転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

文字の大きさ
上 下
107 / 308

107

しおりを挟む
「儂もそうじゃが、こいつが生き物だと何故思った?」

「え?動いてますよ?それに精神攻撃してるって。」

「ふむ、生き物の定義は?」

「心臓と脳がある事ですか?」

「そうじゃな、儂らの常識ではそうじゃ。だが、これは異界の物。生物と考えると色々とおかしい。」

 確かに、言われてみれば色々とおかしな点はある。しかし、この不気味に動く醜悪な物体が生き物で無いとすると何なんだ?

「仮定の話になりますが、この次元の裂け目は自然発生してるんですよね?もし、なんらかの意思がそこに存在したらどうでしょう?」

「誰かが次元の裂け目を意図的に操っていると言うのか?」

「もし、僕が異世界に行けるとしたら、真っ先に考える事は、その世界に人が住めるかどうか調査しますね。」

「む?この物体は何らかの探査機と言う事か?」

「そう考えた方がしっくりと来ませんか?偶然に繋がった次元の裂け目に生物で無い物が落ちますか?」

「確かに確率的には物凄く低いじゃろうて。だとすると。」

「これが意図的に落とされた物なら何らかの情報を送っているはずです。つまり、次に現れるのが本命かと。」

 皆が一斉に次元の裂け目に目を向ける。その間も謎の物体はうねうねと動いているだけで何もして来ない。

「しかし、まず、こいつをどうするかじゃな。このままにはして置けんじゃろう?」

「生物では無いのなら燃やしてみますか?」

「下手に燃やして有毒ガスでも出たら事じゃぞ?もしくは爆発されても困る。」

「宇宙の彼方に転移で飛ばしますか?」

「ふむ、それは一考の余地があるやもしれんな。」

『それは出来れば止めて頂けませんでしょうか?』

 ん?なんだ、この声?どこから聞こえた?

『今から降りて行きますので攻撃はしないで頂きたい。』

 すると次元の裂け目がほんの少しだけ開き、小さな白い物体がゆっくりと降りて来た。

 ルシルとベルクロスは臨戦態勢だ。

「ほう?人語を理解するか?知能が高いのう。」

『あなたがたの会話を聞いて言語を解析しました。おかしな所は無いでしょうか?』

 ゆっくりと重力を無視して降りて来たのは人型の生物だ。簡単に言えば人間だ。異界人とでも言えば良いのだろうか?見た目は我々によく似ている。性別は不明だが、声は女性に聞こえた。

「おかしな所と言えば、その発生方法だな。声が口から出ていない。」

『口ですか?この体には言語を発生する器官があると言う事ですね?』

「そうだな、君は知能は高い様だが、我々の事については知って間もないのだろう?」

『そうですね。先程初めて、この世界の住人のデータを取らせて頂きました。この姿もあなた方を刺激しない姿を模倣したのですが、おかしく無いでしょうか?』

「単純な質問だが、もしかしたら君たちには決まった姿と言うのが無いのか?」

『はい、そうです。』

「そうか、なら仕方ないが、その声はおかしい。我々は声帯と言う器官で空気を振動させ言葉を相手に伝えている。理解できるか?」

「なるほど、こう言う感じでしょうか?」

 異界人が初めて言葉を発した。心なしかルシルの声に似てる気がする。サンプルに取ったのかもしれない。

「ああ、悪く無い。ところで、君が、異世界であるこの世界に来た理由は教えて貰えるのかな?」

「難しい理由ではありません。我々の住む世界は非常に住みづらいのです。なので、遥か昔から新天地を求めていました。」

「それはこの世界を侵略すると理解して良いのか?」

「いや、そうではありません。我々の個体数は非常に少ない。なので各自が各々自分に合った新天地を探しています。侵略する気もありませんし、その数も居ません。」

「あー、この世界に来るのは君だけと言う事になるのか?繁殖はどうするんだ?」

「我々は生物と言うより思念体に近い存在と考えて下さい。なので繁殖は致しません。」

「繁殖しないと言う事は永遠に生きるのか?」

「生と言う概念もありませんが、この世界の理に合わせればそうなりますね。」

「と言う事だけど、どうする爺さん?」

 あれ?皆が吃驚した顔をしているが、何かやらかしたか?

「お前さん、その異界人の話が理解できたのか?」

「え?今の話理解出来なかったんですか?」

「ハッキリ言って半分も理解できなかったわい。お主どんな頭の構造をしとるんじゃ?」

「簡単に言えば、異界から来たこの方は敵意は無いという事ですよ。」

「それは解った。だったら、こいつはどうにかならんかのう?」

 そう言って、初めに現れた物体の方を見る。

 あ、忘れてた。

「そうそう、このでか物は何かの調査機なんだろう?これってさ、我々には危険なんだけど、何とかならない?」

「ああ、失礼しました。」

 そう言って異界人が何かをすると、その物体は小さくなった。そのサイズ5センチ程。異界人は手で摘まみ、飲み込んだ。

 え?何してんの?

「この世界の情報を体内に取り込みました。」

「色々と聞きたい事があるんだが、ここでは何なので、家に来るかい?」

「家と言うのはこの世界の居住空間の事ですよね?」

「そうなるな。何か問題でもあるか?」

「いえ、まずは私の立場をはっきりさせて頂きたいと思いまして。」

「立場?」

「はい、私は捕獲されたのでしょうか?それとも友好的に受け入れられたのでしょうか?」

「それは君の事を知ってから判断したいと思っている。危険でなければ友好的に受け入れよう。その為の対話をする為に場所を移動したい。」

「理解しました。」

「ところで君たちに性別はあるのかな?」

「繁殖をしないので性別はありませんね。」

「では、何故その格好を選んだんだ?」

「別に特別な意図はありません。あなた方に警戒されない姿の候補から私の好みで選択しました。」

「なるほど、その選択はあながち間違ってはいないと言って置くよ。」

 その後我が家に場所を移す。ルシルとベルクロスは話に着いて行けないと稽古に行ってしまった。実質、僕と竜王の爺さん、そしてブラスマイヤーが対応に当たる。

 応接室でお茶とお菓子を出してみた。

「これは我々の食料の一部です。我々は食料を摂取し生命を維持しています。」

「あ、理解は出来ます。私の世界にもそう言う生物が居ました。」

「ほう?あなたの世界は住みづらいと言いましたが、どんな世界だったのですか?」

「一言で言えば非常に高温な世界でした。なので、進化の過程で我々は肉体と言う概念を捨てました。」

「ほう?それで、この世界に来て、再び肉体を持ってみてどうですか?生活して行けそうですか?」

「ええ、この世界は私の世界より重力も小さいようです。なので、非常に住みやすい環境と言えるでしょう。」

「これは是非確認しておきたいのだが、争いと言う概念はあるのか?」

「ありますね。ただ、我々には肉体が無いので物理的な争いではありません。」

「君はこの世界に移住して、何を成そうとしているんだ?繁殖でも侵略でも無いと言うなら目的は何なんだ?」

「目的ですか?特にこれと言った目的はありません。強いて上げるなら過酷な環境下での生活に疲れたのです。我々は基本永遠に生き続けます。なので、どうせ生きるなら楽に行きたいと言うのが目的でしょうか?」

 なんだろう?シンパシーを感じるな。僕もスローライフの為に生きているからなぁ。

「解った。君を受け入れよう。暫くはこの家でこの世界の事を学んでくれ、後は自由にして構わない。」

「ありがとうございます。」

「ところで名前を聞いてないのだが?」

「名前と言う概念が無いのです。」

「それも困るな。じゃあ君に名前をプレゼントしよう。男性と女性どっちの名前が良い?」

「では女性でお願いします。」

「では、君の名前は『ライザ』と名付けよう。」

「ライザですか?何か意味があるのでしょうか?」

「僕が自分の子供に付けようと考えていた名前だ、気に入らないか?」

「いえ、嬉しいです。」

「ほう?そう言う感情があるんだな。やはり知能が高い。」

「あなたもこの世界の一般人に比べて知能が高いと感じます。最初に会ったのがあなたで良かった。」

 こうして、また1人、我が家に人ならざる者が増えた。なんかどんどん人間から離れて行って無いか?

「ところで爺さん、ライザの事どう思う?」

「ふむ、危険は無いだろう。あ奴は戦闘力は殆ど無いと言って良いだろう。危険があるとしたら、知識じゃな。あまり高度な知識をこの世界に広めて貰っては困る事があるじゃろう。」

「なるほど、知識も凶器になるって事か。まあ、その辺は僕とブラスマイヤーで抑えるよ。」

 ドラゴンの次は異世界転移者とか僕ってやっぱ呪われてる?

 とりあえず知識がかなり現代日本人に近い気がするので参謀として育ってくれれば面白いと思っている。

 まあ、駄目で元々だし、大きな被害が出なかったので良しとしよう。
しおりを挟む
感想 299

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

処理中です...