心配してくれただけだと思う……ううん、思いたいけど。
でも、もしもだけど。
本当にジェラちゃんの言っていた通りなら。
ちゃんと断らないと……。
「……ご主人様、聞いてる?」
「えーと、ゴメン、キナコ」
「……ねぇ、本当に進んでもいいの?」
キナコが真剣な目をして私を見つめている。
なんだか……泣きそうな表情なんだけど。
「……え? キナコどうしたの?」
慌てて肩をつかむと。
彼女は、いつもの表情に戻って、大きなため息をついた。
「まぁ……ボクは何があっても味方しますけどね……」
「……キナコ?」
この奥になにがあるんだろう……。
不安になって、扉の奥を眺めて立ち止まる。
この場に、シュトレ王子が一緒にいてくれたら……。
ううん……。
ちがうよ。
ちがうでしょ、私。
胸にこみあげた思いに、大きく首を振る。
決めたんだから!
一方的に助けてもらうんじゃなくて。
ちゃんと。
彼と一緒に並んで王国を守るんだって!!
――大丈夫。
私は、扉に向かって歩き出した。
**********
封印された扉の奥。
そこは、さっきの部屋よりもさらに広い空間で。
冷たい風が上から吹き付けてくる。
思わず見上げると、天井が高いみたいで……先が見えない。
吹き抜け構造になってるのかな?
「さぁ、竜姫様……こちらへ」
先に進む法王様が、部屋の奥に向かおうとした瞬間。
突然、大きな音がした。
法王様は、顔を抑えてしゃがみ込むと、悔しそうに部屋の奥をにらみつける。
まるで……見えない壁にぶつかったみたいな……。
「なるほど、この先に我々は入れないようですね」
彼は目の前のなにもない空間をこぶしで軽く叩いている。
……なにあれ?
よく見ると。
空間がうっすらと壁のように光っているように見える。
もしかして……魔法結界?
リュート様も、奥の空間に手を伸ばした後、首を横に振った。
「ここまできて……なぜだ! み使いもきたのだぞ!」
法王様は、まるで別人のように。
顔を真っ赤にして、壁をやぶろうと何度も体当たりをはじめた。
「このような壁……伝承にはなかったのだぞ!」
「父上、おやめください!」
制止しようとするリュート様を押しのけると。
なおも壁を壊そうと、呪文を唱え持っていた杖を叩きつける。
大きな音がして、輝きを放っていた杖は根元から折れてしまった。
「バカな……」
折れた杖を呆然と眺め、うずくまるように座り込む。
「あきらめましょう。何度も申しましたが、私には……あの女性がみ使いには………」
「黙れ! 貴様も法王を継ぐ気があるのなら、この結界をなんとかせい!」
「父上……」
「そうじゃ、クレナ様。星乙女なら……この結界をやぶれるのであろう?」
法王様は、よろよろと立ち上がると。
私に向かって歩いてきた。
そのまるで狂気に取りつかれたような姿に。
おもわず、後ずさりする。
「まぁ、ご主人様なら、たぶん通れるよ?」
「え? ちょっと、キナコ……?!」
キナコは、私の手をとると。
勢いよく結界に向かっていった。
「危ない!」
リュート様の大きな声が響き渡る。
私たちは、法王様の伸ばした手をすり抜けて。
結界に向かって飛び飛び込む。
――少しだけ、不思議な抵抗感があって。
勢いよく、結界の内側に倒れこんだ。
「ちょっと……キナコ!」
「ふぅ、成功だね、ご主人様!」
キナコは、ペタンと座ったまま、嬉しそうに目を細めて笑う。
……もう。
そんな顔したら怒れないじゃない。
彼女の頭を優しくなでると、嬉しそうにすりよってきた。
本当に……成長しても猫みたいなんだから。
「ねぇ、ほら、ご主人様。やっぱりいたよ」
突然、キナコが部屋の奥を指さす。
いたって?
なにが?
キナコの見ている方を確認すると。
強大な白い塊が、目に飛び込んできた。
巨大化したキナコと同じくらいの大きさで……本当に……すごく大きい……。
外からはなにもないように見えたのに。
これも結界の効果なのかな。
「キナコさん? これって、もしかして……」
「うん、もしかしてだよ!」
白い塊は、柔らかそうな羽毛に包まれていて。
床の上に丸まっている。
……まるで巨大なまくらみたい。
キナコは口元に手をあてると。
大きな声を上げた。
「いつまで寝てるのさ! 聖竜だいふくもち!」
……。
……え?
……ねぇ今、おかしな名前を言わなかった?
私の聞き間違い?
だよね?
その地下空間にある封印された扉が開いていく。
「ねぇ、この中になにがあるの?」
私は、隣にいるキナコに耳打ちをした。
扉の入口付近は、封印に使っていた魔法石がラキラと舞っていて。
眩しくて奥があまり見えない。
「ボクも、まさかとは思ってたんですけど……やっぱり……」
キナコは、扉の奥をじっと見つめて動かない。
多分、キナコには見えてるんだ……。
ドラゴンってやっぱりすごいな。
私も、手で光をさえぎりながら、なんとか奥を見ようとしてみる。
「なにをしておられるのですか? さぁ、行きましょう!」
法王様はこちらに向かって振り返ると、両手を広げて笑顔を見せた。
でも……。
なんだろう?
このヘンな違和感を……。
何故か。
この先に……行っちゃいけない気がするんだけど。
私が立ち止まっていると。
不意に、後ろから優しい匂いと共に抱きしめられた。
「大丈夫。何かあっても僕が守るから」
え? なに?
リュート様の顔が……近い。
近いんですけど!
慌てて、彼の腕を振りほどく。
「だ、大丈夫ですよ。行きましょう、リュート様。キナコ」
びっくりした。
昨日、ジェラちゃんが恋愛ルートとか言ってたから。
ヘンに意識しちゃうじゃない!
心配してくれただけだと思う……ううん、思いたいけど。
でも、もしもだけど。
本当にジェラちゃんの言っていた通りなら。
ちゃんと断らないと……。
「……ご主人様、聞いてる?」
「えーと、ゴメン、キナコ」
「……ねぇ、本当に進んでもいいの?」
キナコが真剣な目をして私を見つめている。
なんだか……泣きそうな表情なんだけど。
「……え? キナコどうしたの?」
慌てて肩をつかむと。
彼女は、いつもの表情に戻って、大きなため息をついた。
「まぁ……ボクは何があっても味方しますけどね……」
「……キナコ?」
この奥になにがあるんだろう……。
不安になって、扉の奥を眺めて立ち止まる。
この場に、シュトレ王子が一緒にいてくれたら……。
ううん……。
ちがうよ。
ちがうでしょ、私。
胸にこみあげた思いに、大きく首を振る。
決めたんだから!
一方的に助けてもらうんじゃなくて。
ちゃんと。
彼と一緒に並んで王国を守るんだって!!
――大丈夫。
私は、扉に向かって歩き出した。
**********
封印された扉の奥。
そこは、さっきの部屋よりもさらに広い空間で。
冷たい風が上から吹き付けてくる。
思わず見上げると、天井が高いみたいで……先が見えない。
吹き抜け構造になってるのかな?
「さぁ、竜姫様……こちらへ」
先に進む法王様が、部屋の奥に向かおうとした瞬間。
突然、大きな音がした。
法王様は、顔を抑えてしゃがみ込むと、悔しそうに部屋の奥をにらみつける。
まるで……見えない壁にぶつかったみたいな……。
「なるほど、この先に我々は入れないようですね」
彼は目の前のなにもない空間をこぶしで軽く叩いている。
……なにあれ?
よく見ると。
空間がうっすらと壁のように光っているように見える。
もしかして……魔法結界?
リュート様も、奥の空間に手を伸ばした後、首を横に振った。
「ここまできて……なぜだ! み使いもきたのだぞ!」
法王様は、まるで別人のように。
顔を真っ赤にして、壁をやぶろうと何度も体当たりをはじめた。
「このような壁……伝承にはなかったのだぞ!」
「父上、おやめください!」
制止しようとするリュート様を押しのけると。
なおも壁を壊そうと、呪文を唱え持っていた杖を叩きつける。
大きな音がして、輝きを放っていた杖は根元から折れてしまった。
「バカな……」
折れた杖を呆然と眺め、うずくまるように座り込む。
「あきらめましょう。何度も申しましたが、私には……あの女性がみ使いには………」
「黙れ! 貴様も法王を継ぐ気があるのなら、この結界をなんとかせい!」
「父上……」
「そうじゃ、クレナ様。星乙女なら……この結界をやぶれるのであろう?」
法王様は、よろよろと立ち上がると。
私に向かって歩いてきた。
そのまるで狂気に取りつかれたような姿に。
おもわず、後ずさりする。
「まぁ、ご主人様なら、たぶん通れるよ?」
「え? ちょっと、キナコ……?!」
キナコは、私の手をとると。
勢いよく結界に向かっていった。
「危ない!」
リュート様の大きな声が響き渡る。
私たちは、法王様の伸ばした手をすり抜けて。
結界に向かって飛び飛び込む。
――少しだけ、不思議な抵抗感があって。
勢いよく、結界の内側に倒れこんだ。
「ちょっと……キナコ!」
「ふぅ、成功だね、ご主人様!」
キナコは、ペタンと座ったまま、嬉しそうに目を細めて笑う。
……もう。
そんな顔したら怒れないじゃない。
彼女の頭を優しくなでると、嬉しそうにすりよってきた。
本当に……成長しても猫みたいなんだから。
「ねぇ、ほら、ご主人様。やっぱりいたよ」
突然、キナコが部屋の奥を指さす。
いたって?
なにが?
キナコの見ている方を確認すると。
強大な白い塊が、目に飛び込んできた。
巨大化したキナコと同じくらいの大きさで……本当に……すごく大きい……。
外からはなにもないように見えたのに。
これも結界の効果なのかな。
「キナコさん? これって、もしかして……」
「うん、もしかしてだよ!」
白い塊は、柔らかそうな羽毛に包まれていて。
床の上に丸まっている。
……まるで巨大なまくらみたい。
キナコは口元に手をあてると。
大きな声を上げた。
「いつまで寝てるのさ! 聖竜だいふくもち!」
……。
……え?
……ねぇ今、おかしな名前を言わなかった?
私の聞き間違い?
だよね?
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