10 / 111
第1章 復讐の魔女
第9話 宿屋にて
しおりを挟む
ビオレールの冒険者ギルドの横に宿があるのは、やはり冒険者の宿泊を狙ってのことだろうか。
宿屋は木造3階建ての建物で、1階が酒場と宿の受付になっている。
「お代は1人小銀貨2枚よ。
一応言っておくけど、めっちゃ重そうな男を背負ってるけど、酔わして部屋連れ込んでベッドに寝かせて、起きたら犯されたんだから金よこせなんてのはなしにしてくれよ」
宿の受付に座った20代半ばぐらいの女性から、とんでもないことを欠伸交じりで言われた。
どうしたらそんな発想になるんだっての。
「ローゼ。私お金ないわよ」
「はいはい、じゃあ小銀貨6枚出します」
ベレニスに適当に相槌打ってから、受付の女性にお金を渡す。
「部屋は一つしか空いてないからね。
ベッドを汚したら追加で金貰うよ」
部屋の鍵を受け取り、軽く頭を下げてから宿の受付を後にする。
場所は3階の一番奥にある部屋。
鍵を差し込んで開けると、小さな部屋でベッドが一つだけ置いてあった。
一応シーツとかは新しいみたい。
リョウをベッドに寝かせると、ふうっとため息が自然と出てきた。
「風魔法をずっと発動させて運ぶなんて、面白いことするのねローゼ。
それにこの男を眠らせた魔法もさあ、あれ多分ゴーレムにも効くわよ。
てかそんな強大な魔力を浴びたんだし、これいつ目覚めるかわかんなくない?」
ベレニスがリョウの顔の前で、手をヒラヒラと振りながらあっけらかんと言う。
「いやいやいや、ゴーレムって無機物だし」
「ふ~ん、まあいいわ。
それで?これからどうすんの?」
「まあ見てて」
杖に意識を集中させてゆく。
回復魔法は得意ではないけど、睡眠魔法を解くのは出来るはず。
要は魔法を解くか、もしくは眠気を追い払うイメージで魔力を解放させれば良いのだ。
そう考えて杖に魔力を流し込むと、リョウの体がピクリと動く。
「目覚められてもなんか面倒になりそうだし、縛っておいたほうがよくない?」
「いやいや、縛ったら目覚めた時にもっとめんどくさいよ」
ベレニスが木製のロープを持って、リョウの体を縛り始めようとするので慌てて止める。
私はベッドの端に座り込んで意識を集中させる。
そして杖に魔力を流し込みながら、ついでに初級魔法であるライトを発動して部屋の中を照らす。
闇を払う光、それがライト。
光属性を持っていなくても使える魔法で、私もたまに夜寝る前にベッドサイドランプ代わりに使っている。
眩しくしたら起きるでしょ。
「うっく……ここは?
……何がどうなってんだ?」
ようやくリョウの意識が戻ったらしく、上半身を起き上がらせて私とベレニスの顔を見てから、クソっと悪態をついて項垂れる。
「うわ~、これだから男ってのは。
素直にお礼言ったらどうなのよ」
ベレニスが腕を組みながら、呆れたようにリョウを見下ろしてゆく。
「お礼だと?」
「あんた城の前で、お偉いさんたちに斬りつけようとか考えてたでしょ?
やっていたら死んでたわよ。
特攻するバカなんて初めて見たわ」
「……その場で勝っても数千のビオレール兵に追われ、王国全土に指名手配される。
結果、待ってるのは無惨な死。
……そんなこともわからないリョウじゃないでしょ?」
私がそう言うけど、リョウはフンと鼻を鳴らし、そっぽを向く。
「うわ~何その態度、超ムカつくんだけど。
ローゼ、こいつ追い出そうよ。
てかベッド一つしかないし、寝ないならどいてほしいんだけど」
ベレニスがリョウに、今にも蹴りを入れそうな感じで言う。
「話したくないなら無理に聞かないけど、命を無駄にしてほしくないかな?
ほら?偶然出会ったのも何かの縁だしさ。
それにリョウは悪い人じゃないって私は思うし」
私がそう話すとベレニスが、はあ~っと深いため息を吐いてから頭を左右に振るう。
「女にこんなこと言わせる男なんて最低ね。
でもここから何も話さない男はもっと最低よ」
ベレニスの言うことも一理あるけど、私はリョウが何か理由があってこんな行動をしたと信じてる。
だから……
私がベッドの端に座ると、その横にベレニスも座る。
そして私とベレニスは、じーっと無言でリョウを見つめるのだった。
「はあ……わかったよ、話せばいいんだろ話せば」
リョウは諦めたかのように深いため息を吐くと、ポツリポツリと話し出した。
宿屋は木造3階建ての建物で、1階が酒場と宿の受付になっている。
「お代は1人小銀貨2枚よ。
一応言っておくけど、めっちゃ重そうな男を背負ってるけど、酔わして部屋連れ込んでベッドに寝かせて、起きたら犯されたんだから金よこせなんてのはなしにしてくれよ」
宿の受付に座った20代半ばぐらいの女性から、とんでもないことを欠伸交じりで言われた。
どうしたらそんな発想になるんだっての。
「ローゼ。私お金ないわよ」
「はいはい、じゃあ小銀貨6枚出します」
ベレニスに適当に相槌打ってから、受付の女性にお金を渡す。
「部屋は一つしか空いてないからね。
ベッドを汚したら追加で金貰うよ」
部屋の鍵を受け取り、軽く頭を下げてから宿の受付を後にする。
場所は3階の一番奥にある部屋。
鍵を差し込んで開けると、小さな部屋でベッドが一つだけ置いてあった。
一応シーツとかは新しいみたい。
リョウをベッドに寝かせると、ふうっとため息が自然と出てきた。
「風魔法をずっと発動させて運ぶなんて、面白いことするのねローゼ。
それにこの男を眠らせた魔法もさあ、あれ多分ゴーレムにも効くわよ。
てかそんな強大な魔力を浴びたんだし、これいつ目覚めるかわかんなくない?」
ベレニスがリョウの顔の前で、手をヒラヒラと振りながらあっけらかんと言う。
「いやいやいや、ゴーレムって無機物だし」
「ふ~ん、まあいいわ。
それで?これからどうすんの?」
「まあ見てて」
杖に意識を集中させてゆく。
回復魔法は得意ではないけど、睡眠魔法を解くのは出来るはず。
要は魔法を解くか、もしくは眠気を追い払うイメージで魔力を解放させれば良いのだ。
そう考えて杖に魔力を流し込むと、リョウの体がピクリと動く。
「目覚められてもなんか面倒になりそうだし、縛っておいたほうがよくない?」
「いやいや、縛ったら目覚めた時にもっとめんどくさいよ」
ベレニスが木製のロープを持って、リョウの体を縛り始めようとするので慌てて止める。
私はベッドの端に座り込んで意識を集中させる。
そして杖に魔力を流し込みながら、ついでに初級魔法であるライトを発動して部屋の中を照らす。
闇を払う光、それがライト。
光属性を持っていなくても使える魔法で、私もたまに夜寝る前にベッドサイドランプ代わりに使っている。
眩しくしたら起きるでしょ。
「うっく……ここは?
……何がどうなってんだ?」
ようやくリョウの意識が戻ったらしく、上半身を起き上がらせて私とベレニスの顔を見てから、クソっと悪態をついて項垂れる。
「うわ~、これだから男ってのは。
素直にお礼言ったらどうなのよ」
ベレニスが腕を組みながら、呆れたようにリョウを見下ろしてゆく。
「お礼だと?」
「あんた城の前で、お偉いさんたちに斬りつけようとか考えてたでしょ?
やっていたら死んでたわよ。
特攻するバカなんて初めて見たわ」
「……その場で勝っても数千のビオレール兵に追われ、王国全土に指名手配される。
結果、待ってるのは無惨な死。
……そんなこともわからないリョウじゃないでしょ?」
私がそう言うけど、リョウはフンと鼻を鳴らし、そっぽを向く。
「うわ~何その態度、超ムカつくんだけど。
ローゼ、こいつ追い出そうよ。
てかベッド一つしかないし、寝ないならどいてほしいんだけど」
ベレニスがリョウに、今にも蹴りを入れそうな感じで言う。
「話したくないなら無理に聞かないけど、命を無駄にしてほしくないかな?
ほら?偶然出会ったのも何かの縁だしさ。
それにリョウは悪い人じゃないって私は思うし」
私がそう話すとベレニスが、はあ~っと深いため息を吐いてから頭を左右に振るう。
「女にこんなこと言わせる男なんて最低ね。
でもここから何も話さない男はもっと最低よ」
ベレニスの言うことも一理あるけど、私はリョウが何か理由があってこんな行動をしたと信じてる。
だから……
私がベッドの端に座ると、その横にベレニスも座る。
そして私とベレニスは、じーっと無言でリョウを見つめるのだった。
「はあ……わかったよ、話せばいいんだろ話せば」
リョウは諦めたかのように深いため息を吐くと、ポツリポツリと話し出した。
1
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
ザ・聖女~戦場を焼き尽くすは、神敵滅殺の聖女ビームッ!~
右薙光介
ファンタジー
長き平和の後、魔王復活の兆しあるエルメリア王国。
そんな中、神託によって聖女の降臨が予言される。
「光の刻印を持つ小麦と空の娘は、暗き道を照らし、闇を裂き、我らを悠久の平穏へと導くであろう……」
予言から五年。
魔王の脅威にさらされるエルメリア王国はいまだ聖女を見いだせずにいた。
そんな時、スラムで一人の聖女候補が〝確保〟される。
スラム生まれスラム育ち。狂犬の様に凶暴な彼女は、果たして真の聖女なのか。
金に目がくらんだ聖女候補セイラが、戦場を焼く尽くす聖なるファンタジー、ここに開幕!
男装の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。
領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。
しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。
だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。
そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。
なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる