上 下
120 / 308

120

しおりを挟む
 翌朝、稽古の時間にライザ特製ドラゴンゴーレム改を使用した。ライザの操るドラゴンゴーレムは昨日の奴とは段違いに強い。こちらは僕と爺さん、ベルクロスの3人だが、なかなか攻撃が通らなくて苦労する。

 戦闘訓練では武器や魔法は禁止だ。肉体のみで戦う。全く攻撃が通らない訳では無いのだが、決定打に掛ける。

 って言うか、このドラゴンゴーレムがあれば王国位制圧出来るのでは無いか?そう考えるとライザの戦闘力はかなり高い事になる。
 
 結局ドラゴンゴーレムは8時間位掛けて削りまくってようやく倒した。その後は組手に移る。

 午後は帝国に転移する。まだ道場は出来ていないが、道場が無くても魔法の稽古は出来る。そろそろ道場の勧誘を始めても良いかなと考えての事だ。

 勧誘ってどうするんだろうと商業ギルドで聞いてみたら、ポスターとチラシ配りだそうだ。帝国は紙が普及しているからね。

 建築中の道場を見学しながら、準備をしていると。リリがやって来た。

「先生。こちらに居たんですね。探しました。」

 さっき別の国から来ましたとは言えないので頷いて置く。

「父が用事があるそうなのですが、来て頂けますか?」

 ほう?侯爵が?僕はリリの肩に手を置いて、侯爵邸の前に転移する。

「案内してくれ。」

「はい。」

 リリと一緒に応接室で待っていると、侯爵がやって来た。

「呼び立てて済まんのう。あまり大げさにしたくない事なので、頼める者が少ない。是非、君に頼みたいのだが、まずは話を聞いてくれ。」

 帝国の西には共和国がある。この共和国との国境は川になって居るそうだ。かなり大きな橋が架かっており、交易も盛んに行われている。

 問題はこの橋の南側だ。この辺りは未開拓地で森林が広がっている。帝国はこの地を『聖獣の森』と呼んで神聖視しているそうだ。しかし、一方で共和国では『魔の森』と呼ばれ、時折ハンターの討伐対象になるそうだ。

 何故、同じ森が2つの呼び名で呼ばれているのかは分からないらしい。

「実はだな。近く共和国が大規模な討伐を魔の森で行うと言う情報が入った。」

「なるほど、帝国側としては困ると?」

「うむ、あそこに聖獣様が住むと言われている、本当に住んでいるなら討伐されるのは避けたい。」

「聖獣と崇められる者が人間に討伐されるでしょうか?」

「それは、それで、厄介なのだよ。討伐隊が被害を受ければやはり魔の物が住んでいるとなるだろう?」

「なるほど、つまり聖獣と討伐隊の接触を避けたいと?」

「ふむ、そう言う事になるな。」

「解りました。面白そうなので引き受けましょう。」

「そうか?頼まれてくれるか?助かる。」

 侯爵に頭を下げられてしまった。

 まずは現地の視察からだな。フライで上空から地形を把握する。確かに川が流れていて、下流が森林になっている、大きさは帝都より若干大きい位だ。

 サーチを掛けるが認識疎外の魔法が掛けられている様だ。でも、それって居ますよって合図になってますよ。

 認識疎外の魔法の中央辺りに降りてみる。ふむ、何かは居る様だが、敵意は感じないな。

 って言うか聖獣ってなんだ?フェンリルは神獣だよな?白虎・青龍・玄武・朱雀だっけ?4聖獣って居たよな。あれは日本の話だったか?

 森を歩いていると時々何かの気配が横切る。付いて行けないスピードでは無いが、下手に手を出して良い物か?

 15分程森の奥へ向かって歩いていると突然声が聞こえた。

「それ以上は駄目。引き返して。」

 先程の気配が具現化している。見た目は人間の少女だ。10歳位に見える。

「もしかして、ドライアドか?」

「その通り、この先は聖獣の住処。何人たりとも入る事は許しません。」

「困ったな。その聖獣に重要な話があるんだが?」

「人間が聖獣に話?」

「その前に僕が人間に見えるかい?」

 ドライアドが怪訝そうな顔をする。意外に表情が豊かだ。

「神の波動?あなたは使徒?」

「まあ、似た様な物だな。」

「それは、失礼しました。そのまま真っすぐ進めば聖獣の住処に辿り着くように森を弄ります。」

「助かるよ。」

 僕はドライアドに礼を言って歩を進める。

 暫く進むと、なんか、モコモコのぬいぐるみの様な生物が居た。

 しかも1体では無いかなりの数だ。最低でも50匹は居るだろう。

 大きさや動きはスライムに似ている。だが、毛がモコモコだ。なんだこの生物?

 そう言えば今までにスライムって見た事無いな。この世界のスライムがこれか?

「あー。長とか居るのかな?一番偉い奴と話がしたいんだが?」

「奥に集落があります。長はそこに居ます。」

 見た目に反して知性的な言葉を話す。しかも帝国語だ。

 案内された集落は思った以上に文明的だ。

「私が、この集落を治めて居る者じゃ。お主は?」

「はい、帝国からの使者として参りました。」

「何かトラブルかね?」

「ああ、隣の共和国が大規模な討伐を行います。ここも危険にさらされるかもしれません。」

「ふむ、共和国の連中があの川を渡って来れるかのぉ。」

「ところで、凄く基本的な質問をしても良いでしょうか?」

「構わんぞい。」

「聖獣様って何者なんでしょうか?」

「ああ、人間が生まれる前より存在し、人間より高い知能を有し、時には神と崇められていた時もある。簡単に言えば魔物の古来種だな。」

「その姿は?」

「昔は手足もあったのだがな、長い間の進化で手足は無くなり頭だけになった。」

「普段の生活が不便ではありませんか?」

「我々には念動力と言う力がある。不便を感じた事は無いな。」

「で、どうします?ここに留まりますか?それとも一時的に避難しますか?」

「留まる。人間の軍隊など我らの相手にならんわ。」

「それも、困るんですよね。討伐隊に被害が出ると更なる人数の討伐隊が来ますよ。」

「確かに面倒だな。ドライアドの認識疎外でなんとかならんか?」

「解りました。僕が少しばかりドライアドに力を貸しましょう。それでなんとかなるはずです。」

「そうか?それは助かる。ところで食事を食べて行かんか?」

「良いんですか?」

「客人は持て成す。常識じゃろ?」

 聖獣の食事は何となく宇宙食を思わせる物だった。味は美味いんだけどね。

 酒は飲むんですか?と聞いたら大好物だそうだ。僕は竜泉酒を皆に振舞った。聖獣の酒も呑ませて貰ったが。これもかなり美味しかった。

 宴会にはドライアドも混じっている。

「なぁ、ドライアドの力が弱まっている気がするんだが気のせいか?」

「良く解りましたね。実は神樹が死にかけているのです。」

「原因は?」

「良く解りませんが、寿命かと。現に、新しい神樹が別の地に芽吹いています。」

 ドライアドに頼んで神樹の場所に案内してもらった。実際に見てみないと解らないしね。

 神樹は、葉が数枚しか付いてなかった。

「この神樹の葉は万能薬になるんです。ドラゴンの血と混ぜるとエリクサーが作れるとも言われています。」

 神樹はかなり大きい。それに対して根が細い気がする。更に地上に出てしまっている根も多い。寿命と言うのもあながち間違いでは無い。

 僕は時越えの魔法を-1000年で掛けてみた。神樹はみるみる緑を取り戻し神々しく淡く光る。

「何をしたんですか?」

「神樹を蘇らせた。」

 すると少女の姿のドライアドが大人の女性の姿に変化した。ドライアドは露出が多いのでちょっと刺激が強いな。

「この葉っぱ何枚か貰って良いかな?」

 そう言うと神樹が震えて10枚程葉っぱが落ちて来た。どうやらくれるらしい。

 葉っぱをストレージに仕舞った。あとでエリクサーを作ってみよう。

「ドライアドの力が増せば認識疎外の魔法も強くなるんだろ?」

「はい、必ず聖獣様を守って見せます。」

「頼んだぞ。」

 結果から言うと共和国の討伐隊は失敗した。川に橋を架けるのに失敗し、討伐隊の3分の1を失ったそうだ。これで暫くは大規模な討伐隊は組まれないだろう。

 侯爵に結果を報告して、完了だ。今回の報酬は白金貨5枚。それ以外の付属品はなしだ。

 まあ、この位の仕事が僕には合ってるかな。あまり帝国で手柄は立てたくない。だが、今回の様に人目を忍んでやりたい放題と言うのは歓迎だ。

 ちなみに聖獣様との交流は続いている、月に1回位だが、美味しいケーキなどを差し入れして、代わりに知識を貰っている。聖獣は何と言うか人間臭いので気が合う。
しおりを挟む
感想 299

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...