上 下
26 / 55

026 開店?

しおりを挟む
 その日はパンとチューハイだけの販売だったが、銀貨7枚位の売り上げにはなった様だ。宣伝の方もちゃんとやったらしく、明日の新店舗開店にどの位の客が来るか楽しみだ。

 家に帰り、爺さんの訓練を受ける。目的の転移魔法の理論は教えて貰ったのでこれ以上は必要ないとも思ったのだが、爺さんが楽しそうなので続ける事にした。今日は付与魔法と言うのを教わった。これがあればマジックバッグと言う魔道具が作れるらしい。要はアイテムボックスの理論をバッグに貼り付けるのだそうだ。

 マジックバッグは高く売れるので容量の大きい物が作れたら爺さんが買い取ってくれるらしい。

「具体的にはどの位の値段で買い取ってくれるんですか?」

「容量にもよるが、10メートル四方で高さが5メートル位の物で金貨10枚出そう。それ以上の大きさなら倍は払っても良い。」

 お?マジか?バッグが1個100万円とか何処の高級ブランドだ?って言うか仕入れが100万円だから売値は幾らになるんだ?

 なんでも、魔道具屋でマジックバッグは売れ筋なのだそうだ。ただ、爺さんは時空魔法が得意では無いので6メートル四方で高さ4メートルが限界だと言って居た。それでも、金貨20枚で売れるとか。

 まあ、小遣い稼ぎに時間がある時に作ってみよう。今は新店舗の事で手一杯だしね。

 ルルイを呼んで夕飯にする。昨日は仕込みをしてから夕飯にしたが、今日は先に飯を食ってから仕込みをする事にした。

 もちろん理由がある。それは、この世界の人間の味覚を試したかったからだ。

 まず、お湯を沸かし、同時にステーキを2枚焼く。この世界ではレアやミディアムレアで食べる習慣が無い。これは魔物の肉を食べるからだそうだ。魔物の肉は完全に火を通さないと魔素が強すぎて酔うそうだ。

 って言うか魔素って何だろう?毒?
 
 と言う訳で安いステーキ肉をしっかりと焼いて、ステーキ醤油を掛けてみた。そして、スープとしてインスタントの味噌汁を作る。これにロールパン2個を付けて完成だ。

 ちなみに生野菜は食べないとの事なのでサラダは抜きにした。

 さて、醤油と味噌の味をルルイがどう評価するか気になる所だ。

「とても美味しそうな匂いです。」

「遠慮なく食べてくれ。出来れば味の評価もしてくれると助かる。店で出す参考にするから。」

 責任重大ですねと言いながらステーキに噛り付くルルイ。

「これは、初めての味ですが、凄く美味しいです。このスープも変わってますが美味しいですね。」

 思ったより抵抗は無い様だ。ルルイがパンを味噌汁に漬けようとしたので、それだけは阻止した。

 定食として出すなら700円前後に抑えたい。メインはやはり肉が良いだろうから、あまり高い肉は使えないと考えた方が良さそうだ。

 唐揚げ、ハンバーグ、生姜焼き、焼き肉、もつ煮、この辺は行けそうだが、とんかつやステーキはちょっとキツイかな?そう言えば、食堂では煮込み料理が人気だったな。インスタントのルーを使えばビーフシチューもイケそうだ。

 サラダはポテトサラダでも出してみるか?スープはインスタントで良いだろう。キリクが育って来たら、その辺も手作りに変えて行こう。

 と言う事でルルイに手伝って貰いながら仕込みをして行く。今までの商品プラスなので、仕込みも結構大変だ。だが、キリクがある程度育てば、俺が仕込みをする必要も無くなる日が来るかもしれない。

 理想は、俺が仕入れをして料理人が調理、販売をソリオさん達に任せて、空いた時間に新商品の開発と言うのが望ましい。

 まあ、最初は無理だろうが、儲かれば料理人を新たに雇う事も可能になるだろう。この辺もソリオさんと相談しながらやって行こう。

 1時間程で仕込みは終わった。後は店で調理すれば良いだろう。明日の為に早めに寝て置くか。

 翌朝、6時に店舗に集まるが、すぐに開店はしない。キリクにハンバーグ、生姜焼き、焼き肉の調理を教える。まあ、どれも焼いて市販のタレを掛けるだけだから、そう難しくは無い。

 完成した料理は皆に試食させて、販売出来るレベルかどうか確認する。

 魔道コンロを調理に使うので、ローナには竈でポテトを揚げて貰う事になる。火加減が難しいが、ローナは慣れているから大丈夫だろう。

 ソリオさんはエールの樽を、指定の場所に設置している。

 俺は、何時も使っていた桶をその横に出し、氷水を入れてチューハイをぶち込む。

 チューハイの在庫はバックヤードに箱で置いてあるので、少なくなったら気が付いた者が補充すると言う事で話が付いた。

 簡易冷蔵庫については、今日はまだ何も入れて無いので、使用する時に説明しようと思う。

 さて、後は接客の注意だけして、開店の準備は終わりかな?レジにはソリオさんに座って貰って、ライムにウエイトレスをやらせよう。俺を含めた残りの3人は厨房だ。ルルイにはローナの補佐に回って貰おう。

 本来は護衛として雇ったのだが、ルルイは意外に料理が上手い。もし、ローナに代わってポテトを任せられるなら、ローナを他の仕事に回す事も考えられる。

 まあ、今日は何時もの仕事とあまり変わらないはずだ。徐々に食堂へシフトして行けば良いだろう。今日の目標は定食が30食も出れば十分だと思っている。この世界には広告と言う物が無いので、宣伝はもっぱら口コミに頼る事になる。

 定食の美味さが広まってくれば客も徐々に増えるだろうし、客単価も上がって来るはずだ。

 ソリオさんがそろそろ開けましょうと言ったので、皆の様子を確認してから開店する事にした。

 引き戸を開けてクローズの札をオープンに変えようとしたら。既に客が数人待っていた。

 恐らくロールパン目当ての客だろう。彼等にこれからは7時オープンの17時クローズになりますと伝えて置く。

 開店している事をアピールする為、入り口を暫く開けて置く事にした。そして、キリクに調理の練習をさせる。

 焼き肉や生姜焼き等の良い香りが店内に漂い、やがて外にまで流れて行く。これが客引きになれば良いと考えたのだ。

 まあ、露店でポテトを揚げたのと同じ戦法だが、食べ物屋って、匂い位しか武器が無いんだよね。

 食べて貰えれば美味しさは解るんだけど、試食を店の外でするのもどうかと思う。

 暫くすると、常連客がやって来て、店が賑やかになって来る。移転しても思ったより客が来てくれるので、安心した。常連客に定食を始めた事を伝えて行く。まだ時間が早いので頼む客は居ないが、常連じゃ無い客への宣伝にもなるので、常連が来る度に定食をプッシュする。

 するとどんなメニューがあるのかと言う話に発展する事があるので、焼き肉や生姜焼きを単品で銅貨4枚で提供してみた。

 これが意外な効果を生み出した。今までに無い塩味では無い濃い味がエールやチューハイに合うと言う客が多く。相乗効果で酒類の売り上げも上がって来る。

 食堂と言う事で定食に拘って居た為、単品売りと言う発想に至らなかった。唐揚げやポテトも慌てて単品メニューとして皿で出す事にした。

 昼時になると少しずつ定食も出る様になり、キリクも頑張っている。だが相変わらず、店内は酒場状態だ。上手く食堂にシフト出来るか少し心配になって来る。

 帰りにパンやサンドウィッチ、チューハイを購入して行く客は相変わらず多いので、酒場と認知されている訳では無さそうだが、ソリオさんは夜の営業も考える必要があるかもしれませんと言って居た。

 さて、この世界に麺料理はあるのかと仕事の合間にローナに聞いてみた。すると『ファウ』と言う、小麦粉を水で練って薄くして短冊状に切った物をスープで煮た料理があるそうだ。聞く限りワンタンとすいとんの中間の様な料理らしい。

 まあ、麺料理と言えば麺料理に分類されるんだろうが、俺が求めていた物とは違う。と言う訳で、昼飯にパスタを出してみた。ここは定番のスパゲッティーミートソースだな。

 この世界にもトマトに似た野菜があるそうでかなり好評だった。業務用の物を使えば1人前100円位で作れるので銅貨3枚位で提供出来そうだ。

 上手くすれば稼ぎ頭になる可能性を秘めている。将来的にはうどんやラーメンも出したいな。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。

SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。 サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

処理中です...