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013 家?

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 結局パンは売れに売れ、当初の予想をはるかに上回る36袋を売った。試食に使った4袋を合わせて40袋。仕入れが銅貨60枚6000円で売り上げが銅貨216枚21600円だ、差し引き儲けが銅貨156枚15600円になる。3人で割ると1人頭銅貨52枚5200円の儲けだ。

 なんと初日から目標額の3倍をクリアしてしまった。明日からは更に売り上げは上がるだろうしリピーターも期待できる。口コミにも期待したい所だ。

 ソリオさんに新しいパンの投入も考えて居ると言ったら、それは待った方が良いと言われた。現在のパンで勝負できるところまで勝負して、売り上げが安定して来てから新しいパンを投入する方が効果的なのだそうだ。

 ちなみに昼飯に交代でクリームパンとジャムパンとミルクティーを用意して交代で食べたのだが、それは売り物じゃ無いのかと聞かれて困る場面が何度かあった。

 現状、食べ物を温める方法が無いので暫くは常温で食べられる物しか出せない。火が使える状況なら色々と美味しい物が食べられるのだが。

 帰り道、ローナが寄り道をしても良いかと聞いて来た。

「何か用事があるのか?」

「何を言ってるんですか、タツヤさんの家の件ですよ。」

 え?もう探してくれたの?3日位は掛かると思って居たのだが。

「何処に向かうんだ?」

「それは着いてからのお楽しみです。」

 仕方が無いのでローナの後をついて行く。道は今の所何時もの帰り道だ。

 相変わらずゴザが重そうなのでアイテムボックスに収納してやる。

「どうせ明日も店を出すんだろう?なら俺が持ってても問題無いよな?」

「言われてみればそうですね。」

 もう俺達はチームだ。助け合う所は助け合わないとね。

 暫く歩くと冒険者ギルドの裏手の路地に出る。ここを右に曲がると宿屋やローナの家があるのだが、ローナは左に曲がった。

 そして、歩く事5分。右側にある古い家が目的地だと言う。確かにローナの家の近くと言ったが、本当に近いな。

 古いが結構な大きさの家だ。構えからすると店舗なのかな?

 ローナがノックもせずに引き戸を開けて中に入って行く。中に入ってから声を掛けた。この世界の常識なのかな?

「お爺ちゃん。下宿希望の人を連れて来たよ。」

 家の奥の方から物音がして、やがて老人が一人出て来た。

「ローナちゃんか。良く来たのぉ。」

「昨日約束した人を連れて来たよ。」

 ローナの言葉に老人が俺の方をチラッと見た。

「ほう?彼がアイテムボックス持ちの商人かい?」

「初めまして。タツヤと言います。よろしくお願いします。」

 一応挨拶をしたが、これで良かったのかな?

「部屋は空いている、と言うか2階は全部使って居ないので下宿は問題無い。じゃがな、アイテムボックス持ちと言うのなら条件次第では家賃を無料にしてやるぞ?」

 ん?どう言う事だ?

「その条件を聞かせて貰えますか?」

「なに、そう難しい話では無い。アイテムボックス持ちなら魔力が多い筈じゃ、月に1度か2度ワシの実験を手伝って貰いたい。それだけじゃ。」

「実験ですか?それは魔道具の実験と言う事で合ってますか?」

 店の中を見れば解る。得体の知れない道具が所狭しと並んでいる。恐らくローナが色々な事を教えて貰ったと言う近所の魔道具屋と言うのがここだろう。

「そう言う事じゃ、話が早いのは助かるの。で、やって貰えるかのぉ?」

「それは構いませんが、それだけで家賃無料にして貰えるんですか?損しませんか?」

「大丈夫じゃ。こう見えても金には困って居ない。手伝って貰えるのなら2階は全部使って貰って構わんぞ。トイレは1階にしか無いがの。」

 ふむ、条件は悪く無いな。

「条件はそれで構いません。何時から部屋は使えますか?」

「お主さえ良ければ今日からでも住んで構わんぞ。ただ、ワシは1人暮らしなので食事は出す事が出来ない。それだけは承知して貰いたい。」

 なるほど、そう言う理由もあって、この広い屋敷が未だに空いていたのか。

「解りました。幸い宿屋に荷物は置いて無いので今日からお世話になります。」

「構わんぞ。」

「決まって良かったです。では私は失礼しますね。また、明日の朝迎えに来ますね。」

 傍で話を聞いていたローナがそう言って帰って行った。

「良い子じゃのぉ。」

「そうですね。」

「泣かしたら許さんぞ。」

「え?あの何か勘違いしてませんか?俺とローナは仕事のパートナーで、そう言う関係ではありませんよ?」

 何故か俺はこの世界では若く見られるらしいからな。

「そうなのか?」

「はい、俺は彼女とは年が倍も違いますからね。」

 そう言えば、この魔道具屋の爺さんは色々な事に詳しいとローナが言ってたな。

「ところでお爺さん。俺に魔法を教えて貰う訳には行きませんか?」

「魔法?どんな魔法を覚えたいのじゃ?」

「自分がどの魔法に向いているか解らないので、基礎を一通り教えて貰えると助かります。」

「お主、アイテムボックスが使えるのに自分の属性を知らんのか?とりあえず上がれ立ち話は疲れる。茶位は出すぞ。」

 と言う事で、属性魔法について2時間程講義を受ける事になってしまった。今日は疲れてるんだけどな。

 まあ、孤独な老人の話を聞いてやるのも若い者の務めと言う事で、お爺さんの魔法談議を聞いていたのだが、これが意外に面白い。しかも為になる。

「ちなみに普通の人の魔力ってどの位が平均なんでしょうか?」

「んー、魔力を測定する方法が無いからのぉ。どの位が平均かと聞かれても応えに困るのぉ。」

 あれ?魔力の測定って出来ないの?って言うかステータスって普通は見れないのか?

「でもアイテムボックス持ちは魔力が多いって言う事は、魔力の大きい小さいと言う概念はあるんですよね?」

「そうじゃのぉ。アイテムボックスは魔力が大きく無いと持てないと言われておる。更に言えば、アイテムボックスの容量も魔力の大きさに関係していると言うのが定説じゃ。」

 って事は俺の魔力150と言う数字はこの世界の平均より大きいと言う事になるな。それを考えると体力の200と言うのもかなり大きい数字なんじゃ無いか?

「魔力が大きい方がアイテムボックスの容量も大きいって事ですか?ちなみにアイテムボックスの大きさってどうやって量るんでしょう?」

「単純に物を沢山用意して何処まで入るか確かめるのが普通じゃな。」

「はあ?ではどの位から大きいと言われるのでしょうか?」

 お爺さんがお茶をズズッと啜ってから答える。相変わらずウーロン茶の様な紅茶だが、温かいのでそれなりに美味しい。

「馬車1台分の荷物と言うのが基準になる。これを超えると大きいと言えるな。まあ、小さくてもお金を入れて置けば盗まれる心配が無いので希少なスキルではあるがな。」

「アイテムボックスに物が入った状態で殺されるとどうなるのですか?」

「永遠に失われる。」

 なるほど、つまりアイテムボックスの中身を目的で襲われると言う可能性は低いのか。

 俺はお茶請けに煎餅を一袋ネットスーパーで購入し、皿の上に乗せて出してみる。

「これは何じゃ?」

「お茶に合うお菓子ですね。米を挽いて粉にした物を焼いた物です。」

「こめ?聞いた事が無いが、それは何じゃ?」

 あれ?この世界に米は無いのか?それは非常に困るのだが。

「えーと、麦の様な穀物なのですが、知りませんか?」

「雑穀の一種かのぉ?市場で雑穀を扱っている農家に聞いてみると解るかもしれんぞ。」

 そう言いながら爺さんはバリバリと音を立てて煎餅を食っている。歯が丈夫な爺さんだ。

「美味いな。じゃが甘くない菓子と言うのがあるんじゃな。長年生きているが、菓子と言うのは甘いもんだとばかり思っておったわ。」

「甘い物が好きなら、甘い物もお出ししましょうか?」

「それではワシが催促したみたいじゃ無いか?」

 いえいえ十分催促してますよ。

 ネットスーパーの画面を見てお茶に合いそうな甘味を探す。

 紅茶ならケーキなんだけど、ウーロン茶だと何だろう?緑茶なら羊羹なんかが合いそうだけど、中華なお菓子で甘い物か、月餅なんかどうかな?

 月餅を皿に乗せてテーブルに出してみる。

「ほう?これまた初めて見る菓子じゃの。どれ。」

 爺さんが月餅を掴んで一口齧る。

「これは、砂糖が入っておるんじゃないか?お主こんな高価な菓子を普段から食っておるのか?」

 あら?またやらかしたかな?ここはハチミツを使ったお菓子を出すべきだったか? 
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