転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

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 3冊の神に関する古代の本を読み終えた僕は、どうしても引っ掛かる記述に頭を悩ませていた。これは一度マルケーノ博士に話を聞いてみるとするか。

 翌日、久しぶりに道場へ行き、門下生たちの成長を見てから、マルケーノ博士の家に飛んだ。

 博士は相変わらず研究に没頭している様だ。たまには外に出ないと健康に悪いよ。

「おお、君かね。君の翻訳した本は非常に読みやすい。助かっているよ。」

「そうですか?お役に立ってるなら幸いです。今日は、その本の中の記述について少し話を聞かせて欲しいのですが、大丈夫ですか?」

「構わんよ。何処が知りたいんだね?」

「『人を超える』と言う本の、神の欠片についての記述です。神の欠片は意識して自分で育てる事が可能と言う部分と、人間のままでも、神の欠片を神格に昇華出来ると言う部分なんですが。」

 マルケーノ博士がふむふむと言いながらコーヒーを淹れてくれた。

「その記述は私も読んだが、実践して成功した者は今の所居ない。」

「そうなんですか?」

「うむ、まず、神の欠片の存在そのものが認知されて居ないのだ。」

「実は僕には子供が居るのですが、その子は人より大きな欠片を持っているとある人に言われました。何か影響があるのでしょうか?」

「なるほど、そう言う事か。まず、神の欠片を調べ、どの程度の大きさなのか知りたいな。」

 コーヒーを一口飲んで博士が言った。

「神の欠片を調べる方法が判らないのですが?」

「君は鑑定と探知の魔法は使えるかね?」

「はい、どちらも使えます。」

「ならば、その2つの魔法を組み合わせ、上位魔法を習得したまえ。」

「鑑定と探知の上位魔法ですか?どんな魔法です?」

「私は『真眼』と呼んでおるが、普通では見えない物を見る魔法じゃ。」

 ん?そいつはイメージが難しいな。レントゲン?MRI?ファイバースコープ?違うな、霊感みたいな物か?だが、鑑定と探知の上位魔法と言う事は何かを捉えていると言う事だ。

「ちなみに博士はどんなイメージでその魔法を使っているんですか?」

「私は眉間に第三の眼があるイメージで使っておる。両眼を閉じていても『真眼』があれば、見たい物が見える。この応用で目の見えない者を治した事もあるぞ。」

 それは赤外線スコープとか、温感センサーみたいな感じかな?駄目だな、なまじ現代知識があるのが邪魔している。もっと単純に見たい物を見るイメージかな?

「なかなか難しいですね。試しに僕の体を見て貰えませんか?発動した魔法を見ればイメージもしやすいので。」

「構わんぞ、ではそこのソファに横になってみろ。」

 言われた通りにソファに横になる。博士は僕の体を目をつぶったまま見ていた。

「この方が余計な情報が入らないのでな。と、お前さん、神格を持っているのか?」

 え?そこまで解るの?

「実は、この神格は封印されているんです。」

「ほう?珍しい物を見た。報酬を払うから実験台にさせてくれんかのぉ?」

「いや、流石にそれは。」

「お主が神格を持っているから子供が神の欠片を宿した可能性は高いのぉ。」

 やはり、そうなるよな。

「実際、神の欠片とはどのような影響をもたらすのですか?」

「まず、ステータスが上がる。そして、寿命が少し伸びるな。後は亜神になった場合に魔神になりにくくなる。基本悪い事は無いぞ。」

「神の欠片の大きさは関係してくるんですか?」

「うーん。統計を取る程サンプルがある訳では無いしな。あくまでも予測の範囲じゃが、欠片の大きさが大きい程、影響力が強くなると考えて良いだろう。」

 んー、これは本人に告知をしなければバレない可能性が高いと言う事か?

「神の欠片を取り除く事は出来ないんですか?」

「取り除く事は出来んが、砕く事は出来るぞ。」

「砕くとどうなるんですか?」

「神の欠片の恩恵が無くなるぞ。」

 ふむ、暫く様子を見て、日常生活に影響が出る様なら砕くと言う選択肢も頭に入れて置こう。それにはまず、真眼とやらを覚えないとな。

「ありがとうございます。何となくですが、方向性が見えてきました。」

「役に立ったのなら僥倖。しかし、お主の神格は話が別じゃぞ。出来れば自分でコントロールして、抑え込む事を覚えた方が良い。封印されていると言うのも問題じゃ、神格の影響が歪な形で現れる事があるかもしれん。」

「歪な形ですか?」

「お主は人のまま神になった様な状態じゃ。理性があるうちは良いが、理性を無くした時や、理性が薄くなった時に、何が起こるか私にも解らない。」

 どう言う事だ?ローレシアはどう言う意図で封印をしたのだろう?危険があると言う話は聞いていない。ベルクロスは一度神格を失ったと言う。ならば神格を奪い去る事も出来たはずだ。何故、僕に神格を残したままにして置くのだろう?

「ところで、封印されているとは言え神格を持っていると言う事は、常人より遥かに強いと言う認識で良いのかの?」

「概ね間違って居ませんが、出来れば内密でお願いします。」

「他言するつもりは無いが、一つ頼まれてくれんか?」

「頼み事ですか?僕で出来る事ならやりますけど?」

「実はな、1人鍛えてやって欲しい若者が居る。」

 ん?話の流れが不味く無いか?

「鍛えるって言っても、どの位鍛えれば良いのですか?」

「そうじゃのぉ、人を超えないギリギリで頼めるか?」

 やっぱ、そう来るか。

「構いませんが、僕の名前が出ない様に出来ますか?」

「うむ、そこは保証しよう。」

「何の為にとか聞かない方が良い話ですよね?」

「その辺は本人次第じゃな、本人が話したければ話すじゃろうし、話したくなければ聞かないでやってくれ。」

「解りました。何時からにしますか?」

「明日の朝にまた来てくれ、その時に今後の事も含めて話そう。」

 僕は博士の家を辞し、王国へと戻る。今日は時間に間に合った。

 流石に昼にアースドラゴンを食べて夜にブルードラゴンを食べる気にはならなかったので出すのを止めた。2、3日空けてからにしよう。

 そう言えばここの所、緋色の風と一緒に行動出来ていないな。本当なら明日合流しようと思っていたのだが、用事が入ってしまった。場合によっては、また暫く一緒に狩りに行けないかもしれないな。

 まあ、正式なメンバーじゃ無いから、僕が居ない方が彼らにとってはやり易いかもしれないな。それに、だいぶ稼げる様になったから、心配は要らないかな?

 翌日、ルシルとの稽古の後、帝国のマルケーノ博士の家に飛ぶ。今日は書斎では無く応接室に通された。

 コーヒーを出され。飲んでいると、博士が、1人の女性を連れて来た。

 ちょっと待って、まさか鍛えるのって、この女性?

「紹介しよう、こちらは、フローネル嬢だ。そして、そこに座っているのが、あなたに稽古をつけてくれる、エイジ君。」

 フローネル嬢が優雅に挨拶をする。僕も慌てて頭を下げた。

「嬢って事は貴族のご令嬢ですか?」

「まあ、そうなるな。だが、その辺はあまり気にしなくて良い。」

 いやいや気にするでしょう普通。

「本当に気にしなくて良いですよ。私の師匠になるのですから、呼び捨てで構いません。」

 リリの時とは状況が違う、明らかに年上の女性、しかも貴族の令嬢を呼び捨てとかハードル高いぞ。

「ちなみに今までに剣や魔法を習った経験は?」

「剣は幼少の頃から習っていました。魔法に関しては魔術学院を卒業しています。」

 なるほど、下地は出来ていると言う事か。もしかしたら現状でも結構強いんじゃないか?

「近くに訓練が出来る場所とかあるんですか?」

「少し離れますが、古くなって廃墟になった闘技場があります。」

 ほう?そんな物が取り壊されずに残っているのか。

「じゃあ、そこに案内して貰えますか?これからテストを受けて貰います。」

「テストですか?」

「心配しないで下さい。テストと言っても、これからの稽古の方針を決める為のテストですので、不合格とかありませんから。」

「解りました。では、ご案内致します。」

 僕とフローネル嬢は博士の家を出て闘技場へ向かった。博士は研究の続きがあるそうだ。なんか無責任じゃない?

 ちなみにフローネル嬢は貴族の令嬢に相応しい背格好をしている。言い換えれば戦士の体つきでは無い。これは結構時間が掛かるかもしれないな。

 綺麗な金髪に翡翠色の瞳が良く似合う。何故彼女が戦う必要があるのだろう?

 そんな事を考えながら闘技場へと歩を進める。
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