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 翌朝は稽古の後ロンダールへ飛んだ。ルキナに会う為だ。

 実際ルキナは良くやっている。5人の部下を使いこなし、短期間で2つの町を一つにすると言う、無茶な計画を何とか軌道に乗せ、町の産業の再編や、新たな農地確保、住宅地の建設まで。プレイースでの経験があるにしろ、ここまでにするのは大変だったろう。

「順調な様だな。困った事は無いか?」

「プレイースでの経験が生きていますね。冒険者を使ったマジックバッグ便、あれがあったおかげでかなりスムーズに物の移動が出来るのが大きいです。半分は輸出入、半分は街中での移動で活躍してますよ。」

「そうか?じゃあ、あと30枚預けるよ。上手くやってくれ。」

「助かります。」

「ところで、嫁さんは見つかったか?」

「いや、そんな時間ないですって。」

「それは困ったな。縁談は沢山来てるんだろう?」

「確かに縁談は沢山来てますが、9割は金目当てですね。私がかなり儲けている様に見えるのでしょう。」

「実際、どうなんだ?儲けてるのか?」

「入るお金も多いですが出るお金も多いですね。領主館の維持って結構金が掛かります。」

「なるほどな。少し楽にしてやれるかもしれんぞ。」

「え?それはどう言う事ですか?まさかクビ?」

「違うって。ルキナ、お前を男爵に叙爵する。家名はビクトーリア。ルキナ・フォン・ビクトーリア男爵だ。」

 そう言って1枚の紙を渡す。

「俺、いや、私が男爵に?」

「ああ、正式には王城で叙爵の手続きが居るがな。ほら、この手紙とさっきの紙を持って、宰相に会って来い。それで新男爵の誕生だ。」

 僕はルキナを男爵に叙すると言う旨の手紙を渡す。

「男爵になると年間白金貨10枚が国から貰える。屋敷の維持位は出来るだろう。と言う事でルキナ。男爵に相応しい嫁を探せよ。」

「ついに年貢の納め時か。」

 どうやらルキナは現状の縁談が沢山来ている状態を気に入っていたらしい。

「ちなみに、貴族は王都に家を持たなければならない。が、ルキナは暫くうごけないだろう?なので僕の方でそっちはやって置くよ。」

「侯爵様にそこまでして頂いて申し訳ありません。」

「いやいや、僕の代わりに頑張って貰ってるんだから、この位はしないとね。それから、領主補佐から領主代理に名前を変えるよ。これは貴族になったんだから、当然かな。他の5人のメンバーの処遇も自由に決めて構わない。」

「なるほど、少しだけ権力が強くなるんですね。」

「貴族になると言う事はそう言う事だ。ちなみに嫁は2人まで貰えるぞ。」

 僕がそう言ったらルキナが真剣な顔で悩んでいた。

 その後今後の方針を話し合ってお開きにした。

 午後は家庭教師だ。帝国に飛ぶ。

 リリに付与魔法を教えていたら、やけに外が騒がしい。

「なんでしょう?」

 若いメイドが駈け込んできて、事態が解った。

「帝都の上空に巨大なドラゴンが現れました。」

 巨大なドラゴンねぇ。サーチを発動する。確かにでかいな。神竜よりでかいぞ。エンシェントドラゴンって奴か?

 しかしなぜだろう?敵意は感じないんだよね。だが、発する気だけで、気の弱い人間は倒れそうだ。

 放っておくわけには行かないよな?

 ドラゴンの気を頼りに転移する。あれ?居ないぞ?下か?

 下に降りてサーチを掛ける。明かに人外の気を持つ老人がそこに居た。

 巨大なドラゴンからは想像も付かない小柄な老人だ。

「えーと、お爺さんは何者なんですか?」

「ほう?200年昼寝をしているうちに面白いのが現れたな。」

 ん?面白いのって僕の事?

「儂を退治に来たのか?」

「いや、話が通じるなら、まずはお話を聞かせて頂きたいなと。」

「これはますます面白いのぉ。」

「で、お爺さんは何者なんでしょうか?」

「儂か?儂は竜王と呼ばれておる。人類が生まれる前から生きておる化石みたいなもんじゃな。」

 神竜の次は竜王ですか?僕は絶対にドラゴンに呪われているに違いない。

「地上に降りて来た理由をお聞きしても?」

「大した意味は無いぞ、さっきも言ったが昼寝から目が覚めたので適当にワイバーンでも狩って食おうかなと思っていた所だ。ついでに人族の発展ぶりを見ていた。」

「なるほど、人間に敵意は無いんですね?」

「うむ、人間など取るに足らん存在じゃ。別に食っても美味く無いしな。しかし、お主は変わっておるのぉ。儂の知っている神の匂いがする。」

「神と知り合い何ですか?」

「ああ、暇なんでな。時々神と喧嘩をして遊んでおる。」

 おいおいとんでもないな。

「ちなみに、お爺さんは人化した状態でもかなり食べるんですか?」

「いや、この体の時はあまり食わんな、それに数百年位なら何も食べずに生きられるしな。」

「じゃあ、家に来ませんか?ご馳走しますよ。」

「お?そうか?しかし、本当にお主は変わっておるな。」

「ははは、良く言われます。」

 とりあえずリリに挨拶をしてから王都へ転移した。自宅の近くである。

「ほう?転移魔法を使うか?ますます面白い。」

「神と喧嘩するって言ってましたけど、強いんですよね?」

「そうじゃな、純粋な戦いなら、神の中でも最強と言われるブラスマイヤーと互角じゃな。」

 ほう?なるほど、なんでブラスマイヤーが出て来ないのかやっと解った。

「神は不死じゃからな、安心して喧嘩出来る。間違って殺してしまったら喧嘩出来なくなるからのぉ。」

 このお爺さんもバトルジャンキー?

 家に着いたら、ルシルとベルクロスが戦闘態勢で待っていた。

「お客様だから失礼のない様に。」

 僕がそう言うとルシルとベルクロスは唖然とした顔をしていた。

「お主以外にも面白いのがおるのぉ。なんじゃここは?」

「まずは食事にしましょう。詳しい話はあとでじっくり。」

 執事のルーメンさんに頼んで少し早めの夕食にしてもらう。

 竜王の爺さんは久しぶりに食べる人間の食事が進化しているのに驚いている様だ。

「満足して頂けたようで何よりです。では、現在の状況を少しお話しましょう。」

 そう言って爺さんを庭の亜空間に連れて行く。ルシルも一緒だ。中に入るとベルクロスが待っていた。

「この2人の正体はもう解って居るんでしょ?」

「ああ、2人共若いがドラゴンじゃな。しかし、年の割には強すぎる。」

「僕も含めて3人共ブラスマイヤーの弟子ですよ。」

「なんと、あのブラスマイヤーが弟子だと?」

 竜王の爺さんが今日一番驚いた顔を見せた。

「そう言う事だ、久しぶりだな爺さん。」

「ブラスマイヤー?」

「訳あって、現在は地上に居る。」

「ほう?神が地上に降りるとは、何事じゃ?」

「降りたのは偶然だ。問題は邪竜ガンドロスが復活する。」

「あ奴がのう?しかし、見た所苦戦しそうなメンバーには思えんが?」

「まあ、俺様が鍛えてやったからな。だが、俺は完全体では無い。練習相手が欲しいと思っていた所だ。」

「なるほど、それは儂でも構わない訳じゃな?」

 ルシルとベルクロスは話に着いて行けていない。

「あー説明するとだな。このお爺さんは竜王らしいよ。なんでもブラスマイヤーと互角に戦えるらしい。」

「それは、明日から竜王様と稽古が出来ると言う事ですか?」

「なんか、その方向で話が進んでるねぇ。」

 と言う訳で翌朝から、竜王の爺さんが稽古に参加した。この爺さんとんでもないぞ、1対3でまるで歯が立たない。

「ブラスマイヤーより強いんじゃない?」

「いやいや、本気のブラスマイヤーはこんなもんじゃ無いぞ。」

 マジですか?ブラスマイヤーさんどんだけ強いんですか?

 何時もの3倍は疲れた、亜空間から出て2時間は動けなかった。

 午後、家庭教師に向かうと、リリに昨日の事を根掘り葉掘り聞かれた。

「昨日のドラゴン退治したんですか?」

「いやいや、お話して帰って頂きましたよ。古龍は人語を理解する者が多いんですよ。」

「そうなんですか?それは退治するより凄いですね、さすが先生です。」

 あれ?これって侯爵に伝わっているパターンでは?ふと後ろを振り返るとニコニコとした笑顔の侯爵がいた。

 侯爵に古龍と話し合いをして帰って貰った事を話した。

「お主には驚かされるな。古龍と話をするとは誰も考えんぞ。」

「そうですか?ドラゴンにしろバンパイアにしろ知能が高いなら対話が可能だと思いませんか?」

「ふむ、言われてみればそうなのだが、その発想がなかなか出て来ないのが人間だ。」

「そう言うもんですかね?」

「もし、その古龍に攻撃を仕掛けていたらどうなっていた?」

「まあ、良くて帝都壊滅ですかね。最悪、この大陸の3国が全滅と言う事もあり得ます。」

「そうなるとお主の功績は大きいな。何か褒美を与えないと行けないな。」

「いや、褒美とか要りませんよ。目立つと色々と不味いんで。」

「そう言う訳にも行かんのが国と言う物なんだよ、解るだろう?」

 ん~、困ったなぁ。
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