上 下
149 / 151

第百四十九話

しおりを挟む
 今日はカトリーヌとブレンダが来ている。朝からエリシアが張り切って剣術を教えている。エルナは教会で読み書き計算の勉強らしい。

 俺はと言うとラガーが完成したので、どう広めるか考え中だ。

 多分、昼の休憩では軽食が食べたいと言って来るだろうから、何か作らないとな。何にしようか考えた挙句、手軽に作れる焼うどんをチョイスした。

 基本焼きそばと変わらないのでもやしと、ニラに似た野菜を入れようと思う。

 肉はオークのバラ肉で良いだろう。

 中力粉をこねてうどん生地を作って行く。焼うどんにするならコシはあまり無い方が美味いのであまりこねる時間を長くしないのがコツだ。うどんが出来たら茹でて冷蔵庫で冷やして置く。

 お昼になったらサッと炒めて出せば良いだろう。

 流石にDランクのカトリーヌとブレンダは、エリシアのしごきにはついて行けないようで時々休みを挟んでいる。エリシアは若干物足りなげな顔をしている。

 そこへミント達『暁の乙女』が合流する。カトリーヌとブレンダが更にげっそりとした顔になる。

 流石に可愛そうなので昼飯にしようと声を掛けた。

 焼うどんをサッと作り、ラガーと共に提供する。ラガーを飲んだ面々はなんだこのエールは?と言って居るが、それはラガーだよ。

 食事を済ませ午後の稽古に入るが、流石に4人で2人をいじめるのはかわいそうなので、ミント達3人に、今日はどの位強くなったか俺が見てやるよと言って、3人同時に相手をしてやった。カトリーヌとブレンダは茫然とした顔をしていたが、自分達もエリシアに同じようにやられていた。

 3時を過ぎるとルーイが帰って来るのでカトリーヌの魔法の相手をルーイにして貰う。こうなると可哀そうなのがブレンダだ。ブレンダは4人にしごかれて倒れる寸前だ。

 ルーイの魔法理論は実に面白い。多分、他の魔法使いとも俺とも違う魔法理論だ。これをカトリーヌは吸収して行けば、ちょっと変わった魔法使いが完成するだろう。これは先が楽しみだ。

 何時の間にかエルナが帰って来たようで、ギンガと遊んでいる。邪魔をしない様にしている所がいじらしい。

 エルナとギンガを連れて夕食の買い出しに出る。エルナに夕食は何が食べたい?と聞くとお米が食べたいと帰って来たので、かつ丼を作ろうと思う。

 八百屋で玉ねぎを買い。肉屋でオーク肉のロースを買う。それからパン屋で昨日の売れ残りのパンがあるなら買うぞと言うとかなり大量に持って来た。

 食堂ではパン粉は専門のパン屋で作って貰い卸して貰っている。しかし、家庭では売れ残りのパンを使う事が多い。これだけあれば暫くはパン粉は要らないだろう。

 ついでに豚汁も作ろうと思い。アイテムボックスを探ると、大抵の材料は揃っている。問題はこの世界にごぼうの代わりになる野菜が無いんだよね。やはり豚汁にはごぼうが欲しい所だ。

 家に帰るとブレンダがソファーで倒れていた。明日筋肉痛にならない様にヒールを掛けて置く。

 キッチンで作業を始めようとすると、エルナがお手伝いをすると言うので、豚汁を任せる。最近では簡単な料理ならエルナ一人で作れるようになっている。エリシアより優秀だ。

 俺はとんかつの下準備をする。ちなみに胡椒は家庭と食堂で使う分位なら畑で取れる。流石に販売するほどの量は栽培できない。

 エルナが一通り野菜を切り、後は煮込むだけと言う段階に来たところでカツを揚げて行く。

 やや厚めのカツなので、高温でカラッと揚げて余熱で中心まで火を通す。完全に通らなくても後で煮込むので問題は無い。

 カツが揚がる頃には豚汁が煮えている。後は味を入れて行くだけだ。

 俺は、リビングで待っている連中にラガーを配って、キッチンへ戻る。

 エルナが味噌で味を入れたので味見をする。なかなか良く出来ている。かつ丼を作りエルナにウエイトレスをやって貰う。豚汁も配って行く。

 かつ丼は出来たてが美味いので配った順に食べる様に言ってある。ラガーを飲み終えた者たちからチューハイやウイスキーのオーダーが入る。かつ丼を作る合間に作りエルナに運んでもらう。

 6人にかつ丼が行き渡り。アルコールも作ったら。今度はギンガの分を作る。ギンガに渡したら、エルナとルーイの分を作り、食べさせる。最後に俺の分だ。

 全部で10人前だが、かつ丼は2個ずつ作っているので、意外に短時間で出来る。

 現に俺の分が出来た時に最初の一人が食べ終わる感じだ。

 俺はラガーを飲みながらかつ丼を味わう。豚汁も具沢山で美味い。そろそろ皆が食べ終わり、食器がキッチンのシンクに溜まって行く。エルナとルーイが後かたずけ係だ。冒険者6人は宴会に突入している。

 俺はポテチを大皿に盛り、ルーイに持たせる。

 他にも何か摘まみになる物がいるだろうな。

 アイテムボックスを漁ると試作で作ったハーブ入りの腸詰があったのでそれをボイルしてケチャップを添えて出してみた。本当は粒マスタードが欲しい所だ。

 ブレンダとカトリーヌは他の町出身の冒険者で、この町へ来てまだ、2か月位だそうだ。なので、俺やエリシアの事をあまり知らなかった様だ。どちらかと言うと『暁の乙女』の方が、ギルドで活躍してる分、有名だったらしい。

 なので、最初エリシアに声を掛けられた時『暁の乙女』に声を掛けられたと勘違いした様だ。のちにミント達に説明されて、晴れてエリシアの弟子になったのだが、エリシアの旦那が俺だと言う事は説明されていなかったそうだ。最初はエリシアの旦那で料理の上手い主夫だと思われていたらしい。

 その後時々、ミント達をボコボコにしているのを見て。なんであんなに強いのかミント達に聞いたらしい。ミント達は俺の事をこの国最強のSランク冒険者と紹介したらしく、初めの頃は恐れられていた。今ではボーイ扱いですけどね。

 最近はミント達3人とエリシアたち3人は別々に行動する事が多いが、稽古は一緒にする事が多い。

 エリシアのパーティーはSランク1人にDランク2人とバランスは悪いが、狩りの成果はそこそこ上がっている。エリシアは月に白金貨5枚位は家に入れているだろう。これは俺がギルドに口座を作ってエルナ貯金にしている。

 ミント達3人は彼氏が出来てからはあまり無茶な依頼は受けなくなった。それでもSランクだけあって、1人頭月に白金貨20枚は稼ぐ。どうやらフローラがそろそろ結婚するらしいので、フローラが抜けたら、エリシアたちと合流するかもしれない。

 と言うか、エリシアがリーダーだとパーティー名が『竜砕き』になるのだが、それって俺も関係してると思われない?

 そうでなくとも最近5人が出入りしているので、リュートのハーレム疑惑があるらしい。

 時々勘違いした若い女性冒険者が私もハーレムに入れて下さいと来ることがある。エリシアが居ればエリシアが追い払うのだが、俺だけの時は説明に困る。

 そう言えば、俺は爵位を持っているので妻を複数名持てる。前に馴染みの冒険者ギルドの受付嬢が、狙われてますよと教えてくれたことがある。

 なんでもSランクで貴族で金持ちでと言う好条件が揃っているのが問題らしい。12年前の俺を知っている世代は問題無いのだが、その後に冒険者になった世代が面倒らしい。まあ、冒険者は女性に限らず、縁遠くなりがちなので仕方ないと言えば仕方ないのだが。

 条件的には好条件のミント達でさえ行き遅れになっている現状。今、20代の冒険者は焦りまくっているのだろう。

 それでも、冒険者同士で縁があればましな方。縁が無ければお見合いでもするしかない。そういう方面で俺を頼ってくれるなら歓迎するのだが、妾でも良いからと言うのは金目当てとしか思えない。

 ブレンダとカトリーヌにはその辺の事を良く言い聞かせて置こう。後で泣きつかれても困る。せめて10代のうちに彼氏だけは作って置けと、アドバイスしないとな。

 そうそう結婚問題と言えば、冒険者だけでなく、子爵邸の使用人達も結婚問題を抱えている。どうしても世界が狭くなるので、職場結婚位しか道が無いのだが、この町には貴族が絶対的に少ない。まあ、元は平民なので探そうと思えば何処からでも連れて来れるのだが、一度貴族の屋敷で暮らすと元の生活に戻るのが難しくなるらしい。

 まあ、俺に相談してくれれば見合い食らいすぐにセッティングしてやるのだが、使用人が主に陳情するのは思ったより敷居が高い様だ。この際だからお見合いパーティーでも開くかな?冒険者も交えて、町を挙げてイベントにすれば面白い事になるかもしれない。

 よし、後でギルマスと相談しよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

俺のチートが凄すぎて、異世界の経済が破綻するかもしれません。

埼玉ポテチ
ファンタジー
不運な事故によって、次元の狭間に落ちた主人公は元の世界に戻る事が出来なくなります。次元の管理人と言う人物(?)から、異世界行きを勧められ、幾つかの能力を貰う事になった。 その能力が思った以上のチート能力で、もしかしたら異世界の経済を破綻させてしまうのでは無いかと戦々恐々としながらも毎日を過ごす主人公であった。 

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~

十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

処理中です...