転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

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 1週間が経ち、婚約発表の日になる。僕は公爵家へと馬車で向かう。まだ朝の8時前だ。

 執事のルーメンさんとメイドが2人付いて来ている。流石にルシルは家に置いて来た。連れて来ても説明が出来ない。

 公爵家の執事と思われる紳士が迎えに出て来る。僕らは紳士の後をついて公爵家の中へと足を踏み入れた。

 中では公爵とその夫人、そしてセレスティアさんが待っていた。

「お久しぶりです。公爵様。」

「久しぶりだな。やはりこうなったか。お主も兄には勝てなかった様だ。」

 いや、王様と勝負とかしてませんし。

「まあ、良い。式の段取りなどは執事に任せるとして、少し茶でも飲みながら話をしようではないか。」

 そう言って奥にある応接室に通された。どうやらさっきの広間が婚約発表の舞台になるらしい。

「ところで、私はエイジ殿の事をあまりよく知らんのだが、色々と教えて貰えんかな?」

「僕も同様に公爵家についてほとんど知りません。情報交換と行きましょうか?」

 エイジは田舎の村出身で成人を機にブレイルの町で冒険者になった事から始め、今までの事をダイジェストで語る。

 公爵は現国王の弟で、セレスティアさんの下に男の子が居る事などを話してくれた。

「そう言えば、僕は貴族になってから、他の貴族とまったく交流が無いのですが、こう言う時にどう言うしきたりがあるとか全然知らないのですが、大丈夫ですか?」

「ああ、今日に限っては大丈夫だ。婚約発表など、お主たち2人は飾りの様な物。まあ、お主に顔を売って置きたい貴族が多少声を掛けて来る程度であろう。」

 どうやら儀式の様な物は無いらしい。基本パーティーで貴族達は派閥で分かれるのでどの派閥がどの位力を持ってるか位は把握して置いた方が良いと言われた。

 まあ、所詮は婚約なので婚姻程大げさな事にはならないらしい。現に集まる貴族の数も結婚式の半分程度だそうだ。

 セレスティアさんを狙って居た貴族達は誰が婚約者に選ばれたのか、興味半分で集まっているらしい。また、こう言う場でしか会えない他派閥の貴族と話をする場所でもあるらしい。

 他派閥の貴族同士が何の話をするのかと思ったら、意外にも同盟の話が多いそうだ。この国平和なの?

 やがて、婚約発表の時間が近づいて来る。僕は控室に連れて行かれて、着せ替え人形よろしく、なにやら青い派手なスーツみたいなものを着せられた。

「拍手が聞こえたら、そちらのドアから出て広間の中央まで行って下さい。」

 それだけ執事のマードックさんに言われた。

 やがて、大きな拍手の音が聞こえて来る。マードックさんを見ると頷いた。

 僕はドアから広間に出て中央に歩いて行く。こう言う時は堂々としてた方が貴族らしいよね。

 反対からはセレスティアさんがこちらへ向かって歩いて来る。セレスティアさんはピンクの鮮やかなドレスだ。

 2人が中央に辿り着いた時に、拍手が一層大きくなる。

 公爵が前に出て来て婚約発表の挨拶をする。どうやらこれだけで終わりの様だ。あとは各自、色々な人と会話を楽しんでいる。

 これが貴族のパーティーか。初めて出たけど、思ってたほど豪華じゃ無いな。

 食事も質素な気がする。

 僕とセレスティアさんは人形の様に立ってるだけで暇だ。なので、会話を試みる。

「セレスティアさん。僕は貴族のパーティーって初めてなんですけど、だいたいこんな感じなんですか?」

「そうですね。うちでは年に4回位パーティーを主催しますが、似た様な物ですよ。ただ、今日の料理はちょっと量が少ない気がしますね。」

「料理の量が少ない?」

「はい、肉料理が間に合って居ないようです。」

 何かトラブルかな?

 客にお酒を配っている給仕を捕まえて話を聞く。

「厨房で何かトラブルか?」

「良く解りませんが、肉が届かないとか。」

 やっぱりか、セレスティアさんにあとは任せますと言って僕は厨房へ向かった。

 厨房は戦争状態だった。

「料理長はいるか?」

 わざと高圧的に振舞う。

 すると一人の初老の料理人が前に出て来る。

「何があった?」

「昨日肉屋で仕入れたワイバーンの肉が時間になっても届かないのです。」

「肉は何キロ仕入れた?」

「80キロです。」

 俺はストレージからドラゴンの肉を100キロ程取り出す。

「ドラゴンの肉だ。あまり火を通し過ぎない方が美味いぞ。」

「あなたは?」

「今日の主役だよ。」

 急いでセレスティアさんの所に戻る。セレスティアさんが心配そうな顔をしていたので、解決したよと耳元で囁いた。

 暫くすると肉の皿が少しずつ出て来る。所々で、なんだこの肉の美味さはと言う様な声も上がっている。

 流石に舌の肥えた貴族でもドラゴンを食べた事がある人は少ない様で、あちこちで騒ぎになっている。

 公爵は面目が保てたようでニコニコとしている。一部不満そうな顔をしているのは侯爵派だろうか?

 僕もお腹減ってるんですけど?え?主役は食事抜きなの?あとで何か食べさせてくれるって?

 ドラゴン食いたかったな。家じゃルシルが居るから食えないんだよね。

 パーティがお開きになって、紅茶を貰いセレスティアさんと2人でホッとしていると。食事が運ばれて来た。

 温かいスープに、肉とサラダだ。精神的に疲れた体に優しい味の料理だった。

 公爵夫妻も一緒に食べる。

 あれ?そう言えばドラゴンの肉は?残って無いの?

「ドラゴンの肉を提供してくれたそうだね。料理長が助かったと礼を言ってたぞ。」

「なんか手違いで肉が届かなかったそうで、お節介を焼かせて貰いました。」

「いや、おかげで面目が保てた。私からも礼を言う。」

 まあ、婚約者のお父さんですからね。それは手助けするでしょ?

「しかし、よく、ドラゴンの肉をあんなに沢山持っていたね。」

「アイテムボックス持ちなので、なんでも放り込む癖があるんですよ。」

「ほう?アイテムボックス持ちなのか。それは将来安泰だな。」

 ん?アイテムボックス持ちってそんなにレアなの?ってか僕のはストレージなんだけどね。

「公爵はドラゴン食べられました?」

「いや、こういうパーティーではホストは食事はしないんだよ。だから今こうやって食べている。」

「じゃあ、これ家族で食べて下さい。」

 そう言って、ドラゴン肉を紙で包んで10キロほど出した。

「良いのか?高級素材だぞ。」

「また、食べたくなったらドラゴン狩りますので問題無いです。それに王家もドラゴン買ったみたいですので、暫くは出回るでしょうし。」

「ドラゴンと言うのはそんなに手軽に狩れる物なのか?」

 なんか公爵の顔が引きつって無いか?

 食事が終わって公爵家を辞そうと思い挨拶をすると、何故か、セレスティアさんが付いて来ると言う。

 ちょっと待って、結婚じゃ無くて婚約ですよね?なんで付いて来るの?

「えっと、婚約者って同居するしきたりとかあるんですか?」

「うむ、成人した女子は婚約したら家を出る。相手の家で同居する事になるのが通常だな。」

 あれ?初めて聞いたぞ。そんな準備してあるのか?ルーメンさんの方を見ると頷いている。どうやら準備が出来ている様だ。

 セレスティアさんを馬車に乗せ、伯爵邸へ戻る。僕は転移で戻った。だって、馬車が4人乗りで、執事とメイドが2人来ている、空いてる席は1つと御者の隣だけだ。それに本当に準備が出来ているのか確認もしたかったしね。

 家に着くと1階の奥の僕の寝室の隣がルシルの部屋になっている。その向かいが綺麗に整えられている、どうやらここがセレスティアさんの部屋らしい。

 よく見ると同じような部屋があと3つある。これって5人奥さんが居たって言う事なのかな?

 ちなみに中央の階段を挟んで反対側に客間と応接室と風呂がある。

 しかし、こう見ると公爵邸に比べて地味だな。もう少し装飾品でも購入するかな?

 20分ほどすると馬車が帰って来た。

 執事のルーメンさんが丁寧にセレスティアさんをエスコートしている。僕は既に平服に着替えて迎える。

 さあ、ここからが問題だ、ブラスマイヤーとルシルをどう説明しよう?
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