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050 聖剣?

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 さて、爺さんに地形把握の魔法を教わった。

 探知魔法と言うのがある。自分を起点にして周囲にリング状の感覚を飛ばす魔法だ。イメージは波紋。要は魔法で自分の感覚を飛ばして、魔力を持つ者を感知すると言う物だ。リング状なので距離が長くなればそれだけ魔力を必要とする。

 現状の俺ならば半径5キロ位は飛ばせる。つまり直径10キロが探知範囲だ。

 これに対して、地形把握の魔法は球状に魔力を飛ばす。まあ、探知魔法の応用になる訳で、比較的簡単に覚える事は出来た。ただし、現状ではこの魔法の範囲は直径1キロと非常に範囲が狭い。これでは2キロ程の距離にある食堂まで転移が出来ない。

 恐らく少し練習すれば距離は伸ばせるだろうが、マップ魔法には程遠いな。だが、戦闘時の短距離瞬間移動ならば使い道はありそうだ。

 少し研究してマップ魔法は自分で創ってみよう。ヒントは十分すぎる程貰えたので満足だ。爺さんに礼を言って部屋に戻る。

 もし、野党と戦う事になるのであれば武器が必要になる。明日にでもルルイと一緒に武器屋に行ってショートソードでも買って来ないとイケないかもしれない。

 よく考えると、俺って戦闘をした事が無いので、戦いをするにしても何を準備すれば良いのか全く分からない。

 まあ、ルルイは冒険者なので聞けば色々と教えてくれるだろう。

 翌朝、稽古をしながらルルイに戦闘時の準備について色々と聞いてみた。短期的なその場限りの戦闘ならば、武器だけあれば十分だと言われた。長期的な大規模作戦なら兵糧が重要になるそうだ。

 って、その位は知っている。俺が知りたいのは冒険者の普段の必需品とかそう言う事なのだが……

 ルルイに聞いた俺が間違いだった様だ。

 ちなみに、ルルイはあれからだいぶ強くなっている。まあ、俺が徹底的に鍛えているからね。俺の強さはレイチェルに準ずる。レイチェルが強くなれば俺はその1ランク上の強さになれる。今の所レイチェルより強い相手は例のSランク冒険者位だ。

 その俺が毎日鍛える訳だから、現在のルルイの強さはレイチェルよりやや劣る程度だろう。恐らくAランク冒険者の試験位は受かりそうだ。

 あれ?レイチェルの剣術はAランク冒険者の上位位の腕がある。と言う事はその1ランク上の俺の腕は、Sランク相当?

 まあ、実戦を経験していない剣術なので実際に戦闘をしたら思ったよりは実力が出せないと言う事もありうるだろう。

 と言うか、当初の目標から大きく外れて来ていないか?俺は商人でスローライフを目指して居たはずなのだが。

 朝食を食べた後、ローナを食堂に送るついでに武器屋に寄ってショートソードを購入した。防具は今の所必要無いと言う判断だ。恐らく直接戦う事はないだろう。基本は魔法による相手の無力化。もしもの時の保険の剣だし。

 だいたい現代日本人に戦いは向かないのだよ。

 家に帰って爺さんの魔法講義を受ける。今日は俺の希望で防御魔法や支援魔法を色々と教わった。基本は知って居るので応用を色々と教えて貰う。やはり爺さんの講義はためになる。

 昼食を食べた後は、購入したショートソードに付与魔法を色々と付与して行く。なんだかんだで6つ位付与した。もはや国宝級どころか魔剣と呼んでもおかしくない。

 持っているだけで相手が逃げ出す様な剣が出来てしまった。うん、それはそれで悪く無い。

 そう言えば魔剣は作れると聞いたが、聖剣は作る事が出来るのだろうか?確か、聖剣に認められた者が勇者と呼ばれると聞いた事がある。では、聖剣は誰が作ったのだろうか?神か?この世界は神が普通に存在する世界なのだろうか?

 この辺は爺さんに聞いてみよう。ロッドサムの村の情報も気になるしね。

 さて、店で暇そうにしている爺さんに剣を見て貰う。あれ?魔法を付与した時は銀色に光って居たのだが、今、爺さんが鞘から抜いたら赤紫色に光っている。どう言う事だ?

「なんじゃ、これは?竜でも殺すのか?」

 え?ドラゴンとか実在しちゃう世界なの?

「いや、お爺さんから習った使えそうな支援魔法を色々と付与してみたんですが、付与した時は銀色に光って居たんですよ?」

「しかし、この赤紫色は魔剣の証じゃぞ?」

 え?本当に魔剣になったの?

「魔剣は赤紫色に光るのですか?では聖剣は何色に光るのでしょうか?」

「聖剣は薄っすらと青く光る。」

「では、聖剣を作る事は可能なのでしょうか?」

「理論上は可能じゃ。過去の聖剣は賢者が生み出したと言われておる。現在確認されておる聖剣は皆100年以上前に作られた物じゃ。ここ100年以内に作られた聖剣は無いとされておる。」

 なるほど、理論上は可能だが作れた者は居ないと言う事か。賢者の爺さんもチャレンジしたのかな?

「その魔剣ですが、出来上がった時は魔剣ではありませんでした。時間の経過で変質すると言う事もあるのですか?」

「ふむ、実はその辺は良く解っておらんのじゃよ。何らかの条件を満たした時に魔剣も聖剣も突然光り出すらしいのじゃが、その条件は解っておらん。」

 条件があるのか?それが解れば、最初から魔剣や聖剣が作れるって事だよね?もしかしたらこの剣も条件次第では聖剣になって居たかもしれないって事かな?

 ちなみに、この剣は武器屋で金貨12枚の鋼の剣だ。魔剣になった今なら幾らで売れるんだろう?

 まあ、野党騒動が無事に治まったら爺さんに頼んで売って貰うかな。

 とりあえずは俺が使うから手放す訳には行かない。金貨12枚って結構大金だしね。もう一本買って今度は聖剣を作るとか言う実験は簡単には出来ない。

 誰か剣を提供してくれる人居ないかな?そうすれば色々と実験をして聖剣の条件が判るかもしれないのに。それに、俺が付与した剣は元の値段より確実に高く売れるから損はしないどころか大儲け出来ると思うんだけど?

 あ、そうなると出来上がった聖剣もその人に取られちゃうのか?ふむ、それにあまり目立ちたくないしなぁ。こう言うのをジレンマと言うのかな?

 まあ、良い。俺は勇者になりたい訳じゃ無いしね。聖剣と魔剣の条件の違いはゆっくりと研究して行けば良いだろう。

「お主、その魔剣で野盗と戦うつもりか?」

「何か不味いですか?」

「まあ、魔剣は聖剣よりは珍しい物では無いが、一介の冒険者が買える様な代物では無いぞ。そんな物を振り回していたら、間違いなく領主の耳に入るのぉ。」

 む?それはちと困るぞ。でも、折角買った剣が使えないのはもっと困る。日本円で120万円も出して買ったのに。あ、ショップの買取機能で現金化出来ないかな?

 っと、それは駄目だ。日本円にはなるが、金貨12枚は帰って来ない。

「魔剣を普通の剣に偽装する魔法って無いでしょうか?」

「無理じゃな。魔剣と言う位だから戦闘時には魔力を流す事になる。当然剣は赤く光るぞ。」

「魔力を流さなければ、偽装は出来るって事でしょうか?」

「出来ん事は無いが、戦闘時に魔力を流さなければ、その剣を持っている意味が無いのでは無いか?」

 確かに。魔力を流さない魔剣は只の剣だ。折角付与した『不壊』の効果も無くなるので、下手に剣を受けると簡単に折れてしまう。

 そうだ、もし魔剣を使った場合は爺さんに借りたと言って置こう。賢者なら魔剣位持っていてもおかしく無いよね?貴族だし。

 そう言う事で口裏を合わせて貰える様に爺さんに頼んで何とか事は収まった。

 今度剣に魔法を付与する時は少し自重しよう。自分が使う剣は普通の剣より少し強い位で丁度良いだろう。

 それよりも、マップ魔法を創らないとね。転移魔法を使いこなすにはマップ魔法は必須だよね?あれ?そう言えば、転移魔法って一度行った事がある場所にしか飛べないんだよね?それって、その場所にマーキングしているって事になるよね?

 だとすれば、何か目印になる物を置けば良いんじゃ無いかな?物理的な何かじゃ無くて魔法的な何かを飛びたい場所に置いておけば、そこに向かって転移する事が可能になるんじゃ無いだろうか?

 例えば、そう。魔力を流した標識みたいな物って作れないだろうか?それがあちこちにあれば、マップも作り易いんじゃ無いか?

 ふむ、一考の価値はあるな。ちょっと真剣に考えてみよう。
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