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 翌日、稽古が終わった後、大森林に行こうと王都の西へと飛んだ。しかし、大森林の前には巨大な壁が聳え立っていた。駐屯している部隊も居る。これは簡単には通れそうにないな。

 一旦北上するルートを取り、1キロほど進んだ所で、再度西へフライで飛んで行く。暫くすると木々の太さが明らかに違って来る。多分、ここが大森林なのだろう。地上へ降りると鬱蒼としたジャングルを想像していたのだが、意外にも木と木との間隔は広い。1本1本が大樹なので上から見るとジャングルの様だが、実際に下を歩く分には、邪魔な雑草もすくなく、歩きやすい。ただ、魔物に襲われた場合隠れる場所が少ないとも言える。

 ブラスマイヤーに米の場所を指示して貰いながら、ゆっくりと探索する。他にも有用な物が見つかるかもしれないからだ。

 暫く歩くと米の群生地があった。どうやら湿地帯と言う訳でも無い様だ。麦の様に普通の畑で稲作が出来そうだ。これは面白い発見だ。とりあえず。食べられそうな実を100キロほど収穫してストレージに入れた。場所もマーキングして置く。

 他にも何か無いかと探していたら。胡椒の群生地が見つかった。これも50キロ位頂いて置いた。他にも茶葉や見た事の無い果物などが見つかった。一応サンプルで少量持ち帰る。

 2時間程探索したが、大した魔物は出なかった。ここは面白いまた来ようと心に決めて、一旦王都へ戻る。

 米は手に入ったが、これに合うおかずが欲しいよな。手持ちの調味料で作れる物と言うと、出汁が無いからなぁ、限られるんだよな。本当はかつ丼が食いたいのだが、牛丼にしておくか。商店街に向かい牛肉の脂身の多い部分を購入し、一応八百屋で玉ねぎを購入する。ショウガも忘れちゃだめだな。紅ショウガは作り方が解らないけど、まあいっか。あそうだ、米を炊くのに蓋の重い鍋が必要だな。金物屋で買って行こう。

 家に着くとまだ、4時過ぎだ夕飯には早いが良いだろう。厨房に向かう。

 米は魔法で精米してある。粒がそれほど大きく無いので、精米はギリギリ白米になる程度で抑えて置いた。

 米を研ぎザルに上げて置く。

 その間に見習い君に牛肉を薄切りにして貰う。この世界ではあまり薄切りと言う文化が無いのか、見習い君は苦戦している。まあ、食べられれば良いぞ。

 料理酒を煮切ってジャンを加え、砂糖を足してベースのタレを作る。ここに玉ねぎを多めに加えて、水で味を調節しながら火を入れて行く。玉ねぎが透き通って来たら、牛肉の薄切りを入れて、ショウガのすりおろした物を加え。サッと煮たら一旦火を止めて味を入れて行く。

 次は米だ、米を鍋に入れる。人数が多いので1升位炊いて行こう。米と同量の水を入れる。蓋をして、最初は弱火で煮たって来たら火を強める。およそ40分程で水蒸気の量が減って来たので火を止め、蒸らす。15分蒸らして、開けてみたら、若干焦げ目がある物の初めてにしては良く炊けている。やはり薪だと火加減が難しいな。

 ここへ来て丼が無い事に気が付く。しょうがないので深めの小鉢にご飯を盛りつけ、上に汁気を切った牛丼の具を乗せて完成だ。何時もの様に3人分貰って、後は見習い君に任せる。

 食堂にはルシルとセリーが座って待っていた。

「あれ?呼びに行こうと思ってたのに。」

「あれだけ良い匂いをさせて居れば誰でも気づきますよ。」

 2人の前に牛丼を置く。箸は使えないだろうからフォークにしてみた。

「これは牛丼と言う食べ物で、ライスと言う穀物を使っている。パンとはまた違う食感なので駄目だったら遠慮なく言ってくれ。」

「これは非常に食欲をそそる香りですね。ライスと言うのもエイジさんが選んだと言う事はきっとおいしいはずです。楽しみです。」

 ふとルシルの方を見ると凄い勢いで掻き込んでいる。思わず2人で苦笑してしまった。

「さあ、冷めないうちに食べよう。」

 牛丼は好評だった。ライスも問題無い様だ。まあ、雑穀はこの世界にもあるので、お粥などは食べた事があるそうだが、味はともかく食感に抵抗があると思ったのだが、セリーなどは、癖になる食感ですねと言って居た。

 こうなってくると出汁が欲しいな。出汁があれば、色々と料理の幅が広がる。プレイースは漁村がある、もしかしたら出汁の文化もあるかもしれない。期待して置こう。

 さて、翌日、プレイースに視察に行こうと考えていたら王家から呼び出しがかかった。なんだろう?心当たりが無いぞ?

 例によって応接室へ通された。応接室って言う事は内密の話か?

「どうじゃ、侯爵の椅子の座り心地は?」

「正直、まだ実感が湧かないですね。まだ仕事らしい仕事もしてないですし。」

「ふむ、領地はどうじゃ?気に入ったか?」

「また、随分と厄介な土地を用意して頂いた様で、改革には少し時間がかかりそうです。」

「確かにあそこの土地は健全とは言えん、しかし機能しているのは事実だ。何も手を出さないと言う選択肢もあるのでは無いか?」

 やっぱり、この王様知ってて僕にくれた様だ。確かに塩の利益だけでも遊んで暮らせるのは事実だ。だが、あそこはもっと大量の金を生むと言う事を王様に見せつけてやりたい。

「ところで、今日呼ばれたのは何のご用件でしょうか?」

「それなのだが、北東の辺境で勇者を名乗る者が現れた。」

「ほう?実際強いのですか?」

「それなんだが、賢者と聖女と名乗る者と3人でパーティーを組んでおってな。一応ではあるが、ドラゴンを倒して居る。」

「ほう?3人でドラゴンを退治できるなら、冒険者ならAランク以上ですね。」

「だがな、冒険者ギルドには登録しておらず、勇者として旅をしておってな。どうやら、この王都を目指して居る様だ。」

「目的は何ですか?この国は他国との接点が無いので魔王は現れませんよね?」

「どうやら、勇者の肩書を盾に、爵位を求めているのは無いかと思う。」

「ん?勇者って爵位貰えるんですか?」

「いや、特にそんな決まりは無いがな、昔、この国を救った勇者は現在国王になっておるでの。」

 って、あんたかい!!

「なるほど、勇者が国王をやっている国なら、勇者は優遇されるだろうと言う、根拠の無い期待ですか?」

「お主、容赦がないのう。本物の勇者なら爵位をあげて騎士団長位にはしてやっても良いのだがな。」

「まあ、おそらく偽物でしょうね。」

「うむ、ワシもそう思う。そこでじゃ、侯爵に勇者の化けの皮を剥いで貰いたいのだが出来るか?」

「良いですよ。面白そうなのでやりましょう。実際僕が手こずる相手なら、それなりに利用価値もありますしね。」

「引き受けてくれるか?まだ、暫く先の話になるだろうが、頼むぞ。」

「御意。」

 これは面白くなって来た。自称勇者と賢者と聖女のパーティーって漫画か!!

 王城を辞し、家に帰ると中途半端な時間になってしまった。何をしようかと考えていたら、セリーがやって来た。

「エイジさんのお嫁さんの件をルシルさんに話そうとおもうのですが、エイジさんも説得手伝ってくれますか?」

「それは、構わないんだけど、本気でルシルを嫁にするの?」

「それが一番エイジさんにとって良い方法なんです。頑張って下さい。」

 ルシルの部屋は僕の部屋の隣だ。ノックをして鍵が開いてないのを確認して中へ入る。

「ルシルさん相談があるのですが宜しいでしょうか?」

 セリーが話を進めてくれるようだ。任せよう。

「現状、エイジさんの元に沢山の縁談が来ていて、断るのが大変なんですよ。そこで、形式だけでも良いのでルシルさんがエイジさんのお嫁さんになってくれると助かるんですが、お願い出来ないでしょうか?」

「ほう?我に人の番になれと?」

「ドラゴンって長生きなんでしょう?ほんの数十年お嫁さんの振りをしてくれるだけで良いんです。」

「ルシル、嫌なら断っても良いんだぞ。無理に嫌な事をする必要は無い。あくまでもこれはお願いだ。」

「ふむ、お主には命を救われた恩義があるからのぉ。その程度の事は叶えてやらんでも無いのだが。」

「そうれじゃあ?」

「しかし、この姿は問題があるじゃろう?」

 確かに幼女を嫁にするのは問題がありそうだ。何か方法は無いだろうか?

「ちなみに、魔力機関が正常なら別の姿にも変化できるのか?」

「うむ、魔力機関が正常なら他の魔法も使えるのでな。」

「一つ方法があるのだが、魔力機関が治ったら、ルシルがここに居る必要は無くなるよな?」

「いや、魔力機関が治っても、お主が一人前の戦士になるまでは面倒を見るつもりでいる。治ったらはいさようならと言う程薄情では無いぞ、我は。」

「そうか、なら今すぐにその体治してやるよ。」

 そう言って僕はルシルに向かい、時越えの魔法を掛ける。20年にセットして。

 魔法を掛け終わってもルシルに変化はない。

「どうだ、ルシル?」

「これは、時を20年進めたのか?魔力機関がすっかり元に戻っているぞ。」

「悪いんだけど、早速だが、セリーと同じくらいの年齢に変化して貰えるかな?」

「うむ、少し待て。」

 そう言うとルシルは体中に魔力を巡らせて何やらしている。

 暫くするとまばゆい発光のあと、黒髪の美少女がそこに立っていた。一糸纏わず。そりゃあ、急激に成長したら衣服は破れるわな。

 セリーが慌ててルシルを僕の目から逸らす。

「これで、お主の嫁になれるかのぉ?」

「多分大丈夫だろう。あとはセリーに任せて置けば大丈夫さ。」

 あれ?なんかセリーさん精神的ショックを受けてませんか?



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