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第九十二話
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販売2日目、この日は朝から各店舗に行列が出来る程の騒ぎになっていた。購入者の口コミが大きい様だ。また、噂を聞いた旅商人達が行列に加わっている様だ。
旅商人は個人から大きな組織まで合わせると、国内に10万人居ると言われている。この王都は旅商人にとっては情報や仕入れの拠点とも言われ、常時3万人程の旅商人が王都に滞在していると言われている。
この旅商人が目を付けた商品は王国中に広まり。やがて海外にまで及ぶと言う。また、王都で有力な新製品が発売された時には旅商人のネットワークで王都に旅商人が集結し、一時的に王都の人口が数万人増えるとさえ言われているのだ。
今朝もバート商会のメンバー5人は朝10時から商会に集まっている。ユーカとイルミは学院を休んだ様だ。
「何も学院を休まなくても良かったんじゃない?どうせ結果が出るのは夜だよ。」
「いや、何だか気になって授業に集中出来なそうだし。」
「しょうがないなぁ。」
イルミとユーリがこんな会話をしていると、偵察に行ったバートさんが帰って来た。
「おかえりー。どうだった?」
「いや、何処の店舗も凄い人で、実際に目で見ると売れ行きの凄さが解りますね。これは今日もかなりの数出そうです。」
バートさんはかなり興奮気味だ。ユーリは軽食や砂糖で経験しているが、行列が出来る程売れる商品を見るのは初めてなのだろう。
「今日で1万台突破しそうですね。各店舗には商品を補充して置いたので、流石に品切れは出ないでしょうが。」
「自分たちの商品で行列が出来るなんて、夢みたいね。」
チェスカさんが笑顔を見せる。彼女は元気になってから良く笑う様になったとバートさんが言っていた。
「そう言えば、店頭で流れてる予告編聞きましたけど、良く出来てましたよ。あれも同じ魔道具を使ってるんですか?」
バートさん、あれ聞いたんだね。
「そうですよ。音量は大きめに設定してありますが、『聞く物語』とまったく同じ物です。」
ちなみに第1弾は『幻の秘宝伝説』と言うタイトルで、冒険者パーティが呪われた島へと渡り様々な苦難を乗り越え、辿り着いた先で見つけた秘宝とは実は・・・と言う、日本の古き良き時代の王道RPGの様なストーリーだ。ありがちな設定と話だが、この世界の人達には新鮮な様だ。
「あの魔道具って、かなり色々な使い方があるんじゃありませんか?」
「お、バートさんそこに気付きましたか、流石ですね。実はこの魔道具は汎用性を高く作ってあるので色々な物に流用出来ます。今回は宣伝に使用しましたが他の使い方も考えてみて下さい。」
「やはりそうですか、あの宣伝方法は面白いです。新商品が出た時などにいちいち店員が説明しなければならない時などにあの魔道具があれば、宣伝しながら商品説明も自動でやってくれるので店員が販売に集中できると思いました。」
やはりバートさんの商才は並じゃない。そう言えば、この宣伝方法を始めに思いついたのもバートさんだったな。
「宣伝だけじゃないですよ。実はこの魔道具は再生専用に作ってありますが、本来は録音機能もあるんです。『聞く物語』がある程度普及したら、録音も出来る製品をユーカの商会で扱って貰おうと考えています。ボタンが少し増えますが、使い道はボタン以上に増えるはずです。」
「録音機能ですか?それは確かに使い道が色々考えられますね。文字が書けない人ならメモや手紙などにも使えますし。音楽を録音して、ダンスの練習なんて使い道もありますね。」
録音と聞いただけで、すらすらと使い道が出て来る辺りはバートさんが頭が良くなっている証拠なのだが本人は気が付いていない。
「音楽は面白いかもしれませんね。娯楽の1種ですし。他の皆も何に使えるか考えてみて下さい。」
ユーリの言葉に、他のメンバーもそれぞれ思考に入り込む。
お昼を回ったので、サンドウィッチとコーヒー牛乳を人数分出す。サンドウィッチは三角形の奴で、ハムサンドとたまごサンドを用意した。
「お昼ですので一休みしましょう。あまり考え込んでも良いアイデアは出ませんよ。」
そう言うと、皆、手を伸ばして昼食を摘まみながら、雑談タイムに突入する。
「そう言えばお風呂のシャワー、あれは良いね。シャンプーの泡が落ちやすくて温度も自分の好みに替えられるし。販売はしないの?」
イルミが突然そんな事を言い出す。シャワーが気になって、家にお風呂があるのにわざわざ商会で入ったらしい。
「ん~あれを売るにはお風呂の普及率がもっと上がらないとね。公衆浴場には売れるかもしれないけど。」
「お風呂と言えば、あのバスタオルと言うのは変わった生地ですね。あれも商品になるのでは?」
チェスカさんが布を扱う商会の娘らしい発言をする。
「どうかな?需要があるならチェスカさんの商会へ卸すよ。」
「需要は値段次第ですね。あの生地は水を吸いやすいので使い道が色々あると思います。」
「ちなみに、一番安い布って幾ら位するの?」
「平民が服を作るのに使う麻の生地なら、シャツ1枚分で銅貨5枚位ですね。」
「なるほど、バスタオルの大きさなら銅貨2枚位で出せるよ。フェイスタオルなら銅貨1枚かな。」
そう言ってフェイスタオルを1枚チェスカに手渡す。
「これは顔を拭く為のタオルなんだけど、半分に折って拭き掃除に使うと便利だよ。」
「良いですね。銅貨1枚は売値ですか?それとも仕入れ値?」
「売値で銅貨1枚だね。仕入れ値は鉄貨3枚位かな。」
それを聞くとチェスカが商人の顔になる。
「ちなみに、下着みたいに色々なデザインは可能なの?」
ユーカが話に入って来る。
「布の柄って事?それなら何十種類でも行けるよ。」
「雑貨屋イルミで試しに販売してみたらどうかな?」
「それをやると、チェスカさんの商会が2番煎じになっちゃうんだよね。こう言うのは独占販売した方が儲かるんだよ。」
「そうですね。私の商会に、とりあえずバスタオルとフェイスタオルを100枚ずつ卸して貰って良いですか?」
チェスカさんが決意した顔で発言する。
「構いませんよ。デザインはどうします?」
「うちの客層は20代から40代が多いのでそれを意識したデザインでお願いします。」
「じゃあ、こんな感じかな。」
そう言って、フェイスタオルを10種類出す。無地やチェック等の無難なデザインが多い。
「これを10枚ずつで100枚で良いかな?」
「良いですね。これでお願いします。バスタオルも同じ感じで。」
ユーリはフェイスタオルを一旦アイテムボックスに収納してから、バスタオルを同様に作成し、マジックバッグに入れてチェスカに手渡す。
「お試しなので、代金は販売した後でも良いよ。」
「これってマジックバッグですよね?」
「あ、それはレンタルね。バート商会の備品になるので後で返して下さい。」
「解りました。」
こんな感じで話をしていると各商会から通信が入り出す。どうやら、かなり売れたようで、各店の通話の声が明るい。数値をメモって集計を出す。
「集計結果が出ました。12、238個です。」
「え?今日1日の数字ですか?」
バートさんの声が上ずっている。
「そうですよ。1日で1万本売れちゃいましたね。何もせずに金貨10枚の儲けですよ。」
「なんと言うか、この商会の凄さが改めて理解出来ました。」
チェスカさんがそう言うと、ユーカとイルミがうんうんと頷いている。
「来月には恋愛物と、第4のジャンルを投入しようと思ってます。」
「第4のジャンル?」
イルミが興味津々の声で聞いて来る。
「今まで、小説は3つのジャンルで来たでしょ?『聞く物語』では小説では表現が難しい物にも挑戦しようと思ってね。まあ、楽しみにしててよ。」
「気になってまた眠れなくなりそう。」
ユーカがぼやいている。
「いや、その間に新製品考えてよ。」
旅商人は個人から大きな組織まで合わせると、国内に10万人居ると言われている。この王都は旅商人にとっては情報や仕入れの拠点とも言われ、常時3万人程の旅商人が王都に滞在していると言われている。
この旅商人が目を付けた商品は王国中に広まり。やがて海外にまで及ぶと言う。また、王都で有力な新製品が発売された時には旅商人のネットワークで王都に旅商人が集結し、一時的に王都の人口が数万人増えるとさえ言われているのだ。
今朝もバート商会のメンバー5人は朝10時から商会に集まっている。ユーカとイルミは学院を休んだ様だ。
「何も学院を休まなくても良かったんじゃない?どうせ結果が出るのは夜だよ。」
「いや、何だか気になって授業に集中出来なそうだし。」
「しょうがないなぁ。」
イルミとユーリがこんな会話をしていると、偵察に行ったバートさんが帰って来た。
「おかえりー。どうだった?」
「いや、何処の店舗も凄い人で、実際に目で見ると売れ行きの凄さが解りますね。これは今日もかなりの数出そうです。」
バートさんはかなり興奮気味だ。ユーリは軽食や砂糖で経験しているが、行列が出来る程売れる商品を見るのは初めてなのだろう。
「今日で1万台突破しそうですね。各店舗には商品を補充して置いたので、流石に品切れは出ないでしょうが。」
「自分たちの商品で行列が出来るなんて、夢みたいね。」
チェスカさんが笑顔を見せる。彼女は元気になってから良く笑う様になったとバートさんが言っていた。
「そう言えば、店頭で流れてる予告編聞きましたけど、良く出来てましたよ。あれも同じ魔道具を使ってるんですか?」
バートさん、あれ聞いたんだね。
「そうですよ。音量は大きめに設定してありますが、『聞く物語』とまったく同じ物です。」
ちなみに第1弾は『幻の秘宝伝説』と言うタイトルで、冒険者パーティが呪われた島へと渡り様々な苦難を乗り越え、辿り着いた先で見つけた秘宝とは実は・・・と言う、日本の古き良き時代の王道RPGの様なストーリーだ。ありがちな設定と話だが、この世界の人達には新鮮な様だ。
「あの魔道具って、かなり色々な使い方があるんじゃありませんか?」
「お、バートさんそこに気付きましたか、流石ですね。実はこの魔道具は汎用性を高く作ってあるので色々な物に流用出来ます。今回は宣伝に使用しましたが他の使い方も考えてみて下さい。」
「やはりそうですか、あの宣伝方法は面白いです。新商品が出た時などにいちいち店員が説明しなければならない時などにあの魔道具があれば、宣伝しながら商品説明も自動でやってくれるので店員が販売に集中できると思いました。」
やはりバートさんの商才は並じゃない。そう言えば、この宣伝方法を始めに思いついたのもバートさんだったな。
「宣伝だけじゃないですよ。実はこの魔道具は再生専用に作ってありますが、本来は録音機能もあるんです。『聞く物語』がある程度普及したら、録音も出来る製品をユーカの商会で扱って貰おうと考えています。ボタンが少し増えますが、使い道はボタン以上に増えるはずです。」
「録音機能ですか?それは確かに使い道が色々考えられますね。文字が書けない人ならメモや手紙などにも使えますし。音楽を録音して、ダンスの練習なんて使い道もありますね。」
録音と聞いただけで、すらすらと使い道が出て来る辺りはバートさんが頭が良くなっている証拠なのだが本人は気が付いていない。
「音楽は面白いかもしれませんね。娯楽の1種ですし。他の皆も何に使えるか考えてみて下さい。」
ユーリの言葉に、他のメンバーもそれぞれ思考に入り込む。
お昼を回ったので、サンドウィッチとコーヒー牛乳を人数分出す。サンドウィッチは三角形の奴で、ハムサンドとたまごサンドを用意した。
「お昼ですので一休みしましょう。あまり考え込んでも良いアイデアは出ませんよ。」
そう言うと、皆、手を伸ばして昼食を摘まみながら、雑談タイムに突入する。
「そう言えばお風呂のシャワー、あれは良いね。シャンプーの泡が落ちやすくて温度も自分の好みに替えられるし。販売はしないの?」
イルミが突然そんな事を言い出す。シャワーが気になって、家にお風呂があるのにわざわざ商会で入ったらしい。
「ん~あれを売るにはお風呂の普及率がもっと上がらないとね。公衆浴場には売れるかもしれないけど。」
「お風呂と言えば、あのバスタオルと言うのは変わった生地ですね。あれも商品になるのでは?」
チェスカさんが布を扱う商会の娘らしい発言をする。
「どうかな?需要があるならチェスカさんの商会へ卸すよ。」
「需要は値段次第ですね。あの生地は水を吸いやすいので使い道が色々あると思います。」
「ちなみに、一番安い布って幾ら位するの?」
「平民が服を作るのに使う麻の生地なら、シャツ1枚分で銅貨5枚位ですね。」
「なるほど、バスタオルの大きさなら銅貨2枚位で出せるよ。フェイスタオルなら銅貨1枚かな。」
そう言ってフェイスタオルを1枚チェスカに手渡す。
「これは顔を拭く為のタオルなんだけど、半分に折って拭き掃除に使うと便利だよ。」
「良いですね。銅貨1枚は売値ですか?それとも仕入れ値?」
「売値で銅貨1枚だね。仕入れ値は鉄貨3枚位かな。」
それを聞くとチェスカが商人の顔になる。
「ちなみに、下着みたいに色々なデザインは可能なの?」
ユーカが話に入って来る。
「布の柄って事?それなら何十種類でも行けるよ。」
「雑貨屋イルミで試しに販売してみたらどうかな?」
「それをやると、チェスカさんの商会が2番煎じになっちゃうんだよね。こう言うのは独占販売した方が儲かるんだよ。」
「そうですね。私の商会に、とりあえずバスタオルとフェイスタオルを100枚ずつ卸して貰って良いですか?」
チェスカさんが決意した顔で発言する。
「構いませんよ。デザインはどうします?」
「うちの客層は20代から40代が多いのでそれを意識したデザインでお願いします。」
「じゃあ、こんな感じかな。」
そう言って、フェイスタオルを10種類出す。無地やチェック等の無難なデザインが多い。
「これを10枚ずつで100枚で良いかな?」
「良いですね。これでお願いします。バスタオルも同じ感じで。」
ユーリはフェイスタオルを一旦アイテムボックスに収納してから、バスタオルを同様に作成し、マジックバッグに入れてチェスカに手渡す。
「お試しなので、代金は販売した後でも良いよ。」
「これってマジックバッグですよね?」
「あ、それはレンタルね。バート商会の備品になるので後で返して下さい。」
「解りました。」
こんな感じで話をしていると各商会から通信が入り出す。どうやら、かなり売れたようで、各店の通話の声が明るい。数値をメモって集計を出す。
「集計結果が出ました。12、238個です。」
「え?今日1日の数字ですか?」
バートさんの声が上ずっている。
「そうですよ。1日で1万本売れちゃいましたね。何もせずに金貨10枚の儲けですよ。」
「なんと言うか、この商会の凄さが改めて理解出来ました。」
チェスカさんがそう言うと、ユーカとイルミがうんうんと頷いている。
「来月には恋愛物と、第4のジャンルを投入しようと思ってます。」
「第4のジャンル?」
イルミが興味津々の声で聞いて来る。
「今まで、小説は3つのジャンルで来たでしょ?『聞く物語』では小説では表現が難しい物にも挑戦しようと思ってね。まあ、楽しみにしててよ。」
「気になってまた眠れなくなりそう。」
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