28 / 29
エピローグ
エピローグ
しおりを挟む
「今日も暑いね。」
蝉の声に掻き消されそうな声で呟くのは、墓の前で手を合わせる23歳の僕だ。
雅の残した遺書から始まった中学生の夏は、無事に幕を閉じ月日が経った。
おばさんやお母さん、僕の傷は時間が解決してくれた。
完璧ではないが、少しずつ癒えてはいる。
彼女の生きた時間を忘れる事は、この先一生無い。
でも僕の中にいるのはいつだって温かい彼女だ。
今の僕は新社会人だ。
仕事場の人には、心が男だという事を就職試験の時点で伝えている。
伝えるのは勇気のいる事だったが、雅の言葉を信じて話した。
最初は驚いている様子だったが、今の時代当たり前の事だから大丈夫だと言ってくれた。
僕の爆弾はその瞬間、爆発する事無く火花を消した。
涙が出そうなのを堪えて、頭を下げ、
「一生懸命頑張ります!」
震える声で、でも相手に伝わるように大きな声で言う。
今の僕は自分らしく生きている。
スカートに足は通さなくなった。
曇りがちな目も、今は前を向いて輝かせている。
全て雅の残した最後の手紙のおかげだ。
手を合わせて雅にお礼を伝えると、僕は墓に背中を向けて、その場をすぐに離れた。
あまり長くいると彼女に心配されてしまう。
歩き出した瞬間、真夏とは思えない涼しい風が僕の頬を撫でた。
そして懐かしい香りを感じた。
「忘れないで、私は貴方の味方。」
気のせいではあるだろうが、優しい声が聞こえた気がする。
「うん、ありがとう。」
それに小さく返事をする僕。
いないはずの彼女が優しい風に声を乗せて、僕を応援している。
そう思う事にしよう。
都合の良い解釈をしてしまう自分が可笑しくて、1人で肩をすくめながら笑い、再び足を進める。
僕の足はしっかりと未来に向かって歩いている。
僕は爆弾を抱えている。
しかし、その爆弾は爆発する事は無い。
いつか爆発してしまう事があるのならば、それは花火になって夜空を綺麗に咲かせる。
僕の抱えているモノは、綺麗な火薬だ。
蝉の声に掻き消されそうな声で呟くのは、墓の前で手を合わせる23歳の僕だ。
雅の残した遺書から始まった中学生の夏は、無事に幕を閉じ月日が経った。
おばさんやお母さん、僕の傷は時間が解決してくれた。
完璧ではないが、少しずつ癒えてはいる。
彼女の生きた時間を忘れる事は、この先一生無い。
でも僕の中にいるのはいつだって温かい彼女だ。
今の僕は新社会人だ。
仕事場の人には、心が男だという事を就職試験の時点で伝えている。
伝えるのは勇気のいる事だったが、雅の言葉を信じて話した。
最初は驚いている様子だったが、今の時代当たり前の事だから大丈夫だと言ってくれた。
僕の爆弾はその瞬間、爆発する事無く火花を消した。
涙が出そうなのを堪えて、頭を下げ、
「一生懸命頑張ります!」
震える声で、でも相手に伝わるように大きな声で言う。
今の僕は自分らしく生きている。
スカートに足は通さなくなった。
曇りがちな目も、今は前を向いて輝かせている。
全て雅の残した最後の手紙のおかげだ。
手を合わせて雅にお礼を伝えると、僕は墓に背中を向けて、その場をすぐに離れた。
あまり長くいると彼女に心配されてしまう。
歩き出した瞬間、真夏とは思えない涼しい風が僕の頬を撫でた。
そして懐かしい香りを感じた。
「忘れないで、私は貴方の味方。」
気のせいではあるだろうが、優しい声が聞こえた気がする。
「うん、ありがとう。」
それに小さく返事をする僕。
いないはずの彼女が優しい風に声を乗せて、僕を応援している。
そう思う事にしよう。
都合の良い解釈をしてしまう自分が可笑しくて、1人で肩をすくめながら笑い、再び足を進める。
僕の足はしっかりと未来に向かって歩いている。
僕は爆弾を抱えている。
しかし、その爆弾は爆発する事は無い。
いつか爆発してしまう事があるのならば、それは花火になって夜空を綺麗に咲かせる。
僕の抱えているモノは、綺麗な火薬だ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
月明かりの儀式
葉羽
ミステリー
神藤葉羽と望月彩由美は、幼馴染でありながら、ある日、神秘的な洋館の探検に挑むことに決めた。洋館には、過去の住人たちの悲劇が秘められており、特に「月明かりの間」と呼ばれる部屋には不気味な伝説があった。二人はその場所で、古い肖像画や日記を通じて、禁断の儀式とそれに伴う呪いの存在を知る。
儀式を再現することで過去の住人たちを解放できるかもしれないと考えた葉羽は、仲間の彩由美と共に儀式を行うことを決意する。しかし、儀式の最中に影たちが現れ、彼らは過去の記憶を映し出しながら、真実を求めて叫ぶ。過去の住人たちの苦しみと後悔が明らかになる中、二人はその思いを受け止め、解放を目指す。
果たして、葉羽と彩由美は過去の悲劇を乗り越え、住人たちを解放することができるのか。そして、彼ら自身の運命はどうなるのか。月明かりの下で繰り広げられる、謎と感動の物語が展開されていく。
最後ノ審判
TATSUYA HIROSHIMA
ミステリー
高校卒業以来10年ぶりに再会した8人。
決して逃れられない「秘密」を共有している彼らは、とある遊園地でジェットコースターに乗り込み「煉獄」へと誘われる。
そこで「最後の審判」を受けるために……。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ヘリオポリスー九柱の神々ー
soltydog369
ミステリー
古代エジプト
名君オシリスが治めるその国は長らく平和な日々が続いていた——。
しかし「ある事件」によってその均衡は突如崩れた。
突如奪われた王の命。
取り残された兄弟は父の無念を晴らすべく熾烈な争いに身を投じていく。
それぞれの思いが交錯する中、2人が選ぶ未来とは——。
バトル×ミステリー
新感覚叙事詩、2人の復讐劇が幕を開ける。
死館
ステラー
ミステリー
住宅街の一角にある高い塀と霧で囲まれた不気味な屋敷、通称『死館』。
この屋敷の敷地内に足を踏み入れた者は二度と帰ってこれない。国民の不安が日に日に増していく中、行方不明者は次々と増えていく…
事件開始から10年がたったある日、ついに一人の男が立ち上がった。
屋敷の謎は解けるのか?そして、中には何が待ち受けているのか??
ジャンルはミステリーに分類してますが、(SFアクション)スリラーです笑
全5話で完結です!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる