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魔法学校中等部編
24.お嬢様とふたつの公爵家
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魔法学校の夏休み。
私は、王都じゃなくて。
ハルセルト領に戻ってきている。
魔法学校に行くときに、次に戻ってくるのは……なんて、感傷的になって泣いたのに。
長期休みにふつーに戻って来るなんて。
全然聞いてないんですけど!
でも。
王都の家が嫌いとかじゃないけど。
こっちのほうが、自分の部屋って感じで落ち着く~っ。
ベッドの上でごろごろと転がる。
はぁ、幸せ。
なんだか最近色々あったから。
初めて行ったダンジョンで、帝国の兵士と戦ったり。
魔人と……色々あったし。
私的に、ノーカウントだけど!
グラウス先輩からも告白されて……。
シュトレ王子とも……。
「……キナコ、何見てるのさ」
「ご主人様、表情が色々変わってカワイイ!」
「もう! 見世物じゃないからね!」
ちかくにあった枕を投げる。
「ねぇ、ご主人様。このあとクレイさん達に呼ばれてなかった?」
「あー……。うん。どうせ良いことないからパスで……」
「もう! サボるのはだめだよ!」
「お嬢様方、失礼します!」
突然、部屋の扉があいて。
執事のクレイと、メイド長のセーラ。
あと、メイドさんが数名入ってきた。
「な、な、な! なんでいきなり入ってくるのよ!」
「ノックをしたら、竜姫様いれていただけませんよね?」
ぐっ。
だって、クレイの用意なんて。
絶対お仕事だし、大変なんだもん。
「だいたい、鍵かけてたのに、なんで入れるのよ!」
「それは、私があけたからですわ、お嬢様」
セーラめ!
完全に裏切り者だわ!
「この後、歓迎パーティーがあるって帰りの飛空船でお伝えしましたよね?」
クレイが、張り付いた顔で笑いかける。
怖いんですけど。
キナコを見ると、両手を広げてやれやれってポーズをしている。
「さぁ、今回も世界一可愛くしますよ! みなさまいきますよー!」
「それでは、私は部屋の外でお待ちしてますね」
「もう! ほどほどで大丈夫だってば!」
クレイが部屋を出た後。
私とキナコは、メイド隊プロデュースでめちゃめちゃ可愛くコーデされた。
――それから数日。
私とキナコは、領内の挨拶周りで各地を飛び回っている。
あれ?
私って今、夏休みなんだよね?
なんかすごいスケジュール管理されてるんですけど!
全然休みじゃないんですけど!
**********
その日は。
朝から、お屋敷の様子がおかしかった。
「今日は、旦那様も奥様も用事が出来たそうで。朝食こちらにお持ちしますね」
「なにかあったの?」
「……いえ、べつに」
セーラってば。
何年一緒にいると思ってるのかしら。
一瞬目が泳いだの、気づいてるからね!
でも。
急に、朝食を一緒にとるのをやめるなんて。
こんなの、初めてだよね、
……なにかあったのかな?
「あと、部屋に、魔星鎧を飾っておきましたので」
「え?」
部屋のベッドの近くに。
私とキナコの魔星鎧が置かれていた。
「……やっぱり、なにかあったんだよね?」
「いえいえ、インテリアだとおもってくださいませ」
「インテリアって! おかしくない?」
「貴族の部屋では鎧を飾るなんて、普通なんですよ?」
だから。
目が泳ぎまくってるってば。
「それでは、時間がありませんので、これで失礼します」
「待って! セーラ。ちゃんと説明して!」
「そうそう。今日は、みんな忙しいですので。くれぐれも部屋を出ませんように」
そう言い残すと、セーラは部屋を出ていった。
――おかしい。
絶対なにかあったよね?
セーラが去ったあと。
こっそり扉をあけて、廊下を見ると。
部屋の前には、魔星鎧を着た領兵が二人立っていた。
……あの人たち知ってる。
お父様直属の部下の人だ。
なんだろう。
もしかして、私が脱走しないように?
あーでも。
そんなことに領兵さんなんて使わないよね。
やっぱりなにかあったんだ。
「ねぇ、なにがあったの?」
「お嬢様、部屋をでてはいけません」
「でも……」
「旦那様からオレらがおこられちゃうんで。お願いします」
そんな風に頭をさげられちゃうと、何も聞けないけど。
やっぱり。
これ、ぜったいおかしい!!
ふと、窓の外が目に入った。
空にたくさんの飛空船が飛んでいるのが見える。
なんで?!
たぶん、あれ全部。
――伯爵領の軍艦だ。
心臓がドクンドクンいってるのがわかる
なにこれ。
まるで。
戦争がはじまるみたいじゃない!
乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』の中で思いつくのはふたつ。
クーデターイベントと。
帝国が攻めてくるイベント。
でもなんで?
どっちも、ゲームがはじまる高等部になってからおこるイベントなのに!
「キナコ! これなんだとおもう?!」
そばにいたキナコに話しかける。
「まぁ、ボクはこうなると思ってたけどね」
「え?」
「ご主人様の話してた内容とはちがうけど。多分クーデターだと思うよ」
……クーデター。
ゲームの中では、攻略対象にふられたリリアナが起こすんだけど。
どう考えても、リリーちゃんがこんなことするなんて思えない。
「ねぇ! どういうこと?」
「うーん、ご主人様、気づかなかったんですか?」
「気づくって?」
とにかく。
なにがおきたのか、確認しなくちゃ。
ベランダに出て、空を見ようと思ったんだけど。
扉が全く動かない。
なにこれ?
魔法でロックされてる?
……たぶん、セーラだ。
「大丈夫だよ、ご主人様」
「え?」
振り向くと、キナコが冷静な表情で微笑んだ。
「あわてなくても、相手から動いてくると思うから」
キナコさん?
その表情、怖いんですけど。
**********
試しに、いつもの会議用クリスタルを起動したんだけど。
何の反応もなくて。
一人ならすごく焦ってたと思うんだけど。
キナコがすごく冷静で。
冷静っていうか。
よこで窓を眺めながら、果物を美味しそうに食べている。
すごいな、この子。
まぁ。
確かに。
今って何にも出来ないもんね。
二人で、窓の外を眺めていると。
空に、大きな飛空船がみえてきた。
先に、白い大きな長い旗をつけている。
あれは、伝令用なんですっていう意味で。
どんな戦争でも、絶対に攻撃しちゃいけないルールになっている。
よく見ると、白い旗の下にも、大きな旗がかかっている。
ある紋章は確か。
アランデール公爵家だ!
しばらくして。
部屋の扉が開いて、お父様とお母様がやってきた。
「クレナすまない。一緒に使者を出迎えてもらってもいいかな?」
「お父様、なにがおきたんですか?
「後で説明するから、応接間に来て欲しい」
お母様が私達に近づくと、悲しそうな顔をする。
なにか呪文をとなえた。
え?
声が。でない。
キナコも、同じみたいで。
口をパクパクさせている。
「ゴメンね、クレナちゃん、キナコちゃん。本当はずっと部屋にいてほしかったんだけど」
「使者への話は、私たちがするから。二人は横で聞いてて欲しいんだ」
お父様とお母様の真剣な顔に、私たちはうなずくしかなかった。
なにこれ。
一体何が起きてるの?
私は、王都じゃなくて。
ハルセルト領に戻ってきている。
魔法学校に行くときに、次に戻ってくるのは……なんて、感傷的になって泣いたのに。
長期休みにふつーに戻って来るなんて。
全然聞いてないんですけど!
でも。
王都の家が嫌いとかじゃないけど。
こっちのほうが、自分の部屋って感じで落ち着く~っ。
ベッドの上でごろごろと転がる。
はぁ、幸せ。
なんだか最近色々あったから。
初めて行ったダンジョンで、帝国の兵士と戦ったり。
魔人と……色々あったし。
私的に、ノーカウントだけど!
グラウス先輩からも告白されて……。
シュトレ王子とも……。
「……キナコ、何見てるのさ」
「ご主人様、表情が色々変わってカワイイ!」
「もう! 見世物じゃないからね!」
ちかくにあった枕を投げる。
「ねぇ、ご主人様。このあとクレイさん達に呼ばれてなかった?」
「あー……。うん。どうせ良いことないからパスで……」
「もう! サボるのはだめだよ!」
「お嬢様方、失礼します!」
突然、部屋の扉があいて。
執事のクレイと、メイド長のセーラ。
あと、メイドさんが数名入ってきた。
「な、な、な! なんでいきなり入ってくるのよ!」
「ノックをしたら、竜姫様いれていただけませんよね?」
ぐっ。
だって、クレイの用意なんて。
絶対お仕事だし、大変なんだもん。
「だいたい、鍵かけてたのに、なんで入れるのよ!」
「それは、私があけたからですわ、お嬢様」
セーラめ!
完全に裏切り者だわ!
「この後、歓迎パーティーがあるって帰りの飛空船でお伝えしましたよね?」
クレイが、張り付いた顔で笑いかける。
怖いんですけど。
キナコを見ると、両手を広げてやれやれってポーズをしている。
「さぁ、今回も世界一可愛くしますよ! みなさまいきますよー!」
「それでは、私は部屋の外でお待ちしてますね」
「もう! ほどほどで大丈夫だってば!」
クレイが部屋を出た後。
私とキナコは、メイド隊プロデュースでめちゃめちゃ可愛くコーデされた。
――それから数日。
私とキナコは、領内の挨拶周りで各地を飛び回っている。
あれ?
私って今、夏休みなんだよね?
なんかすごいスケジュール管理されてるんですけど!
全然休みじゃないんですけど!
**********
その日は。
朝から、お屋敷の様子がおかしかった。
「今日は、旦那様も奥様も用事が出来たそうで。朝食こちらにお持ちしますね」
「なにかあったの?」
「……いえ、べつに」
セーラってば。
何年一緒にいると思ってるのかしら。
一瞬目が泳いだの、気づいてるからね!
でも。
急に、朝食を一緒にとるのをやめるなんて。
こんなの、初めてだよね、
……なにかあったのかな?
「あと、部屋に、魔星鎧を飾っておきましたので」
「え?」
部屋のベッドの近くに。
私とキナコの魔星鎧が置かれていた。
「……やっぱり、なにかあったんだよね?」
「いえいえ、インテリアだとおもってくださいませ」
「インテリアって! おかしくない?」
「貴族の部屋では鎧を飾るなんて、普通なんですよ?」
だから。
目が泳ぎまくってるってば。
「それでは、時間がありませんので、これで失礼します」
「待って! セーラ。ちゃんと説明して!」
「そうそう。今日は、みんな忙しいですので。くれぐれも部屋を出ませんように」
そう言い残すと、セーラは部屋を出ていった。
――おかしい。
絶対なにかあったよね?
セーラが去ったあと。
こっそり扉をあけて、廊下を見ると。
部屋の前には、魔星鎧を着た領兵が二人立っていた。
……あの人たち知ってる。
お父様直属の部下の人だ。
なんだろう。
もしかして、私が脱走しないように?
あーでも。
そんなことに領兵さんなんて使わないよね。
やっぱりなにかあったんだ。
「ねぇ、なにがあったの?」
「お嬢様、部屋をでてはいけません」
「でも……」
「旦那様からオレらがおこられちゃうんで。お願いします」
そんな風に頭をさげられちゃうと、何も聞けないけど。
やっぱり。
これ、ぜったいおかしい!!
ふと、窓の外が目に入った。
空にたくさんの飛空船が飛んでいるのが見える。
なんで?!
たぶん、あれ全部。
――伯爵領の軍艦だ。
心臓がドクンドクンいってるのがわかる
なにこれ。
まるで。
戦争がはじまるみたいじゃない!
乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』の中で思いつくのはふたつ。
クーデターイベントと。
帝国が攻めてくるイベント。
でもなんで?
どっちも、ゲームがはじまる高等部になってからおこるイベントなのに!
「キナコ! これなんだとおもう?!」
そばにいたキナコに話しかける。
「まぁ、ボクはこうなると思ってたけどね」
「え?」
「ご主人様の話してた内容とはちがうけど。多分クーデターだと思うよ」
……クーデター。
ゲームの中では、攻略対象にふられたリリアナが起こすんだけど。
どう考えても、リリーちゃんがこんなことするなんて思えない。
「ねぇ! どういうこと?」
「うーん、ご主人様、気づかなかったんですか?」
「気づくって?」
とにかく。
なにがおきたのか、確認しなくちゃ。
ベランダに出て、空を見ようと思ったんだけど。
扉が全く動かない。
なにこれ?
魔法でロックされてる?
……たぶん、セーラだ。
「大丈夫だよ、ご主人様」
「え?」
振り向くと、キナコが冷静な表情で微笑んだ。
「あわてなくても、相手から動いてくると思うから」
キナコさん?
その表情、怖いんですけど。
**********
試しに、いつもの会議用クリスタルを起動したんだけど。
何の反応もなくて。
一人ならすごく焦ってたと思うんだけど。
キナコがすごく冷静で。
冷静っていうか。
よこで窓を眺めながら、果物を美味しそうに食べている。
すごいな、この子。
まぁ。
確かに。
今って何にも出来ないもんね。
二人で、窓の外を眺めていると。
空に、大きな飛空船がみえてきた。
先に、白い大きな長い旗をつけている。
あれは、伝令用なんですっていう意味で。
どんな戦争でも、絶対に攻撃しちゃいけないルールになっている。
よく見ると、白い旗の下にも、大きな旗がかかっている。
ある紋章は確か。
アランデール公爵家だ!
しばらくして。
部屋の扉が開いて、お父様とお母様がやってきた。
「クレナすまない。一緒に使者を出迎えてもらってもいいかな?」
「お父様、なにがおきたんですか?
「後で説明するから、応接間に来て欲しい」
お母様が私達に近づくと、悲しそうな顔をする。
なにか呪文をとなえた。
え?
声が。でない。
キナコも、同じみたいで。
口をパクパクさせている。
「ゴメンね、クレナちゃん、キナコちゃん。本当はずっと部屋にいてほしかったんだけど」
「使者への話は、私たちがするから。二人は横で聞いてて欲しいんだ」
お父様とお母様の真剣な顔に、私たちはうなずくしかなかった。
なにこれ。
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