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005 ショップ?

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 バルザックさんの好意に甘えて色々と質問攻めにさせて貰う。

 まずは、通貨から聞いてみた。予想通り10進法で、銀貨10枚で金貨1枚になるそうだ。ただし、その上は白金貨でこれは金貨100枚の価値があるらしい。

 庶民には縁の無い話だよとバルザックさんは笑っていた。

 ちなみに銅貨の下に鉄貨と言うのがあるらしいのだが、これはあまり使わないそうだ。貯めておくと錆びるので10枚溜まったら銅貨に変えるか、端数が出た時は切り捨てるのがこの世界の常識らしい。

 さて、塩はやはり国が価格を決めている様だ。また、販売するには免許が必要になるとか、ここは手を出さないのが良さそうだ。

 砂糖は、絶対量が少ないらしく貴重品だ。特に国が管理している訳では無いが、貴族以外には殆ど流通していないと言う。これも、下手に手を出すと、砂糖の価格を下げてしまう恐れがある。

「香辛料はどうなんですか?」

「香辛料は大手の商人が牛耳っている状態だな。少量なら庶民でも入手可能だが、値段がな。」

 やっぱり高いんだろうな。安かったら、食堂で使用されているはずだ。

「では、ハーブはどう言う扱いになって居るんですか?」

「ハーブ?」

「ええ、香辛料ではありませんが、香りのする草ですね。」

「ああ、シュリの葉みたいな物か?そう言うのは各家庭で育てるので販売はされて居ないと思うぞ。」

 ちなみにシュリの葉と言うのを見せて貰ったら、レモングラスの様な香りの草だった。肉の煮込み料理に使用するそうだ。

 ハーブは普及して居るが、販売はされていないと言う事か、多分乾燥の技術とかが進んでいないんだろうな。もしかしたら、商売になるかもしれない。覚えて置こう。

「そう言えば、隣町のリストームでしたっけ?そこには自由市場、いわゆる誰でも物を販売出来る様な場所ってあるのでしょうか?」

「あるぞ。と言うか、殆どがそう言う店だな。ちゃんと店を構えているのは金持ちだけだ。商業ギルドに登録すれば誰でも自由に物を売る事が出来る。極端な話、ギルドに登録さえすれば、この村の中央広場で店を開いても文句を言う奴は居ないって事だ。」

「なるほど、商業ギルドに登録すれば良いんですね?」

「もし、登録する気なら、まず冒険者ギルドに登録する事を勧めるぞ。」

 ん?どう言う事だ?商人になるのに冒険者ギルドが関係するのか?

「いきなり商業ギルドに登録すると銀貨1枚取られる。だが、冒険者ギルドに登録するのは無料だ。そして、冒険者ギルドのギルドカードを持っていると、商業ギルドの登録が無料になる。まあ、裏技みたいな物だな。それに、物を買い取るのは冒険者ギルドだ。商業ギルドは管理や権利関係の仕事はするが、基本ギルド自体で売買は行わない。」

 なるほど、これは良い事を聞いた。恐らく冒険者ギルドの方が力があるのだろう。バルザックさんに話を聞いて正解だな。

 あれ?と言う事は武器や防具は下取りに出さない方が良いのかな?

「武器とか防具とか持って無くても冒険者ギルドに登録出来ますか?」

「ふむ、まあ問題は無いと思うが、心配なら短剣でも持って行くと良いぞ。おいライザ!」

 バルザックさんがライザさんを呼んで何か話している。少し待つとライザさんが短剣を持って来てくれた。

「こいつをやろう。使い道の無い物だから遠慮しなくて良いぞ。」

 古い物だが、手入れはきちんとされている。

「良いんですか?きっちり手入れがされて居る様ですが?」

「ああ、刃物は錆びやすいから手入れはしているが、正直一度も使った事が無い物だ。それで良ければ持って行くと良い。無いよりはマシだろう?」

「そう言う事であれば遠慮なく頂きます。」

 さて、聞きたい事はだいたい聞けたので、そろそろ失礼しよう。これ以上仕事の邪魔をするのも何だしな。家でやりたい事もあるし。

 そう思ったら、バルザックさんが一休みするからお茶に付き合えと言い出した。親切にして貰ったので断りにくい。

 ライザさんが、お茶の用意をして奥から出て来た。

 目の前にティーカップが置かれる。お茶請けは漬物の様な物だ。流石にお菓子は出ない様だ。

「この家に客が来るなんて珍しいからな。大した物は出せないが、ゆっくりして行ってくれ。」

 お茶って紅茶なのかな?一口飲むと、紅茶とウーロン茶の中間の様な味がする。どうやら発酵の工程は行っている様だが、その過程が中途半端な状態の様だ。

 まあ、こう言う物だと思えば十分飲める。不味くは無いが若干苦みが強いかな?健康には良さそうだ。

 お茶請けも摘まんでみる。漬物だと思ったのだが、何かの果物を乾燥させた物をハチミツで戻した物の様だ。無茶苦茶甘いが、砂糖の甘さの様なくどさは無い。

 なるほど、お茶の苦みを消すにはこの位の甘さが必要なのかもしれない。もしくは肉体労働をするから、甘い物が欲しくなるのかな?

「ハチミツって貴重なんじゃないですか?」

「貴重って程では無いな。こうやって乾燥させた果物を漬ければ長期保存もできるしな。」

「なるほど、これを料理に使ったりはしないんですか?」

「これをか?」

「ええ、長期保存が可能なら砂糖の代わりになるのでは無いかと。」

 恐らく日本で言えばジャムに相当する物だと思うんだが、俺の質問おかしかったかな?

「砂糖って調味料なんですか?」

「え?」

 ライザさんの言葉に驚く。

「俺達庶民には砂糖が甘いって事位しか解らないからなぁ。どんな使い方をするのか想像も付かないんだよ。タツヤは砂糖を知ってるのか?」

 バルザックさんにも俺の言葉が奇妙に聞こえた様だ。

「砂糖は調味料ですよ。お菓子にも使いますが、基本は料理に使う事が多いですね。俺の田舎では砂糖はそれ程高級品では無かったので。」

「タツヤはかなり遠くからこの村に来たみたいだな。」

「そうですね。その辺は詮索しないで貰えると助かります。」

「まあ、人にはそれぞれ事情って物があるからな。」

 お茶を飲み終えたのを機にバルザックさんの家を暇する。帰り道に喋り過ぎたかな?と呟きながら短剣をアイテムボックスに収納する。

 さて、家に着いたら明日の為の準備をしないとな。おっと、その前に今日の夕食の事も考えないとイケない。

 家に着いたらベッドに腰かけ、ステータスウインドウを開く。

 ん?そう言えばステータスに魔力ってあるけど、俺って魔法が使えるのかな?

 これは誰に聞けば良いんだ?

 とりあえず後回しにして、アイテムボックスをウインドウ表示する。必要の無い物は全部下取りに出そうと言う作戦だ。

 まずは剣と防具、盾を下取りに出す。これだけでも13万円になる。高いのか安いのかは判らないが、とりあえずの資金としては十分だろう。日本で着ていた服も下取りに出した。これは上下とシャツで1万2千円と少し安い気がする。

 何気に貰った短剣を見たら3万円の下取り価格になっている。やはり結構良い物らしい。大事にしないと。

 現金は持っていたいから換金はしない。何かの時に必要になるかもしれないしね。

 次にショップのウインドウを開く。チャージ額が142600円と表示される。

 これから、ここで自給自足の生活をして行く事を踏まえ、生活に必要だと思われる品物を次々とカートに入れて行く。とりあえずは必要最低限で良いだろう。贅沢を言えば切りがない。

 鍋とフライパン。包丁とまな板。これは必需品だ。ケトルは鍋で代用できるので要らない。米が食いたいので炊飯用の鍋も買って置く。

 パンはどうする?電気が無いからホームベーカリーとか無理だよな?とりあえず保留かな。余裕が出来たら庭に石窯でも作るか?

 食器や箸、スプーン、フォークなども買って置く。キッチン関連はこんな物かな?

 あ、そうだ!火を着けるのにライターを買って置こう。燃料は薪だからな。たばこ用じゃなくて、アウトドアとかで使う細長い奴だ。

 次は寝室関連。窓が木だからカーテンは要らない。ベッドとシーツはあるし、少し厚めのベッドマットだけ買って置こう。後はトイレットペーパーとボックスティッシュを購入して置く。タオルも数枚必要だな。体を拭いたり顔を拭いたり、1枚じゃ足りないよね。

 その他にも石鹸やシャンプー等も購入して置く。それから下着を5枚位買って置こう。洗濯用の洗剤や洗面器も必要だな。バケツも必需品だ。

 次に食品を買う。米はとりあえず10キロ。パンも幾つか購入して置く。後は調味料とカップ麺等も買い込んで行く。なんとなくキャンプに行く準備みたいになってるな。その他は後でネットスーパーで購入しよう。

 なんだかんだで5万円以上飛んだ。まだ9万位残っているが、油断をしたら一瞬で無くなりそうだ。
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