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 突然の事に僕自身頭が追い付かない。まず、ブラスマイヤーに言われた通りに稽古を続ける事にした。しかし、これだけでは、限界がある。奪われたステータスを取り戻さなければいけない。

 稽古で強くはなれるがステータスは上がらない。ステータスが上がらないと稽古をしても頭打ちしてしまうのだ。

 ステータスを上げるにはレベル上げが必須だ。レベルを上げるには魔物を退治するのが一番早い。

 大森林で魔物を倒しまくろうかと考えたが、この間間引いたばかりだ。これ以上の間引きは大森林の生態系を崩し、王国や帝国の侵攻に繋がるかもしれない。

 そこで、冒険者稼業に復帰する事になった。しかし、王国での僕のランクは既にSランクなので、帝国で冒険者をする事になる。

 現在、週に2日帝国へ行っているが、これからは毎日通う事になりそうだ。

 アスアスラの事も気になるので月に2回位は訪れたいのだが、どう都合をつけようか?

 道場に週2日顔を出すので、実質どの位冒険者稼業が出来るか判らない。まあ、焦る必要は無いのでじっくりとレベルを上げて行こう。

 ルシルは既に精霊レベルの力を持っているのでレベル上げはそこまで必要ではない。稽古で力を付けて行けば良いだろう。

 さて、もう一つ気になる事がある。それは神格の封印だ。神格を封印される事に寄って、どんな影響が出るのだろう?ローレシアは神格を取り除くのではなく封印に留めた。これには何か意味がありそうだ。

 おそらくだが、神格を取り除けば僕は普通の人間になる。だが、封印と言う時点で何らかの神様効果が残っているのでは無いかと推測している。邪竜ガンドロスは封印されても復活して来た。

 神格を持つ者は神格を持った者にしか殺せない。この言葉が引っかかっている。もしかしたら、封印された現状でもそのルールが適応される可能性がある。

 今の僕は年を取らないのだろうか?それとも、年は取るが普通の人間より遥かに長生きとか?その辺が解決しないとセリー達に説明が出来ないぞ。これは困った。

 翌朝、ルシルと稽古をしてから帝国に飛ぶ。

 帝都のハンターギルドに久しぶりに来てみた。相変わらずの混雑だ。

 掲示板を見たいが、見れる状況じゃない。窓口も列が長い。これは適当に魔物を狩って来て売った方が早いかな?そんな事を考えていると、声を掛けられた。

「あの、ソロの方ですか?ランクは?」

 15,6歳のいかにも新人と言った見た目の少年だ。いや、一応成人しているから青年か?

「ソロって言うか、ハンターの依頼を受けるのは初めてかな。ランクはGです。」

「そうですか。僕らはFランクパーティーの、『緋色の風』と言います。名前は大層ですが、実際はFランク4人の弱小パーティーです。」

「はあ、その『緋色の風』が僕に何の用事でしょうか?」

「宜しければ、僕らの依頼に参加しませんか?」

「それは『緋色の風』に入らないかと言う勧誘かな?」

「いえ、そう言う訳ではありません。実は、うちのパーティーはバランスが悪くてですね、盾役とアタッカーが1人ずつ、残りの2名が神官と魔法使いなんです。」

「特別バランスが悪いとは思えないが?」

「いえ、これがBランクパーティーなら問題は無いんですが、Fランクでこの構成だと攻撃力が低すぎるんですよ。」

 そう言えば帝国の魔法使いは弱いんだったな。って言う事は実質アタッカー1人しか攻撃が居ないって言う事になるのか。

「僕たちは常時依頼のゴブリン退治に行こうと思っています。出来ればもう1枚攻撃の手段が欲しいのですが、あなたは装備から見るにアタッカーですよね?」

「そう言う事だと、今日だけの臨時パーティーメンバーで良いのか?」

「それでも構いませんし、相性が良ければメンバーに入って頂いても結構ですよ。」

「ふむ、悪く無い条件だな。報酬は?」

「メンバーで山分けです。」

「解った。参加しよう。」

「そうですか。ではこちらに来て下さい。メンバーを紹介します。」

 そう言って青年はギルドの外へと僕を導く。ギルドを出てすぐの道端にメンバーが揃っていた。

 驚く事に盾役がごつい女性だった。灰色の髪の毛が爆発したような髪型のかなりマッチョな女性だ。この世界でこの手の女性を見るのは初めてだな。

「彼女が盾役のヒルダです。で、アタッカーのシン。」

 こちらも見た目は強そうな金髪の青年だ。でもFランクなんだよね。

「そして、僕が神官のリオン。最後が魔法使いのレーネです。」

 ほう、最初の青年は神官だったのか、で、最後に紹介された華奢な茶髪の女の子が魔法使いか。戦う魔法使いの体じゃ無いな。支援魔法で後方支援する要員かな?

「僕は魔法剣士のエイジです。剣も魔法も使いますし回復も行けます。まだ登録したばかりなのでGランクです。実力は、見て判断して下さい。」

 そう自己紹介をした。

「へぇ、剣も魔法も使うってのは珍しいな。でも攻撃が1枚増えるのはありがたい。」

 そう言ったのはアタッカーのシンだ。見た目に反して好青年らしい。

「攻撃が増えると盾役も楽になる、助かるよ。」

 ヒルダが右手を差し出した。お、この世界にも握手ってあるんだな。

 その後、残りの2人がお辞儀をして顔合わせが終わった。

「時間が無いから歩きながら続きは話そう。」

 そう言ってシンが先頭で東門へ進む。どうやら実質のリーダーはシンの様だ。

「今日は東の森に向かう、理由は現在、ゴブリンが南で多く発生していて、徐々に東に上って来ているからだ。南にはEランカーが多く、Fランクパーティーの俺らでは獲物にありつけない。だからあえて東へ向かう。」

「ゴブリン以外の魔物の状況はどうなんだ?」

 盾役のヒルダが聞く。

「Fランクパーティーが討伐できる魔物はEランクまでだ、門からそれ程離れなければそこまで強い魔物は出て来ない。」

 まあ、強い魔物が居ればランクの高いパーティーが行きがけに倒して行くのがお約束だ、そうそう門の近くに強い魔物は出ないだろう。そうでなければ商人や他の町に行く旅人が危険にさらされる。ギルドでは定期的に討伐を行っているはずだから、魔物の生息分布はそれ程大きく変わらない。

「さて、フォーメーションだが、前衛にヒルダ、中衛に俺とエイジ、後衛にリオンとレーネだ。」

 シンがそう宣言する。リオンはともかく、魔法使いのレーネを後衛に回すのはどうなんだ?そう思ったが、まあ、このパーティーの戦い方を見てから判断しよう。魔法使いなら僕も居るしね。

 ギルドから徒歩でおよそ1時間、目的地に着いた。9時半に出発したので現在10時半だ。帰りも1時間かかる事を計算すれば、出来れば4時位までに討伐を終えたい。戦えるのはおよそ5時間と言った所だ。

 僕一人なら5時間もあればゴブリンなら1000匹位行けるが、Fランクパーティーの5時間の成果ってどの位なんだろう?

「さて、ここからはフォーメーションを組んで進むぞ。指示はヒルダに任せる。頼んだぞ。」

「解った。森に直進で進むから、付いて来て。」

 戦闘時の指揮はヒルダに移るのか?こう言う場合は後衛が指揮する方が良いと思うのだが?それに探知を使わないの?

「なぁ、リオン。パーティーに探知持ちは居ないのか?」

「探知持ちなんてBランクパーティーでも滅多に居ないよ。」

 うわっ。マジで帝国の魔法使い、使えねぇ。

 僕は探知魔法で周囲を警戒する。思ったより魔物の数は少ない。ゴブリンと思われる反応もポツポツと点在するが、群れは居ない。

 まあ、これならアドバイスする必要は無いだろう。ヒルダに続いて歩いて行く。

 100メートル程進んだ所で、犬の魔物に襲われた。2匹だ。

 1匹をヒルダが抑えて居る間にシンがもう1匹をサクッと退治した。そして、ヒルダが抑えて居る魔物に止めを刺す。

 ん?これって盾役要るか?今はヒルダが止めを刺せるだろう。って言うか、誰か指示を出せよ。

 犬の魔物は素材にならない。魔石だけを取り出し。捨てて行く。

 更に5分程歩くとまたしても犬の魔物が出る。どうやらこの辺りは犬の魔物の縄張りらしい。

 今度は1匹だ。どうするのかと思ったら、シンが突出して退治。おいおい。本当にバランス悪いな。効率も悪いし。Fランクパーティーに盾役ってどうなの?
  
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