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 宿屋を出て、大通りの方へ向かう。途中、商店街があったので覗いて行く事にした。売っている物は帝国とそう大差は無いが、中には見た事の無い野菜や果物も幾つかあった。

 ちなみに米はやはり雑穀扱いだった。醤油があるのに米を食わないとか考えられんな。

 そう言えば、醤油を探して買わないと。なんと醤油は酒屋に売っていた。どうやら醸造と言う観点から酒屋が関係しているらしい。

 酒屋で、交渉して、醤油を樽2個、みりんを樽1個購入した。樽一個はおよそ60リットルらしい。ストレージに仕舞ったら驚かれた。ついでに味噌や出汁の話を聞いてみる。

 味噌はあるが麦味噌らしい、大豆の味噌は無いそうだ。また、出汁はやはり昆布やキノコに頼っている様だ。この世界は肉は魔物に頼っているので、骨が使えない。骨と血液は魔素が濃すぎて、人間が食べるには毒性が高いのだ。

 一応鶏は居るが、卵を取るだけで食用では無い。一度捌いて食べてみたがパサパサで不味かった。野生の鳥でも試してみたが、やはり、ラーメンを作るには弱い感じだった。

 野生のイノシシが手に入れば良いのだが、魔物を探すより難しいらしい。

 とりあえず、味噌を買いに乾物屋へ向かった。乾物屋では基本干し肉がメイン商品だ。だが、良く見てみると様々な干し物が売っている。昆布はもちろん、貝柱やキノコなど出汁に使えそうな物が沢山ある。煮干しの様な物も売って居たので大量買いをしてしまった。

 これらを組み合わせれば、それなりの出汁が作れそうだ。味噌は1樽購入する。1度購入すればストレージでコピー出来るしね。

 そう言えば、帝都では度々小規模だが戦闘が繰り広げられているんだよな?なんで、こんなに平和なんだろう?

 乾物屋の主に聞いてみた。

「ああ、それは貴族街や王城の近くの話ですね。こっちでは反乱軍も大人しいですよ。」

 なるほど、反乱軍も一般市民を巻き込む戦闘は避けている様だ。仮に、王城を落としても一般市民の賛同を得られないと統治は難しいからな。

 恐怖支配と言うのもあるが、それでは独裁者が変わっただけで政治は変わらないだろう。

 ちなみに王都は帝都より一回り大きい。だが、人口は殆ど変わらない。これは人口密度が帝都の方が高いと言う事になる。王都は帝都と違って農民が多い。これは北に輸送する分の作物も王都で生産しているからである。

 王国の北は雪が降る。雪が降ると3か月位は農業が出来ないらしい。また、寒さで取れる作物に限りがあるそうだ。

 まあ、まだ農作物の品種改良とか進んでいないんだろうな。

 フローネル嬢に、商店街で帝都では見た事が無い物は無いか聞いてみる。

「そうですね、寒いせいか、売っている服の布地が帝都とは違う気がします。」

 ほう?流石に女性目線は違うな。僕は全然気が付かなかった。

 と言う事で服屋に入ってみた。確かに防寒着が多い。また、売っている毛布等も帝国の物より厚くてフワフワしている。これってもしかしたら、ホーンラビットか?

 購入する金はあるが、買っても帝国では使い道が無さそうなので止めた。

「他に目ぼしい違いは無さそうだ、次は魔道具屋を覗いてみたい。王国の魔法のレベルが知りたいからね。」

 商店街から少し離れた位置、大通りのすぐ近くに商業区域がある。そこに魔道具屋がある。

 中に入って驚く、見た事の無い物ばかりが並んでいる。

 店主に色々と話を聞いた所、使い方が違うだけで、付与されている魔法は大したことが無かった。だが、この発想は無かったと言う魔道具が幾つかあったので、参考にして帝国でも売り出そうと考える。

 所変われば品変わると言う奴だな。暖房の魔道具もあったが、僕が作ったのとは全然タイプが違う。僕が作ったのが温風ヒーターなら、王都の魔道具はカイロだ。魔道具その物が低温で発熱して、それをポケットに入れたり手に持ったりして温める。その分サイズも小さく安い。

 僕は面白そうな魔道具を3つばかり購入した。金貨5枚と値段が非常に安い。どうやら王国では魔道具はあまり高価な物と言う訳では無さそうだ。

 ちなみにマジックバッグの値段を聞いてみた。

 4メートル四方で金貨50枚程度だそうだ。これも帝国の価格の半分位だ。

 王国で魔道具を仕入れて帝国で販売したら大儲け出来そうだな。

 さて、王国の経済はだいたい分かった。次は政治だな。反乱軍が居るって言う事は王国の今の政治に不満を持っている者が居るって事だ。

 その辺の評判を知りたい。こう言うのは何処で聞けば良いんだ?酒場かな?

 と言う事で酒場に行こうと思ったのだが、時間が若干早い。昼間から酒を呑んでいる様な奴からまともな情報が引き出せるとは思わない。

 そこで、時間潰しに王城を見に行く事にする。上手くすれば、反乱軍との戦闘に出くわす可能性もある。まあ、そこまで期待はしてないけどね。

 王城は大きいので遠くからでもかなり目立つ、近づくと、かなり立派な建物だ、帝都の帝国城とはだいぶ雰囲気は違うが、僕はこちらの方が城と言うイメージに近い。多分、どことなくアーネスハイム城に似ているからだと思う。

「ふむ、城の維持はしっかりしている様だ。警備も問題無い。国王が本当に無能だとしたら、余程頭の良い補佐官が付いている事になるな。」

「そう言えば、宰相のオルバスとか言う人は切れ者だから注意する様にと父が兄に言っていた事があります。」

 ほう?そのオルバスさんとか言う宰相がこの王城を実質動かしているのかな?

 僕が反乱軍なら、どう行動するだろう?局地戦は誘導だよな。だとすると、本体はどう動く?当然狙うは国王の首か、その宰相だよな。  

 だが、実際は局地戦ばかりで、本体が動いた気配がない。何か不自然さを感じるのは僕だけかな?

「なあ、もしフローネルが反乱軍の大将だったら、この城をどうやって落とす?」

「そうですね。反乱軍と言う事は軍隊を持っている訳ですよね?だったら、何度も奇襲をかけて、徐々に王城の戦力を削ぎます。そして、ある程度疲弊した所で、最終決戦ですかね。」

「それは、反乱軍の規模が王国軍と同等で無いと厳しいぞ。反乱軍と言うのは基本的に正規軍より規模が小さい。先に反乱軍が疲弊するだろう。」

「そう言う物なのですね。では規模の小さい軍隊で、大規模な軍を倒す戦略を考えないとイケないと言う事になりますね。と言うか、戦争と言うのは相手よりどれだけ多く兵を集めるかが勝負なのではありませんか?」

「国と国との戦争ならそれが当たり前かもしれないが、クーデターと言うのは基本小規模軍隊で大規模軍隊を倒すのが、セオリーだ。急所を押えれば小規模軍隊でも国は落とせるって事だな。」

「帝国ではクーデターは起こった事が無いので解りませんが、今の私なら、軍隊を囮に使って、単身で国王の首を取りますね。」

「うん。まあ、僕でも同じ事をするだろうな。だが、反乱軍のリーダーは悪霊と言う力を持ちながらそれをしない。おかしいとは思わないか?」

「確かにそうですね。小規模な戦闘を繰り返していると聞いていますが、それは何の為なんでしょうか?」

「僕も、それが引っかかっている。小規模な戦闘は多分囮だと思うのだが、裏で何をしているのかが見えてこないんだ。」

「不気味ですね。」

 やはり、フローネル嬢も同じ答えに辿り着いている様だ。反乱軍のリーダーは戦闘時に参加しているのだろうか?それが知りたい。

 まあ、都合よく戦闘が始まる事も無く、僕らは王城を後にした。時間は4時を回った所だ、そろそろ早めに狩りに出た冒険者達が帰ってくる頃だな。

 酒場も開いているはずだ。行って見よう。

 30分程歩いて、大衆酒場っぽい店を見つけた。場所的にハンターも庶民も利用するであろう店だ。ここなら聞き込みに良さそうだ。

 店に入ると、まだ多くは無いが、何組かの客が居た。とりあえずカウンターに座って様子を見る。

「ところでフローネルって酒は強いのか?」

「どうなんでしょう?あまり呑み比べとかした事ありませんから。」

 じゃあ、無難にエールにして置こう。エールを2杯と適当なつまみを頼む。

 マスターがつまみを作っている間にエールを氷魔法で冷やした。
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