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第百二十一話

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 結局討伐作戦は変更され、Sランクを中心にしたAランク冒険者がチームになり、毎日要所要所を巡回すると言う形に収まった。1週間ほどはこの作戦が功を奏したのか、町近辺に魔物が出る事が減った。

 しかし、2週間目に入ると魔物の動きに変化が見られ、こちらの作戦の裏をかくような行動が見られる様になった。明かに何者かの意思が見て取れる行動の変化だ。これが邪神に寄るものか、魔物のリーダー格に寄る物かは分からない。

 冒険者ギルドは後手後手に回っているが、それでも諦める訳には行かないので、魔物の動きに対処的に行動をしている。

 そして3週目に魔物たちが奇妙な動きを見せ始めた。南西の森に集結しだしたのだ。最初はランクの低い魔物からだった。徐々にランクの高い魔物も集まって来る。巡回して狩りをしているグループが発見した時には数が多すぎて相手に出来る状態では無かった。

 ギルドは蜂の巣を突いたような騒ぎになる。また何かが起こっている。邪神の子が現れる前兆かもしれない等と憶測が飛ぶ。

 リュートの元にもこの情報が届くが、不自然な印象を受けたので、様子見をする。

 SランクとAランクに召集がかかり討伐隊が組織されるがリュートは町を守る守備隊に志願した。

「何か嫌な予感がする。」

 リュートのその言葉にギルマスは少し考えて許可を出した。どっちみち守備隊に1人Sランクを残すつもりだったのだろう。

 作戦は明日の朝10時から始まる。リュートは何故だか、時間が過ぎるごとに不安が募って行くのを感じている。

 なんだろう?この感じは?今までに感じた事のない感覚だ。

 そう言えば邪神は魔力を消費して誕生すると神様が言っていた。魔物が邪神の影響を受けるのも魔力が強いからだ。そう考えると魔力量の多い人間にも何らかの影響があってもおかしくない。そしてリュートの魔力量はこの世界でも最も高い。そのリュートに邪神の影響が届いてもおかしくはない。

 もし、そう仮定するなら。邪神の子が現れるのはこの町かもしれない。リュートの感は町を離れるのは危険だと告げている。

 どうする?町の人達を避難させるか?何処に?討伐隊を止める?集結したまものをどうする?と言うか、一人の方が戦いやすいのでは?

 考えがまとまらない内に朝になってしまった。

 討伐隊は予定通り出発した。リュートの嫌な感じは更に強くなっている。

 討伐隊が出発してから2時間後それは現れた。まさに現れたと言う表現が正しいだろう、何もない場所に突如巨大な魔物が出現したのだ。今、この瞬間そこで生まれたかの様に。奇妙な歪な形の魔物だ、異形と言っても良い。この間の合成獣とも違う新たな魔物。間違いない邪神の子だ。

 北門近くに出現したそれは既に町の中で暴れている。人が見ている事を気にせずにリュートは転移を使い。魔物の正面を取る。魔物のヘイトを引き付ける。

 ここで戦えば町にかなりの被害が出るだろう。リュートは北門から魔物を押し出す事を考えた。エアバレットは通常多数の圧縮した空気を発射する魔法だ。それを1つにして密度を増し。速度も上げる。

「エアマグナム!」

 強烈な空気の弾は貫通こそしないが、魔物を押し下げる事に成功した。その距離およそ5メートル。Sランクのドラゴンでも腹を貫通し大きな穴をあける威力でこれだ。さらに威力を上げたエアマグナムを連射する。

 1発、2発、3発と撃つごとに魔物は後退し、5発目で北門にぶつかった。

 ここなら被害は最小限で済むはずだ。

 物理と魔法の障壁を2枚重ね掛けし。永久凍土の魔法を撃つ。これで止めがさせない事は解っている。

 時空斬を使う。空間がズレる。が魔物はそのままだ。まさか学習した?今度は紅蓮の業火を発動し、魔物を焼却しようとするが表面が多少焦げた程度で留まっている。どうやらこの魔物何かの魔物を核にしてその魔物の弱点を補う様に様々な魔物を合成した様だ。つまり魔物によって倒す条件が変わると言う事だ。これは厄介極まりない。

 しかし、妙だ。魔物は生きているはずなのに反撃する様子が無い。もしかしたら、邪神の子とは邪神が誕生する時に脅威となる存在に対処する為にあらゆる攻撃に対処できる体を作る実験体なのか?ならば倒せば倒すほど次に現れる邪神の子は強くなると言う事だ。

 だが、倒さないと言う選択肢は取れない。逃がせば他で被害を出すだけだ。

 待てよ、王都を壊滅させた邪神の子は退治されて居ない。と言う事は今も何処かで暴れていると言う事だ。しかも、そいつはかなり狂暴らしい。今のこいつは凶暴性は無いが装甲の固さは今までで一番だ。次に生まれるのは装甲が固く狂暴かもしれない。邪神の子に個体差があるのは何か意味があるはずだ。

 そう考えている間も目の前の邪神の子は動きが無い。まさか再生?だとすると早めに決着を付けなければ。

 もう一度永久凍土を掛け。魔物の時間を止める。問題はここからだ、どうやって止めを刺せば良いのだろう?

 時空斬は効かない。異空間に転移させる魔法でも作るか?

 待てよ、この世界に宇宙と言う概念はあるのだろうか?夜に星は出ているなら宇宙空間はあるはず。そこへ飛ばしてみるか?

 転移魔法で宇宙空間をイメージして飛ばしてみる。目の前の魔物が消えた。成功したのか?

 宇宙空間で魔物は生存可能なのか?それは分からない。今度狩りに出た時にでも真空で魔物を閉じ込めてみるか?

 とりあえずの脅威は取り除いたが、安心は出来ない。

 報告を受けて駆け付けたギルドマスターに良くやったと褒められた。どうやら戦いを見ていたらしい。

 それからおよそ4時間後、討伐隊が帰って来た。かなりの戦果を上げたようだが、それなりの犠牲も出たらしい。まあ、死者が出なかっただけでも良しとしよう。

 ちなみに家に帰ったエリシアに聞いてみた。

「なあ、空の上って何がある?」

「神様の世界かな?」

「じゃあ、空に見える星って何だ?」

「星は星だろう?」

「だって、空の上には神様の世界があるんだろう?じゃあなんで星は見えるんだ?そもそも星って何処にあるんだ?」

「????」

 どうやらこの世界に宇宙の概念は無さそうだ。ならば宇宙空間に魔物を飛ばすと言うのは暫くは有効かもしれない。邪神の影響も宇宙までは及ばないだろう。

 とりあえず他の対抗手段が見つかるまではこれで行こう。

 いや、待てよ。創造魔法で魔物を閉じ込めて置く空間を作れば良いのか?これは一考の余地があるな。じっくり考えてみよう。

 しかし、この辺境の町に短い間に2度も邪神の子が現れるとはどう言う事だろう?ギルドの情報網では王都の他に襲われた町は今の所確認されていないらしい。やはり、退治した事が影響しているのだろうか?だとすれば、次の邪神の子もここに現れる可能性が高い。他の大陸は分からないが、リュートが邪神の子を倒せば、この町に邪神の子の意識を引き付けられる可能性が出て来た。

 何時何処に現れるか判らない邪神の子だが、何時はまだ特定出来ないが、何処は予測できる可能性が出て来た。

 神様が魔力量を返してくれた理由の一つがこれかもしれない。

 まだ確定では無いが、希望が少しだけ見えた気がする。

 暫くの間リュートは邪神の子に備えると言う理由で休みを取った。その間もエリシアたちは討伐を行いレベルを上げている。ミントとシーネは近くAランクに上がりそうだと言って居た。

 休みを取ったリュートは邪神の子を閉じ込める空間魔法の開発を急いでいた。

 基本はマジックバッグだが、マジックバッグには生き物は入らない。そこで、空間に亜空間ではなく異空間を開き、別の次元に邪神の子を飛ばすと言うイメージを考える。賢者の叡智でいろいろと調べてみるが、マジックバッグに生き物が入らないのは。中に空気が無いかららしい。だとすれば空気がある空間を付与したマジックバッグには生き物が入るはずと思い。そうイメージして付与したマジックバッグには普通に生き物が入った。

 ただ、弊害として時間停止が付与出来なくなる。これでは鮮魚の運搬には便利だが魔物退治には向かない。

 そこで、マジックバッグを異空間収納ではなく、異次元を意識して付与をする。すると物を入れたが最後2度と取り出せないマジックバッグが出来た。これはイケるんじゃないか?

 早速近くの森に転移して、魔物を退治せずにバッグにどんどん放り込んで行く。生きていても問題無く入る、が出す事は出来ない。

 一応、重量軽減と時間停止も付与しているが、機能しているかは分からない。だが、これが対邪神の子に有効なら、僕だけじゃなく他の冒険者にも邪神の子を退治する事が出来る様になるかもしれない。

 そう思ってエリシアに貸したら使えなかった。何故だ??

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