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エルト王国編
Report17. エルト王の推測
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一方で異世界。
二時間に及ぶ強制スリープモードが解除され、行動可能となったイサミはパチリと目を開ける。
そのイサミの目に一番最初に映った光景は二人の美女の顔だった。
「ソニア、メアリー…すまない。また魔力を制御できず、暴走してしまったようだ。二人とも、怪我はないか?」
そう言いながらイサミは、自身が眠っていたベッドからゆっくりと身体を起こす。
しかし、いきなりソニアに抱きつかれたイサミは、押し倒される形で再びベッドに横になるのであった。
「どうした、ソニア?気分でも悪いのか?」
イサミは淡々とした口調でソニアに尋ねる。
「……そうやって、お前はいつも他人の心配ばかりする…自分を大切にしろと言ったじゃろうが、この馬鹿者。」
ソニアはイサミの胸の上で、うずくまりながら文句を言った。
「ああ…すまない。ところでソニア。そこをどいてくれないか。じゃないと、起き上がれない。」
しかしソニアは頑として離れず、蛹のように胸の上で固まっているだけであった。
その様子をベッドの横から見ていたメアリーは、なだめるようにイサミに話しかける。
「ごめんね、イサミくん。この子ずっと心配してたから、気持ちが緩んじゃったみたい。もう少しだけ、このままでいさせてあげて?」
「……そうか、わかった。」
イサミが、うずくまるソニアの頭を撫でようとしたその時、部屋の扉をノックする音がした。
「邪魔するぞい。」
扉を開けて入ってきたのは、賢者ランドルフと白いドレスを身にまとった麗しい女性であった。
その女性を見るや否や、メアリーはビシッと畏まり深々と頭を下げた。
「この度はお騒がせしてしまい申し訳ございませんでした、エルステラ国王。今回の件の責任の所在は全て私にあります。何なりと罰をお申し付けください。」
「そう畏まらずとも良い、メアリー。壊れた塔はまた魔法で修復すれば良いだけだ。」
エルステラと呼ばれた女性は、その鋭い目つきとは裏腹に穏やかな声でメアリーを諭す。
「それに…其方は我のたった一人の可愛い妹じゃないか。何をそんなに固くなっているのだ?いつもみたいに我を存分に甘やかしてくれても良いではないか~。」
そう言うなりエルステラは、メアリーをガバッと強く抱きしめた。
「もう!姉さんったら…人前では威厳のある立ち振る舞いを心がけてって言ってるのにぃ。」
「ふふふふふ~。良いではないか、良いではないか~。」
先程の気品のある雰囲気はどこへやら、エルステラはメアリーの胸に顔を埋め、自分の頭をグリグリと押し付けるのであった。
それを見兼ねたランドルフは、この流れを断ち切ろうと一つ大きな咳払いをした。
「ゴホン!あー…国王様。ここに来た理由をそろそろお伝えした方がよろしいのでは?」
「おお!そうであった、そうであった!」
我に返ったエルステラは、メアリーの身体を離し、改めてイサミの方に向き直る。
「自己紹介がまだであったな、我はこのエルト王国国王を務めているエルステラ・エルト・レイトンと申す。よろしくな、イサミとやら。」
エルステラの自己紹介に対して、イサミも寝たままの体勢で頭をコクリと下げる。
「こんな体勢で申し訳ないが、こちらこそよろしく頼む。ところで、エルステラ王はメアリーのお姉さんなのか?」
「左様。メアリーは我にはもったいないぐらいの出来た妹よ。まあそれはそれとして、我がここに来た理由を言わねばなるまいな。
イサミよ、我はお主にある質問をする為にここに来た。いや…質問と言うより、確認と言うべきか。これは我とランドルフで出した結論なのだが、改めて本人に聞いて確証を得たいのだ。」
エルステラは一呼吸おいた後、イサミの目を真っ直ぐに見据え改めて問う。
「イサミ、お主は生命体ではないな?」
エルステラの言葉を聞いたソニアとメアリーは、同時にイサミの顔を見る。
ここまでか。
衛兵のマークの時はランドルフが庇ってくれたおかげで有耶無耶になったが、この状況ではもう言い逃れすることはできない。
これ以上、弁解しても意味はない。そう悟ったイサミは観念して、その場にいる全員に真実を話し始めた。
「ああ。俺は生命体などではない。人によって作られたロボットだ。」
「ロボ…ット…?イサミくん、それは一体何なの?」
メアリーは聞きなれない単語に首を傾げた。
「やはり、この世界には無いものなんだな。簡単に言うと、俺は人と会話をすることができる人形みたいなものだ。今まで黙っていて、すまなかった。」
エルステラはイサミの告白に対して驚くことはなく、まじまじとイサミを見て分析をし始めた。
「ふむ…これが人工的に作られたものだというのか…我が国ではせいぜい石人形を動かすことが精一杯。しかも指示を出さずとも、己で考え行動するとはかなり高度な技術であるな。」
ぶつぶつと独り言のようにつぶやくエルステラに、イサミは質問をぶつける。
「なんで、俺が生命体でないとわかったんだ?」
「ランドルフの実験の結果を聞いてわかったのさ。元来魔法というのは、生命体が持つ核に反応して発動する。しかしランドルフが見た所、お主が魔法を使った時、核の反応が全く見られなかった。」
「では、なぜ俺は魔法を使うことができたんだ?まあ、コントロールはできていなかったが…」
「そうだな。その点については、我も推測の域を出ないのだが…イサミ、お主は何か別のエネルギーを魔力に変換しているのではないか?
そしてそのエネルギーが魔力を何十倍にも引き上げているのだと我は考えている。
でなければ、あの凄まじい魔力の説明がつかんのだ。」
「バッテリー…だろうな。」
イサミは思い当たる節をボソリと呟いた。
「バッテリー?なんだそれは?」
「まあ俺の活動エネルギーのようなものだ。これがゼロになると俺は活動できなくなってしまうんだ。」
「なるほど…お主はそのバッテリーとやらを消費して魔法を放っていたと…そしてそのバッテリーを利用した魔法の威力は絶大だが、同時に著しく消費が激しい諸刃の剣と言うわけだ。」
「ああ。一発撃っただけでこのザマだからな。相当コストパフォーマンスが悪いのだろう。それにしてもエルステラ国王。あなたの推理力はすごいな。」
「元々、研究者気質なものでな。本当は王の仕事などほっぽり出して、研究所にこもっていたいんだがな。」
「姉さん!それはいけません!」
メアリーのお咎めにエルステラはやれやれといった様子で肩をすくめた。
「と、まあこのように世話を焼いてくれる優秀な妹がいるので何とか王座に座れているのだよ。
話を戻すが、イサミくん。活動エネルギーをかなり消耗するとわかった今でも、君は魔法を使うことを望むかい?」
エルステラの問いに対して、イサミは真剣な目で答える。
「ああ、使いたい。ちゃんと使えるようになりたい。」
イサミの言葉に、エルステラはニヤリと笑った。
「わかった。では明日の朝、我のいる玉座の間に来い。約束だぞ。」
そう言い残し、エルステラとランドルフは部屋を後にした。
二時間に及ぶ強制スリープモードが解除され、行動可能となったイサミはパチリと目を開ける。
そのイサミの目に一番最初に映った光景は二人の美女の顔だった。
「ソニア、メアリー…すまない。また魔力を制御できず、暴走してしまったようだ。二人とも、怪我はないか?」
そう言いながらイサミは、自身が眠っていたベッドからゆっくりと身体を起こす。
しかし、いきなりソニアに抱きつかれたイサミは、押し倒される形で再びベッドに横になるのであった。
「どうした、ソニア?気分でも悪いのか?」
イサミは淡々とした口調でソニアに尋ねる。
「……そうやって、お前はいつも他人の心配ばかりする…自分を大切にしろと言ったじゃろうが、この馬鹿者。」
ソニアはイサミの胸の上で、うずくまりながら文句を言った。
「ああ…すまない。ところでソニア。そこをどいてくれないか。じゃないと、起き上がれない。」
しかしソニアは頑として離れず、蛹のように胸の上で固まっているだけであった。
その様子をベッドの横から見ていたメアリーは、なだめるようにイサミに話しかける。
「ごめんね、イサミくん。この子ずっと心配してたから、気持ちが緩んじゃったみたい。もう少しだけ、このままでいさせてあげて?」
「……そうか、わかった。」
イサミが、うずくまるソニアの頭を撫でようとしたその時、部屋の扉をノックする音がした。
「邪魔するぞい。」
扉を開けて入ってきたのは、賢者ランドルフと白いドレスを身にまとった麗しい女性であった。
その女性を見るや否や、メアリーはビシッと畏まり深々と頭を下げた。
「この度はお騒がせしてしまい申し訳ございませんでした、エルステラ国王。今回の件の責任の所在は全て私にあります。何なりと罰をお申し付けください。」
「そう畏まらずとも良い、メアリー。壊れた塔はまた魔法で修復すれば良いだけだ。」
エルステラと呼ばれた女性は、その鋭い目つきとは裏腹に穏やかな声でメアリーを諭す。
「それに…其方は我のたった一人の可愛い妹じゃないか。何をそんなに固くなっているのだ?いつもみたいに我を存分に甘やかしてくれても良いではないか~。」
そう言うなりエルステラは、メアリーをガバッと強く抱きしめた。
「もう!姉さんったら…人前では威厳のある立ち振る舞いを心がけてって言ってるのにぃ。」
「ふふふふふ~。良いではないか、良いではないか~。」
先程の気品のある雰囲気はどこへやら、エルステラはメアリーの胸に顔を埋め、自分の頭をグリグリと押し付けるのであった。
それを見兼ねたランドルフは、この流れを断ち切ろうと一つ大きな咳払いをした。
「ゴホン!あー…国王様。ここに来た理由をそろそろお伝えした方がよろしいのでは?」
「おお!そうであった、そうであった!」
我に返ったエルステラは、メアリーの身体を離し、改めてイサミの方に向き直る。
「自己紹介がまだであったな、我はこのエルト王国国王を務めているエルステラ・エルト・レイトンと申す。よろしくな、イサミとやら。」
エルステラの自己紹介に対して、イサミも寝たままの体勢で頭をコクリと下げる。
「こんな体勢で申し訳ないが、こちらこそよろしく頼む。ところで、エルステラ王はメアリーのお姉さんなのか?」
「左様。メアリーは我にはもったいないぐらいの出来た妹よ。まあそれはそれとして、我がここに来た理由を言わねばなるまいな。
イサミよ、我はお主にある質問をする為にここに来た。いや…質問と言うより、確認と言うべきか。これは我とランドルフで出した結論なのだが、改めて本人に聞いて確証を得たいのだ。」
エルステラは一呼吸おいた後、イサミの目を真っ直ぐに見据え改めて問う。
「イサミ、お主は生命体ではないな?」
エルステラの言葉を聞いたソニアとメアリーは、同時にイサミの顔を見る。
ここまでか。
衛兵のマークの時はランドルフが庇ってくれたおかげで有耶無耶になったが、この状況ではもう言い逃れすることはできない。
これ以上、弁解しても意味はない。そう悟ったイサミは観念して、その場にいる全員に真実を話し始めた。
「ああ。俺は生命体などではない。人によって作られたロボットだ。」
「ロボ…ット…?イサミくん、それは一体何なの?」
メアリーは聞きなれない単語に首を傾げた。
「やはり、この世界には無いものなんだな。簡単に言うと、俺は人と会話をすることができる人形みたいなものだ。今まで黙っていて、すまなかった。」
エルステラはイサミの告白に対して驚くことはなく、まじまじとイサミを見て分析をし始めた。
「ふむ…これが人工的に作られたものだというのか…我が国ではせいぜい石人形を動かすことが精一杯。しかも指示を出さずとも、己で考え行動するとはかなり高度な技術であるな。」
ぶつぶつと独り言のようにつぶやくエルステラに、イサミは質問をぶつける。
「なんで、俺が生命体でないとわかったんだ?」
「ランドルフの実験の結果を聞いてわかったのさ。元来魔法というのは、生命体が持つ核に反応して発動する。しかしランドルフが見た所、お主が魔法を使った時、核の反応が全く見られなかった。」
「では、なぜ俺は魔法を使うことができたんだ?まあ、コントロールはできていなかったが…」
「そうだな。その点については、我も推測の域を出ないのだが…イサミ、お主は何か別のエネルギーを魔力に変換しているのではないか?
そしてそのエネルギーが魔力を何十倍にも引き上げているのだと我は考えている。
でなければ、あの凄まじい魔力の説明がつかんのだ。」
「バッテリー…だろうな。」
イサミは思い当たる節をボソリと呟いた。
「バッテリー?なんだそれは?」
「まあ俺の活動エネルギーのようなものだ。これがゼロになると俺は活動できなくなってしまうんだ。」
「なるほど…お主はそのバッテリーとやらを消費して魔法を放っていたと…そしてそのバッテリーを利用した魔法の威力は絶大だが、同時に著しく消費が激しい諸刃の剣と言うわけだ。」
「ああ。一発撃っただけでこのザマだからな。相当コストパフォーマンスが悪いのだろう。それにしてもエルステラ国王。あなたの推理力はすごいな。」
「元々、研究者気質なものでな。本当は王の仕事などほっぽり出して、研究所にこもっていたいんだがな。」
「姉さん!それはいけません!」
メアリーのお咎めにエルステラはやれやれといった様子で肩をすくめた。
「と、まあこのように世話を焼いてくれる優秀な妹がいるので何とか王座に座れているのだよ。
話を戻すが、イサミくん。活動エネルギーをかなり消耗するとわかった今でも、君は魔法を使うことを望むかい?」
エルステラの問いに対して、イサミは真剣な目で答える。
「ああ、使いたい。ちゃんと使えるようになりたい。」
イサミの言葉に、エルステラはニヤリと笑った。
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