11 / 66
第1章 復讐の魔女
第10話 リョウの過去
しおりを挟む
「俺はパルケニア王国のデリムという街出身だ。
両親は農奴として毎日働きながら俺を育ててくれた」
そう話すリョウは無表情だった。
自分の感情を必死に押し殺しているのか、それとも記憶が曖昧で何から話したらいいのか考えてるのか……
ともかく私とベレニスは、口を挟まずに静かに話を聞いていった。
「農奴といっても待遇が悪いわけじゃない。
家もあったし、ちゃんと毎日三食食事も食えてた。
だから普通に成長していれば畑仕事を手伝ったり、街に出て雑貨屋で仕入れの手伝いをしたりする人生を送るはずだった。
……俺が5歳の時、デリムの領主が突如パルケニアに反旗を翻すまではな」
リョウは続けて語る。
両親と共に畑で働いていた時に、いきなりデリム領主の家紋が入った鎧を着た騎士たちが家にやってきて、リョウや子供たちをデリム城へと連行したという。
「何人かの大人が斬られ、地に伏している光景も見た。
……俺の両親がどうなったかは覚えていない。
抵抗できず連れ去られた俺たち子供はデリム城で兵士として育てられた。
と言ってもガキだ。要は前線で盾代わりにされる捨て駒だ。
年上からどんどん死んでいった。
まだ俺のようなチビの連中は、城の兵士のストレス発散の道具にされた。
俺たちを殴る蹴るで憂さ晴らしをする奴、泥の中に顔を無理やり押しつけてくる奴、剣を持ち出し斬りつけてくる奴もいた」
そこまで語ったリョウは、痛みに耐えるように歯を食い縛って俯く。
私は何か言葉をかけようと思ったが、何も思い浮かばず話の続きを黙って聞くことにする。
ベレニスも、この話は聞いていて気持ちのいい話じゃないと理解しているのだろう、眉を顰めながら聞いている。
私は口を挟まないと決めた。
リョウが話すのを止めたくなったら止めるし、話して楽になれるのなら好きなだけ話せばいいと思ったからだ。
「飯はカビたパン、寝床は城壁の冷たい地面。
栄養失調で死んでいった奴もいたし、魔物に襲われて食われたやつもいたな。
貴族連中の綺羅びやかな服装で歩く姿を見ても怒る気力すら湧かん。
そんな地獄のような生活が5年ほど続いたある日、1人の男がデリムにやってきて叛乱軍の全権を握り、俺たちの待遇が変わった」
それはパルケニア王国の将軍、ノイズ・グレゴリオという人物。
若年の頃より天才と大陸中に名が響いた存在で、大陸七剣神の1人と呼ばれた人物。
彼は突如デリムに寝返り、叛乱軍の軍事の全てを掌握した。
「生き残ったガキ共はノイズによってちゃんと食事や寝床、正当な戦いの訓練を与えられた。
……みんな喜んだよ。
当然、俺も喜んだし皆のようにノイズを父のように慕い、嬉々として戦場に出てった。
戦場で多くの敵兵を殺して功績をあげれば、ノイズが俺たちを誉め称えてくれたからな」
デリムの少年兵……それはデリム叛乱の末期に、パルケニア王国軍を戦慄させた存在。
既に逃亡して、他国で首を刎ねられたデリム領主。
正規兵も戦死や脱走で残っていない、デリム城での攻防。
最早何故この内戦が続いているのかを、誰もが理解出来ない状況だった。
「1人、また1人と戦死してゆく仲間にノイズは涙を流し、その涙が残った者を強くした。
そんな状況が2年続き、残る少年兵の数も百人を切っていた。
……だがノイズから俺たちに衝撃的な事実が告げられた」
そこでリョウは拳を強く握る。
それは怒りなのか、それとも悲しみなのか……
「奴はこう言った。
『実験は成功だ。お前らもう死んでいいぜ』ってな」
実験……その単語に私は考えてしまった。
もしかして七剣神であるノイズ・グレゴリオという人物が、魔女の人体実験に協力してたんじゃないのかと。
「奴は剣を手にし、残った少年兵を次々と虐殺していった。
笑いながら、まるで狩りをするかのように、な」
リョウの元々怖い目が、さらに鋭くなる。
ゾクリと背筋が寒くなる。
ベレニスが私の腕をギュッと掴んできた。
リョウは続ける。
少年兵たちは必死に戦ったけど、ノイズには勝てず全滅した。
デリム城は開城し、7年に及ぶ内戦は終わりを告げた。
デリム城の異変を察し、城門を強行突破したのは、パルケニア王国に雇われたアラン傭兵団の部隊。
「俺は重傷状態だったそうだ。
数分発見が遅れれば死んでいたらしい。
……俺以外は全員死んだ。
ノイズ・グレゴリオが消息不明と聞いたのは、アラン傭兵団の人たちに助けられた後だ」
リョウの話がひと段落し、ベレニスが思い出したかのように口を開く。
「それで?ビオレール城に単騎突入する意味は何?
ノイズって奴がいるの?」
「ベレニス。急かしすぎ」
「何言ってるのよ重要じゃない。
この傭兵は下手したら、またすぐに飛び出してゆくわよ。
それをまた止めに行くの?
面倒くさいから私はやらないわよ」
「それは、そうだけど」
私がそう言うと、ベレニスはフンっと鼻を鳴らす。
リョウはふう~とため息を吐くと、天井を見上げてボソリと呟いた。
「ノイズへの復讐の一心で、俺はアラン傭兵団で剣を習い正式な団員となった。
だがノイズの行方はわからない。
そんな中、去年起きたダーランド王国の麻薬戦争に参戦した際、ある噂を聞いた。
デリム公の叛乱は、パルケニア王国の貴族トール・カークスとノイズ・グレゴリオが仕掛けた筋書きだとな」
トール・カークス……名前は何度か聞いたことがある。
確かパルケニア王国の貴族で、どうやら裏で色々と悪いことをしてたらしい。
デリム内戦終結直後に行方を晦ましていたが、ベルガー王国宰相テスタ・シャイニング直属の政務官として、近年再び表舞台に姿を現した人物。
「ビオレールへ視察官としてやって来ると情報を掴んだ俺は、カルデ村付近で待ち伏せし襲撃するつもりだった。
だが盗賊騒動が起き、ルートを変更したらしい。
千載一遇の機会を逃したが、まだビオレールの滞在中に機会はある。
そう思って俺はここまで来た」
私と出会い、一緒に盗賊を退治したリョウが、まさかそんな考えで動いていたなんて……
「私に色々親切にしてくれたのは、私も復讐者だと知ったから?」
ふ~んそうなんだとベレニスが横で呟く中、リョウの瞳が私を見つめる。
「何故止めた?ローゼには関係ない俺の話だ。
ローゼも復讐者ならわかるはずだ」
言われて私は言葉に詰まる。
たしかにその通りだったからだ。
だが、止めたいという衝動は私の中に強くあった。
何故なのかは解らないが、リョウには死んで欲しくないという想いが強くあったからだ。
「無意味で無価値な自己満足の死を、ローゼがわざわざ止めてあげたのに何もわかってないわねこの男」
「なに⁉」
ベレニスの挑発的な言葉に、リョウが怒りの声を発する。
「ローゼはアンタが死ぬと困るから助けたのよ。
そんなのもわからないなんて、ホントおバカね」
ベレニスの言葉に私はハッとなる。
そうか……そうだったのか。私はリョウが死ぬと困るんだ。
それは何故か? 魔女ディルと別れて初めて出会った人だから?
黒髪の容姿と漆黒の剣が、私の復讐相手の手がかりになると思ったから?
……ううん違う。
私は、私がこの人を死なせたくないと思っているんだ。
「……ベレニス。ありがとう」
私の言葉にベレニスはクスっと笑い、リョウは何が何だかわからないといった表情を浮かべていた。
「リョウ、確かに私も復讐者。
……けれど私は自分が死ぬ気なんてないし、復讐を果たすのに殺害の方法を考えているわけじゃない。
私の目的は、あくまでも復讐相手の正体と目的を知ること」
私は魔女ディルによって、王女だった過去を消された存在。
たとえ私利私欲だと罵られても、それが私の選んだ道だから……
「それにやりたい事もいっぱいあるし。
大陸中の魔導書や歴史書や大衆小説を読み漁りたいし、七英雄の足跡を巡ってみたい。
歴史や魔法の研究もしたいし、あと今って魔女は、アラン傭兵団とか冒険者ギルドのような組織ってないから作りたいし、他にも困ってる人を目の前にしたら助けたいし。
う~ん、いっぱいありすぎて困るぐらいかな」
私のやりたい事や想いに、ベレニスとリョウは口をポカーンとした表情で聞いていた。
「ローゼって、本当に変わってるわね」
「ええ!なんでよ」
ベレニスの呆れ顔に私は頰を膨らませ、フフッと笑う。
リョウもつられてクスッと笑った。
「お腹空いたからご飯食べてくるわ。
あ~あ、傭兵のせいで今日から冒険者デビューして、バンバンお金稼ぐ予定が狂ったじゃない。
責任取りなさいよね。
あっ!夕飯代もないんだから奢りなさいよ!」
パタンと扉が閉まり、ベレニスが出ていく。
「エルフは自由奔放ってよく書物に書かれてたけど、聞きしに勝るとはこの事ね。
……えっと、それでリョウどうするの?」
「復讐を諦めたわけじゃない。
だが、今は短絡な行動は控えるさ。
……それとこの部屋はローゼとベレニスが使え。
俺は別の宿を探す。
女の子2人と同じ宿に泊まるのはどうかと思うからな」
「あはは、そうだね」
1人になって、また単身復讐を果たす気なんじゃないかと脳裏によぎる。
「……明日、冒険者ギルドで待ち合わせしよう。
それでいいか?」
「うん。それでいいよ」
私の不安が顔に出たのか、リョウからの提案。
ベレニスの向かった先に一緒に行く中で、私はリョウが復讐心を抱えながら孤独に生きる未来を想像して、何だか寂しくなってしまう。
私が何とかしてあげないと……
歩き出したリョウの背中を見て、私はそう思った。
両親は農奴として毎日働きながら俺を育ててくれた」
そう話すリョウは無表情だった。
自分の感情を必死に押し殺しているのか、それとも記憶が曖昧で何から話したらいいのか考えてるのか……
ともかく私とベレニスは、口を挟まずに静かに話を聞いていった。
「農奴といっても待遇が悪いわけじゃない。
家もあったし、ちゃんと毎日三食食事も食えてた。
だから普通に成長していれば畑仕事を手伝ったり、街に出て雑貨屋で仕入れの手伝いをしたりする人生を送るはずだった。
……俺が5歳の時、デリムの領主が突如パルケニアに反旗を翻すまではな」
リョウは続けて語る。
両親と共に畑で働いていた時に、いきなりデリム領主の家紋が入った鎧を着た騎士たちが家にやってきて、リョウや子供たちをデリム城へと連行したという。
「何人かの大人が斬られ、地に伏している光景も見た。
……俺の両親がどうなったかは覚えていない。
抵抗できず連れ去られた俺たち子供はデリム城で兵士として育てられた。
と言ってもガキだ。要は前線で盾代わりにされる捨て駒だ。
年上からどんどん死んでいった。
まだ俺のようなチビの連中は、城の兵士のストレス発散の道具にされた。
俺たちを殴る蹴るで憂さ晴らしをする奴、泥の中に顔を無理やり押しつけてくる奴、剣を持ち出し斬りつけてくる奴もいた」
そこまで語ったリョウは、痛みに耐えるように歯を食い縛って俯く。
私は何か言葉をかけようと思ったが、何も思い浮かばず話の続きを黙って聞くことにする。
ベレニスも、この話は聞いていて気持ちのいい話じゃないと理解しているのだろう、眉を顰めながら聞いている。
私は口を挟まないと決めた。
リョウが話すのを止めたくなったら止めるし、話して楽になれるのなら好きなだけ話せばいいと思ったからだ。
「飯はカビたパン、寝床は城壁の冷たい地面。
栄養失調で死んでいった奴もいたし、魔物に襲われて食われたやつもいたな。
貴族連中の綺羅びやかな服装で歩く姿を見ても怒る気力すら湧かん。
そんな地獄のような生活が5年ほど続いたある日、1人の男がデリムにやってきて叛乱軍の全権を握り、俺たちの待遇が変わった」
それはパルケニア王国の将軍、ノイズ・グレゴリオという人物。
若年の頃より天才と大陸中に名が響いた存在で、大陸七剣神の1人と呼ばれた人物。
彼は突如デリムに寝返り、叛乱軍の軍事の全てを掌握した。
「生き残ったガキ共はノイズによってちゃんと食事や寝床、正当な戦いの訓練を与えられた。
……みんな喜んだよ。
当然、俺も喜んだし皆のようにノイズを父のように慕い、嬉々として戦場に出てった。
戦場で多くの敵兵を殺して功績をあげれば、ノイズが俺たちを誉め称えてくれたからな」
デリムの少年兵……それはデリム叛乱の末期に、パルケニア王国軍を戦慄させた存在。
既に逃亡して、他国で首を刎ねられたデリム領主。
正規兵も戦死や脱走で残っていない、デリム城での攻防。
最早何故この内戦が続いているのかを、誰もが理解出来ない状況だった。
「1人、また1人と戦死してゆく仲間にノイズは涙を流し、その涙が残った者を強くした。
そんな状況が2年続き、残る少年兵の数も百人を切っていた。
……だがノイズから俺たちに衝撃的な事実が告げられた」
そこでリョウは拳を強く握る。
それは怒りなのか、それとも悲しみなのか……
「奴はこう言った。
『実験は成功だ。お前らもう死んでいいぜ』ってな」
実験……その単語に私は考えてしまった。
もしかして七剣神であるノイズ・グレゴリオという人物が、魔女の人体実験に協力してたんじゃないのかと。
「奴は剣を手にし、残った少年兵を次々と虐殺していった。
笑いながら、まるで狩りをするかのように、な」
リョウの元々怖い目が、さらに鋭くなる。
ゾクリと背筋が寒くなる。
ベレニスが私の腕をギュッと掴んできた。
リョウは続ける。
少年兵たちは必死に戦ったけど、ノイズには勝てず全滅した。
デリム城は開城し、7年に及ぶ内戦は終わりを告げた。
デリム城の異変を察し、城門を強行突破したのは、パルケニア王国に雇われたアラン傭兵団の部隊。
「俺は重傷状態だったそうだ。
数分発見が遅れれば死んでいたらしい。
……俺以外は全員死んだ。
ノイズ・グレゴリオが消息不明と聞いたのは、アラン傭兵団の人たちに助けられた後だ」
リョウの話がひと段落し、ベレニスが思い出したかのように口を開く。
「それで?ビオレール城に単騎突入する意味は何?
ノイズって奴がいるの?」
「ベレニス。急かしすぎ」
「何言ってるのよ重要じゃない。
この傭兵は下手したら、またすぐに飛び出してゆくわよ。
それをまた止めに行くの?
面倒くさいから私はやらないわよ」
「それは、そうだけど」
私がそう言うと、ベレニスはフンっと鼻を鳴らす。
リョウはふう~とため息を吐くと、天井を見上げてボソリと呟いた。
「ノイズへの復讐の一心で、俺はアラン傭兵団で剣を習い正式な団員となった。
だがノイズの行方はわからない。
そんな中、去年起きたダーランド王国の麻薬戦争に参戦した際、ある噂を聞いた。
デリム公の叛乱は、パルケニア王国の貴族トール・カークスとノイズ・グレゴリオが仕掛けた筋書きだとな」
トール・カークス……名前は何度か聞いたことがある。
確かパルケニア王国の貴族で、どうやら裏で色々と悪いことをしてたらしい。
デリム内戦終結直後に行方を晦ましていたが、ベルガー王国宰相テスタ・シャイニング直属の政務官として、近年再び表舞台に姿を現した人物。
「ビオレールへ視察官としてやって来ると情報を掴んだ俺は、カルデ村付近で待ち伏せし襲撃するつもりだった。
だが盗賊騒動が起き、ルートを変更したらしい。
千載一遇の機会を逃したが、まだビオレールの滞在中に機会はある。
そう思って俺はここまで来た」
私と出会い、一緒に盗賊を退治したリョウが、まさかそんな考えで動いていたなんて……
「私に色々親切にしてくれたのは、私も復讐者だと知ったから?」
ふ~んそうなんだとベレニスが横で呟く中、リョウの瞳が私を見つめる。
「何故止めた?ローゼには関係ない俺の話だ。
ローゼも復讐者ならわかるはずだ」
言われて私は言葉に詰まる。
たしかにその通りだったからだ。
だが、止めたいという衝動は私の中に強くあった。
何故なのかは解らないが、リョウには死んで欲しくないという想いが強くあったからだ。
「無意味で無価値な自己満足の死を、ローゼがわざわざ止めてあげたのに何もわかってないわねこの男」
「なに⁉」
ベレニスの挑発的な言葉に、リョウが怒りの声を発する。
「ローゼはアンタが死ぬと困るから助けたのよ。
そんなのもわからないなんて、ホントおバカね」
ベレニスの言葉に私はハッとなる。
そうか……そうだったのか。私はリョウが死ぬと困るんだ。
それは何故か? 魔女ディルと別れて初めて出会った人だから?
黒髪の容姿と漆黒の剣が、私の復讐相手の手がかりになると思ったから?
……ううん違う。
私は、私がこの人を死なせたくないと思っているんだ。
「……ベレニス。ありがとう」
私の言葉にベレニスはクスっと笑い、リョウは何が何だかわからないといった表情を浮かべていた。
「リョウ、確かに私も復讐者。
……けれど私は自分が死ぬ気なんてないし、復讐を果たすのに殺害の方法を考えているわけじゃない。
私の目的は、あくまでも復讐相手の正体と目的を知ること」
私は魔女ディルによって、王女だった過去を消された存在。
たとえ私利私欲だと罵られても、それが私の選んだ道だから……
「それにやりたい事もいっぱいあるし。
大陸中の魔導書や歴史書や大衆小説を読み漁りたいし、七英雄の足跡を巡ってみたい。
歴史や魔法の研究もしたいし、あと今って魔女は、アラン傭兵団とか冒険者ギルドのような組織ってないから作りたいし、他にも困ってる人を目の前にしたら助けたいし。
う~ん、いっぱいありすぎて困るぐらいかな」
私のやりたい事や想いに、ベレニスとリョウは口をポカーンとした表情で聞いていた。
「ローゼって、本当に変わってるわね」
「ええ!なんでよ」
ベレニスの呆れ顔に私は頰を膨らませ、フフッと笑う。
リョウもつられてクスッと笑った。
「お腹空いたからご飯食べてくるわ。
あ~あ、傭兵のせいで今日から冒険者デビューして、バンバンお金稼ぐ予定が狂ったじゃない。
責任取りなさいよね。
あっ!夕飯代もないんだから奢りなさいよ!」
パタンと扉が閉まり、ベレニスが出ていく。
「エルフは自由奔放ってよく書物に書かれてたけど、聞きしに勝るとはこの事ね。
……えっと、それでリョウどうするの?」
「復讐を諦めたわけじゃない。
だが、今は短絡な行動は控えるさ。
……それとこの部屋はローゼとベレニスが使え。
俺は別の宿を探す。
女の子2人と同じ宿に泊まるのはどうかと思うからな」
「あはは、そうだね」
1人になって、また単身復讐を果たす気なんじゃないかと脳裏によぎる。
「……明日、冒険者ギルドで待ち合わせしよう。
それでいいか?」
「うん。それでいいよ」
私の不安が顔に出たのか、リョウからの提案。
ベレニスの向かった先に一緒に行く中で、私はリョウが復讐心を抱えながら孤独に生きる未来を想像して、何だか寂しくなってしまう。
私が何とかしてあげないと……
歩き出したリョウの背中を見て、私はそう思った。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話
島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。
俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる