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 ギルマスの部屋に着くと突然ギルマスが頭を下げた。

「済まんな。誤解を解くつもりが、火に油を注いだ様な形になってしまった。」

「別にギルマスのせいではありませんよ。しかし、なんでマルコスはあそこまで執着するんでしょう?」

「おそらく、ナンバー1の座を奪われたのが原因だと思う。自分より強者が居る事が認められないのだろう。だから魔族や魔王なんて言葉が出て来たんだと思うぞ。」

 なるほど、自分より強い人間は居ない。強いのは魔王しかありえないって発想なのか?

「今後、僕はどうしたら良いのでしょう?」

「出来れば無視してくれと言いたいところだが、無理だろうな。構わん、殺さない程度に返り討ちにしてくれ。」

「良いんですか?有能なハンター何でしょう?」

「今日の模擬戦でメッキが剥がれたな。あれは駄目だ。人間性が実力に伴って居ない。」

 確かに人間性はまともじゃ無いな。むしろ狂人の部類に入る。

「解りました。ところで、Sランクは貰えるんですか?」

「ふむ、Sランク最強に勝ったのだから、ギルドとしては当然その実力に見合ったランクを与える。本来ならば前回、Sランカーとの模擬戦で勝った時点でSランクを与えても良かったのだが、うちは飛び級を認めて無いからな。」

 そう言って、Sランク昇級の書類を書いてくれた。

「そう言えば、お前さん、ソロだよな?出来ればで良いのでパーティーを組んで貰えないか?」

「何故ですか?」

「ここの所、あまり人材が育っていないんだ。Dランクに上がると収入が安定するだろう?そうするとそこから先に進もうとする気概のある者が減っている。」

「パーティーを組んでそう言った者を引き上げろと?」

「いや、正直、お前さんはSランク以上の力があると睨んでいる。お前が育てればSランクが増えるんじゃないかって言うはかない望みだよ。」

 出来ない訳じゃ無いが、Sランカー増産って、どうなんだ?

「解りました。考えて置きます。」

「頼むぞ。この書類を窓口に持って行けば手続きしてくれる、今日からSランカーだ。」

 そう言って、書類を手渡された。

 1階に降り列に並んでいると、周りからの視線が突き刺さる。ああ、目立ってしまった様だ。なるべく目立たない様に努力していたのがマルコスのせいで台無しだ。

 窓口でギルドカードを更新すると逃げる様にギルドを出た。

 しかし、パーティーねぇ。実質弟子を取るって事だよね?僕より若くてBランク以上って言うと、僕が育てなくても勝手にSランクになりそうだ。

 となると下位のランクの冒険者を育てる事になる。育てるのは楽しそうだが、漆黒の闇のおっさんみたいになりそうだな。

 あ、話は変わるが、フローネル嬢が何故か家にずっといる。城に行かなくて良いのか聞いたら、強くなり過ぎて、周りの兵士たちがよそよそしいらしい。一応週に何回かは稽古をつけに行ってるらしいが、数時間で帰って来るのだそうだ。

 彼女と同じレベルで練習出来る相手が何人か居れば良いのだが、あまり帝国軍を育てるのはどうかとも思う。

 さて、Sランクに昇級して3日経つわけだが、Sランクになったからと言って手加減無しで良いと言う訳では無い。その気になれば毎日ドラゴンを狩って来る事も可能だが、そんな事をしたら、本当に魔王扱いされてしまう。

 Aランクの時と同様、1日に白金貨何枚分と決めて狩りをする事になる。あれ?結局何も変わって無くね?

 変わったと言えば周囲の扱い位かもしれない。やはりSランクと言うのは特別の様で、ギルド職員も、他の冒険者も接する態度が違って来る。こっちは意識していないのだが、相手は敬意と畏怖の入り混じった態度で接してくる。

 確かにこれはパーティーを組んだ方が動きやすそうだ。ソロだと逆に目立つ。しかしパーティーメンバーは誰でも良いと言う訳には行かない。気が合わない相手と組んだら最悪だ。

 窓口に行って、パーティー募集の相談をする。

「パーティーの募集ですか?現在ソロなら逆にメンバーを募集しているパーティーに入っては如何でしょう?」

「ああ、それも1案だな。でもSランクを受け入れてくれるパーティーってあるのかな?」

「Sランカーでしたか。失礼いたしました。流石にそれは難しいですね。」

 この受付嬢、僕がSランカーだと知らなかったのか?受付嬢ってギルドの情報は全て頭に入ってるんじゃないの?大丈夫か?

「とりあえず、前衛が2人欲しい。ランクは問わない。この条件で募集を掛けて貰えるか?」

「はい、募集は何時でも誰でも掛けられます。ただ、パーティーメンバーの募集は常にかなりの数出て居ますので、すぐに見つかるとは限りません。それでも構いませんか?」

「ああ、頼むよ。」

「解りました。では依頼書を作成して、1時間後までには貼り出して置きます。」

 これで、募集は掛けたが果たして、メンバーは集まるのだろうか?

 とりあえず、自分の募集が貼り出されるまで1時間程掛かるらしい。それまで他のパーティーがどんな募集を掛けているのか見てみよう。

 掲示板を見ると兎に角数が多い。ざっと見た所、やはり戦士の募集が圧倒的に多い様だ。なるほど、すぐに見つかるとは限らないと言う理由が判る。しかし、魔法使いの募集は少ないな。

 まあ、帝国の魔法使いのレベルは低いからなぁ。現実はこんな物か。道場の連中はちゃんと仕事が見つかるのだろうか?

 そんな事を考えながら見ていると、気になる募集を見つけた。魔法使いの募集の様だが、必要スペックが他の物とは比べ物にならない位高い割に、条件が悪い。これじゃあ誰も応募しないだろうと思える。実際、かなり長い間貼ってある様で、紙が色あせている。

 しかし、最後の1行に僕は惹かれた。『ランクは問わない。』

 これって僕も応募出来るって事だよね?

 パーティー名は『砂漠の宝玉』拠点には近くの食堂の名前が記されている。ここへ行けば良いのかな?

 と、依頼書に集中していたら、後ろから肩を叩かれた。ん?邪魔だったかな?

 横へスッとズレると、声を掛けられた。

「お兄さんもパーティー探し?」

 まだ、あどけなさが残る青い髪の少女だ。ハンターだから成人はしているのだろうが、女性と言うより少女と言う言葉が似合う。

「君もかい?」

「アデル。16歳、職業は斥候だよ。」

 ほう?16歳で斥候を選ぶとは面白い子だな。普通斥候と言うのは戦士や弓師で敏捷性が高い者が兼任する。パーティーの構成によっては専任になる場合もあるが、最初から斥候を職業にする者は少ない。

「僕はエイジ。17歳、職業は魔法使いだ。」

「へぇ、魔法使いかぁ。かなり使えるの?」

「どうかな?その辺の事は僕じゃ無くて周りが決める事だろ?」

 アデルは掲示板の僕が見ていた辺りをざっと見て。

「もしかして、これに応募しようとしてた?」

 そう言って、例の依頼書を指さした。

「いや、どうしようか迷っていた所だ。」

「ふーん。これに応募するって事はかなりの腕って事なんじゃない?」

「どうだろうな?応募しても落ちるかもしれないぞ。」

「良かったら、うちに来ない?丁度腕の良い魔法使いを探してた所なんだ。」

 うーん、どうなんだ?

「条件は?」

「その依頼書よりは良いと思うよ。」

「解った。とりあえず話を聞こう。拠点へ連れて行ってくれ。」

 条件が合わなければさっきの依頼書に応募すれば良い。まだ、僕の依頼書も貼られて無いし、時間はある。

「決まりだね。拠点は近くの食堂だよ。今ならメンバーが全員揃っているはず。」

 僕はアデルと一緒にギルドを出てアデルの拠点に連れて行ってもらう。

「ちなみにメンバーの人数と構成は?」

「剣士が2人と私の3人だよ。」

「なんかバランスの悪いパーティーだな。」

「実は魔法使いが居たんだけど、怪我して抜けちゃったんだよね。」

 ん?パーティーに戻れない程の怪我をしたのか?

「その魔法使いは腕の方はどうだったんだ?」

「攻撃魔法は悪く無いんだけどね、防御力が低くて。」

 防御力が低い魔法使いってどうなんだ?もしかして支援魔法を使えないんじゃ無いか?

「ほら、見えて来た。あそこだよ。」

 アデルが指さした先には、あまり繁盛して居なさそうな食堂があった。
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