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021 新人?

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 ゴザの上に商品である農作物を並べて、既に開店準備を終えている2人の新人に声を掛けた。

 まずは、隣で商売をしていると言う事から入り、2人の素性などを調べて行く。隣の少女はライム13歳。農家の3女でこの世界では珍しい黒髪だ。芋と豆を販売しているらしい。

 その向こうの男の子はキリク14歳。農家の次男で赤髪をしている。根菜をメインに販売している様だ。

 売れてる?とストレートに聞いてみたが、2人共首を横に振った。

「だよね。ここは場所が悪いから。」

「おじさんの所は売れてるよね?それに良い匂いがするし。」

 んー、子供は遠慮が無いな。やはり俺の年齢だとおじさん認定なのかな?

 俺はアルバイトの話を持ちかける。

「うちで少し働いてみる気は無いか?月に銀貨5枚でどうだろう?自分の商品が売れる様になるまでで構わないから、臨時雇いって事でどうかな?」

 この、突然の申し出に女の子はすぐに喰いついた。しかし、男の子は少し考えて居る。

「別に無理にと言って居る訳では無いよ?」

「銀貨6枚。」

 最初は男の子が何を言っているのか解らなかったが、要するに銀貨5枚じゃ賃金が安いって事か?この子は使用人の相場を知っているのかもしれない。

「解った。2人共月に銀貨6枚出そう。それで良いかな?」

「構わないよ。あと、俺達のスペースも使って貰って構わないぞ。店を広げたいんだろう?」

 ほう?キリクはなかなか聡いな。逆にライムはちょっとぼんやりしていると言うかマイペースな子だ。

 2人を連れて、ソリオさんの所へ行く。

「ソリオさん。2人を雇ってきました。彼等のスペースを使用しても良いとの事なので、テーブルと椅子を少し増やしましょう。」

 ソリオさんのOKが出たので、テーブルと椅子をネットショップで購入する。L字型にテーブルを並べ椅子も倍に増やした。

 こうなるとポテトだけでは寂しいので冷凍の焼き鳥を購入する。8本入りで400円なので1本50円が仕入れ値だ。これを1本銅貨2枚あるいは2本で銅貨3枚で売れないだろうか?

 この世界にも家畜は居る。だが、魔物の肉の方が安いのと、家畜は改良がされて居ない為あまり美味しくないらしい。牛はミルクの為、鶏はタマゴの為に飼われている事が多いそうだ。

 この辺も商売のヒントになりそうだ。

 焼き鳥を湯煎で温めてからバーベキューコンロで炭火を使い軽く焙ると良い香りが漂う。

 ソリオさんにこれはどの位で売れますかね?と聞いてみた。

「このタレは砂糖が入ってますね。」

 あ、そう言えば焼き鳥のタレって甘いよね?忘れていた。

「砂糖は流石に不味いですか?」

「いや、例の串焼きのタレにも砂糖は入ってますよね?なら行きましょう。この匂いは商売になります。」

「解りました。それから、これを試して貰いたいのですが?」

 そう言って俺はストロングなチューハイを1本出してみる。味は定番のレモンだ。

 ネットスーパーでプライベートブランド物を箱買いすれば、350mlが1本95円で買える。

「これは飲みやすいですが、酒精が強いですね。」

 酒精と言うのはアルコール度数の事らしい。

「酒精はエールの3倍はありますよ。仕入れ値が銅貨1枚になりますが、売れませんかね?」

 他の皆にはサイダーの缶を出してやる。別に振舞っている訳では無く、缶の開け方を教える為だ。

 皆、俺がソリオさんに開けてあげるのを見ていたのか、難なくプルトップを開けている。これなら販売しても大丈夫そうだ。

「確かにエールでは物足りないと言う人には売れそうですね。試しに銅貨3枚で出してみましょう。」

 こうして、店に2つの商品が増える事になった。

「これは売らないの?」

 キリク少年がサイダーの缶を持ち上げて言う。

「それは砂糖がたっぷり入っているから不味いだろう?」

 ああ、そう言う事ねとキリク少年は納得したが、ライムは何の事?と言う顔をしている。ローナが小声で色々と教えていた。

 俺は大きめの木桶をゾンアマで購入する。こう言うのって地味に高いんだよね。そこに魔法で作った氷と水を入れ、ストロングなチューハイを12本程ぶち込んで冷やす。

 その間ローナには2つのコンロに乗せられた油鍋の様子を見て貰っている。既にポテトの揚がる良い香りが漂い始めている。

 後は購入したパンをテーブルの上に乗せて、これで開店準備は完了だ。

 人数は増えたが場所も広がったのでそれ程窮屈な感じはしない。キリクにはパンの販売を任せ、ライムにはローナの補佐をして貰う。

 俺は焼き鳥を担当し、ソリオさんはアルコール担当になる。

 開店してすぐはパンとポテトが出る。焼き鳥は値段が高いのか数本しか出なかったが、昼が近づくと、ポテトとエールが売れ出し、焼き鳥もそこそこの数出る様になって来る。チューハイも新し物好きな客が購入している。

 午後になるとカオスな状態になって来た。何処で評判を聞いたのか客が異様な数に増えている。と言うか、来た客が帰らない。

 冷えた酒と言うのが珍しいのかチューハイが飛ぶ様に売れて行くのだが、その場で飲まないと温くなるので、皆、その場で飲む。するとつまみが欲しくなり、ポテトや焼き鳥が出ると言う循環が生まれた。

 俺は、焼き鳥を焼きながら、チューハイの補充に追われている。ローナとライムもポテトを揚げてカップに詰める作業で忙しそうだ。

 流石にソリオさんは客が多くても問題無く捌いている。キリクは早々とノルマのパンを売り切ったらしく、来た客に謝っている。

 即席のチームとしては思ったより悪く無い出来だと思う。

 しかし、午後は殆ど酒場だな。青少年の職場としては相応しくない気がする。

 あ、でも、テーブルがあるのだから、軽食位なら出せるかもしれない。何か儲かりそうな物は無いか後でネットスーパーでも見てみよう。

 昼飯は交代でサンドウィッチで済ませて貰った。キリクとライムは初めて食べる柔らかいパンに驚いていた。

 飲み物は昨日に続いてカップスープだ。昨日はコンソメだったので今日はポタージュにしてみた。

 何故かカップスープに異常な関心を抱いている様子のソリオさんが気になる。

「美味しく無いですか?」

「いや、逆です。美味し過ぎるんですよ。これの原価は?」

 カップスープはネットスーパーなら3袋入りが150円位だ。業務用ならもっと安いだろう。

「1杯で銅貨半枚位ですかね。」

「貴族向けの高級料亭でもここまでのスープは出ないですよ。1杯で大銅貨2枚位の味です。」

 恐らく出汁の問題なんだろうが、説明が難しい。

「客に出したら売れますかね?銅貨3枚位で。」

「庶民はスープにそこまでお金を出す余裕は無いですよ。精々銅貨2枚が限界だと思います。」

「では販売しているパンとこのスープをセットにして、主菜に肉料理を付けて定食にしたらどうでしょう?」

 そう言うとソリオさんが考え込む、これはソリオさんの癖の様な物だ、恐らく頭の中で儲けを計算しているのだろう。

「やはり店舗が欲しいですね。露店では軽食までが精一杯だと思います。定食はちょっと厳しいかもしれません。」

「そうですか。では俺達の昼飯の様に、サンドウィッチとスープとかホットドッグとスープの組み合わせなら行けますか?」

「ふむ、今の客層とは違う客層を狙う事になるので、忙しくなりますよ?」

 まあ、人数も増えたのでイケるんじゃ無いかと俺は考えて居るのだが、時期尚早か?

 この日は金貨1枚半位稼いだが、新人を雇ったので分配をどうするか悩んだのだが、ソリオさんの提案で昨日と同じ一人頭36000円を俺とソリオさんとローナで分配して、残りは新人2人の給料の為に貯金して置く事にした。

 って言うか、既に一人分の給料が出てるんだけど、残りは店舗の為に貯蓄しているのだろうか?

 皆で手分けして店仕舞いをして、俺はローナと一緒に帰路に着く。

 帰り道はあの限られたスペースで何が売れるだろうかとそればかり考えて居た。
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