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第二十三話
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翌朝『大地の恵亭』にルーネさんが仕入れに来た。
「ねぇねぇ新作の甘味は?」
「ん~、ここじゃなんですから『銀の猫亭』に行きましょう。」
そう言ってユーリはルーネさんと一緒に銀の猫亭へ向かう。途中、経営状態や客の入りなどを聞いてみた。甘味は相変わらず人気らしい、午後にはケーキが残ってない事も良くあるそうだ。リバーシは発祥の地として有名になり、強い人を求めて来る客が毎日数名は居るそうだ。ゲームが白熱すると飲み物が良く売れるらしい。昼時は冒険者や近所の奥さん連中が軽食を食べに来る。午後はゆっくりしたい客がちらほら見えるそうだ。
「午後が問題ですね。」
「いや、うちは夫婦2人だけだから、ぼちぼち稼げれば良いのよ。」
「そうですか?その割に甘味には貪欲ですよね?」
「半分は自分が食べたいからかな・・・」
そんな話をしているうちに『銀の猫亭』に着く。まだ、開店前なのに数人待ってる人が居る。ケーキ目当ての客だ。
「さて、今日の甘味は今までとはちょっと志向を変えて、これからのシーズンにむけた物です。」
この世界にも四季がある。日本ほど温度差は激しくないが、春と秋の平均気温が20度、夏が30度近くまで上がって。冬は5度程度まで下がる。今は季節的には初夏だ、これから気温は上がって行く。冷たい物が欲しくなるだろう。
「これはアイスクリームと言う甘味です。夏向けの甘味ですね。」
そう言って、ユーリはカウンターに2つアイスクリームを出す。1つは旦那さんの分だ。
「これは、まるで冷たいケーキね。」
「そうです、基本の材料はケーキのクリームとほぼ一緒です。で、ですね。この店では冷たい紅茶は出さないんですか?」
「冷たい紅茶?冷めた紅茶はまずいわよ。」
「そうじゃなくて最初から冷やすんですよ。こうやって。」
ユーリはテーブルに氷の入った冷たいレモンティーを出す。もちろん砂糖入りだ。
「紅茶にこんな飲み方があるなんて。でも、氷や砂糖は高価だし、特に夏はね。」
「まあ、砂糖は入れなくても良いですよ。好みもあるだろうし。氷は安価で提供出来ますよ。考えて置いてください。」
ユーリは、難しい顔で考え込んでいる旦那が気になった。旦那の名前はコールと言うらしい。
「ところで、お昼の軽食って何を出すんですか?」
「ああ、うちの名物は内臓の煮込み料理だよ。柔らかくてパンに合うんだ。」
「へぇ。でも軽食にしては重すぎません?」
「こう言うの置いてみませんか?」
そう言ってユーリは皿を2枚テーブルに出す。フォークもつける。
「これはパスタと言う麺料理です。ナポリタンと言います。旦那さんなら再現出来るんじゃありませんか?」
2人は珍しそうにナポリタンを食べている。旦那の方は一口一口味を確かめるように。
「こいつはトマトとガーリックだな?」
「そうです。ソースは単純、具材も玉ねぎとピーマンとベーコンだけ。麺はうちで卸します。どうです、やってみますか?」
「これはパンが要らない。この皿一つで完結している。軽食の理想形だ。」
珍しく旦那が饒舌だ。
「じゃあ、これがレシピで、麺はとりあえず10キロ置いて行きますね。味付けに関しては研究して下さい。麺は10分程度茹でるのが一番おいしいと思います。10キロで大銅貨1枚で卸しますので、検討してみて下さい。」
「ユーリ君はどうして、こんなに良くしてくれるの?」
「うちの店では扱わない商品ですし、みんな美味しい物食べたいですよね?」
「それはそうだけど、ユーリ君の商会で販売すれば儲かるのでは?」
「いずれは販売しますけど、その前に皆に知って貰わないとね。」
ユーリは別に損をしている訳ではない、美味しい物を広める為にこの店を利用しているだけだ。それでこの店が儲かるなら、こんな良い話は無い、そう思っている。
「まあ、やるかやらないかは旦那さん次第です。考えてみて下さい。」
そしておもむろにルーネさんの方を向き
「で、アイスクリームはどうします?」
「あ、そっちが本題だったわね。どうしようかしら?」
「価格はケーキと同じで良いですよ。」
「じゃあ、明日からケーキ100個とアイスクリーム50個で。人気次第では増量も考えるわ。」
「解りました。では、明日。そろそろ店の開店ですよね?僕は帰りますね。」
こうして、この世界初の冷たい甘味が登場するのであった。
ユーリは急いで『大地の恵亭』に戻り、開店準備を進める。もう開店まで何日も無い。料理人達は試作を作り、ウエイトレスは動線を考えてテーブルを配置しなおしたりしている。ユーリとカウンターはメニュー作りと価格決めだ。
この世界の識字率は低い、なのでユーリはメニューに写真を導入した。カラー写真で大きめに写真を載せる事でメニューは厚くなってしまったが、見やすいとメンバーには好評だ。客にも受けると良いなと考えている。
昼過ぎになると、アトマスさんがやってくる。これは前もって決めて置いた事で、ここで食事を取りながら、その日の出来事や売り上げの報告をするのだ。
食後に2人で店の外へ出て道を行く人々を観察してみた。
「人通りはそれなりにありますね。近くに食堂や宿屋が多いからでしょうか?」
「そうですね、この辺は場所的に旅商人や冒険者が多いですからね。必然的にそれらを狙った商売をする人が集まっています。」
「そう言えば、子供を見ないのですが、この辺には居ないのですか?」
「子供はこの時間、教会へ行ってます。」
「教会ですか?」
「はい、教会では無料で子供達に読み書き計算を教えています。それに何より、昼食が出ます。」
なるほど、この国では教会が小学校の代わりになっているらしい。しかも無料で食事まで配るとなると親は行かせるよね。
異世界の給食かぁ、気になるな。
「ねえ、それって僕が行っても大丈夫かな?」
「ねぇねぇ新作の甘味は?」
「ん~、ここじゃなんですから『銀の猫亭』に行きましょう。」
そう言ってユーリはルーネさんと一緒に銀の猫亭へ向かう。途中、経営状態や客の入りなどを聞いてみた。甘味は相変わらず人気らしい、午後にはケーキが残ってない事も良くあるそうだ。リバーシは発祥の地として有名になり、強い人を求めて来る客が毎日数名は居るそうだ。ゲームが白熱すると飲み物が良く売れるらしい。昼時は冒険者や近所の奥さん連中が軽食を食べに来る。午後はゆっくりしたい客がちらほら見えるそうだ。
「午後が問題ですね。」
「いや、うちは夫婦2人だけだから、ぼちぼち稼げれば良いのよ。」
「そうですか?その割に甘味には貪欲ですよね?」
「半分は自分が食べたいからかな・・・」
そんな話をしているうちに『銀の猫亭』に着く。まだ、開店前なのに数人待ってる人が居る。ケーキ目当ての客だ。
「さて、今日の甘味は今までとはちょっと志向を変えて、これからのシーズンにむけた物です。」
この世界にも四季がある。日本ほど温度差は激しくないが、春と秋の平均気温が20度、夏が30度近くまで上がって。冬は5度程度まで下がる。今は季節的には初夏だ、これから気温は上がって行く。冷たい物が欲しくなるだろう。
「これはアイスクリームと言う甘味です。夏向けの甘味ですね。」
そう言って、ユーリはカウンターに2つアイスクリームを出す。1つは旦那さんの分だ。
「これは、まるで冷たいケーキね。」
「そうです、基本の材料はケーキのクリームとほぼ一緒です。で、ですね。この店では冷たい紅茶は出さないんですか?」
「冷たい紅茶?冷めた紅茶はまずいわよ。」
「そうじゃなくて最初から冷やすんですよ。こうやって。」
ユーリはテーブルに氷の入った冷たいレモンティーを出す。もちろん砂糖入りだ。
「紅茶にこんな飲み方があるなんて。でも、氷や砂糖は高価だし、特に夏はね。」
「まあ、砂糖は入れなくても良いですよ。好みもあるだろうし。氷は安価で提供出来ますよ。考えて置いてください。」
ユーリは、難しい顔で考え込んでいる旦那が気になった。旦那の名前はコールと言うらしい。
「ところで、お昼の軽食って何を出すんですか?」
「ああ、うちの名物は内臓の煮込み料理だよ。柔らかくてパンに合うんだ。」
「へぇ。でも軽食にしては重すぎません?」
「こう言うの置いてみませんか?」
そう言ってユーリは皿を2枚テーブルに出す。フォークもつける。
「これはパスタと言う麺料理です。ナポリタンと言います。旦那さんなら再現出来るんじゃありませんか?」
2人は珍しそうにナポリタンを食べている。旦那の方は一口一口味を確かめるように。
「こいつはトマトとガーリックだな?」
「そうです。ソースは単純、具材も玉ねぎとピーマンとベーコンだけ。麺はうちで卸します。どうです、やってみますか?」
「これはパンが要らない。この皿一つで完結している。軽食の理想形だ。」
珍しく旦那が饒舌だ。
「じゃあ、これがレシピで、麺はとりあえず10キロ置いて行きますね。味付けに関しては研究して下さい。麺は10分程度茹でるのが一番おいしいと思います。10キロで大銅貨1枚で卸しますので、検討してみて下さい。」
「ユーリ君はどうして、こんなに良くしてくれるの?」
「うちの店では扱わない商品ですし、みんな美味しい物食べたいですよね?」
「それはそうだけど、ユーリ君の商会で販売すれば儲かるのでは?」
「いずれは販売しますけど、その前に皆に知って貰わないとね。」
ユーリは別に損をしている訳ではない、美味しい物を広める為にこの店を利用しているだけだ。それでこの店が儲かるなら、こんな良い話は無い、そう思っている。
「まあ、やるかやらないかは旦那さん次第です。考えてみて下さい。」
そしておもむろにルーネさんの方を向き
「で、アイスクリームはどうします?」
「あ、そっちが本題だったわね。どうしようかしら?」
「価格はケーキと同じで良いですよ。」
「じゃあ、明日からケーキ100個とアイスクリーム50個で。人気次第では増量も考えるわ。」
「解りました。では、明日。そろそろ店の開店ですよね?僕は帰りますね。」
こうして、この世界初の冷たい甘味が登場するのであった。
ユーリは急いで『大地の恵亭』に戻り、開店準備を進める。もう開店まで何日も無い。料理人達は試作を作り、ウエイトレスは動線を考えてテーブルを配置しなおしたりしている。ユーリとカウンターはメニュー作りと価格決めだ。
この世界の識字率は低い、なのでユーリはメニューに写真を導入した。カラー写真で大きめに写真を載せる事でメニューは厚くなってしまったが、見やすいとメンバーには好評だ。客にも受けると良いなと考えている。
昼過ぎになると、アトマスさんがやってくる。これは前もって決めて置いた事で、ここで食事を取りながら、その日の出来事や売り上げの報告をするのだ。
食後に2人で店の外へ出て道を行く人々を観察してみた。
「人通りはそれなりにありますね。近くに食堂や宿屋が多いからでしょうか?」
「そうですね、この辺は場所的に旅商人や冒険者が多いですからね。必然的にそれらを狙った商売をする人が集まっています。」
「そう言えば、子供を見ないのですが、この辺には居ないのですか?」
「子供はこの時間、教会へ行ってます。」
「教会ですか?」
「はい、教会では無料で子供達に読み書き計算を教えています。それに何より、昼食が出ます。」
なるほど、この国では教会が小学校の代わりになっているらしい。しかも無料で食事まで配るとなると親は行かせるよね。
異世界の給食かぁ、気になるな。
「ねえ、それって僕が行っても大丈夫かな?」
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