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第1章 爆弾
雅
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「樹!」
僕の名前を呼んだのは、幼馴染のあの子だ。
長くて綺麗な黒髪、透き通るような白い肌、子守唄のような高い声。
富澤 雅(とみざわ みやび)14歳。
彼女は小さい頃から僕と時間を共にしている親友だ。
そして、僕の初恋の相手。
今もその気持ちは変わらない。
でも彼女は知らない。
僕が男であるという事、この甘い気持ちを隠し持っている事を。
だからずっと女友達だと思っているだろう。
「おはよう、雅。」
僕達はいつも通り挨拶を交し、同じ歩幅で学校へと足を進める。
「ねぇ樹、またバスケで点を取りまくったんでしょ?凄いね!」
「いや、あんなの練習すれば誰でもできるよ。」
「そんな事無いよ、時期部長は樹かなぁ。」
「いやいや、無いよ。」
「否定ばっか…。」
雅が不満そうにそう呟く。
それが気まづくて、僕は違う話題を振った。
「そう言えば雅は学力テスト学年トップだっけ?」
「あ~、たくさん勉強したからね。」
「どうする?天才すぎて凄い高校とか大学に行けちゃうんじゃないの?」
「無い無い、私なんて中学校でトップなだけだから。」
「否定ばっか。」
僕達は今の会話全てが繰り返されていることに気づき、顔を見合わせて笑った。
この時間が好きだ。
他愛も無い会話をしていると学校に着いた。
僕達は同じクラスではない。
だから学校に着くと、違う靴箱へと進み、違うクラスへと向かう。
お互い手を振り教室に入る。
授業中。
雅が体育で外に出ている。
僕は窓際の席だから、それがよく見える。
本当に彼女は綺麗だ。
きっと色んな男からモテているのだろう。
そんな妄想が時に僕の胸を締め付ける。
もし、僕以外の誰かが雅の隣にいたら…。
きっと嫉妬で死んでしまう。
重いだろうか。
僕のこの気持ちは、今日も爆発する事無く、蝉の声に溶け込んでいくんだろう。
「暑い…。」
僕はボソッと呟いた。
僕の名前を呼んだのは、幼馴染のあの子だ。
長くて綺麗な黒髪、透き通るような白い肌、子守唄のような高い声。
富澤 雅(とみざわ みやび)14歳。
彼女は小さい頃から僕と時間を共にしている親友だ。
そして、僕の初恋の相手。
今もその気持ちは変わらない。
でも彼女は知らない。
僕が男であるという事、この甘い気持ちを隠し持っている事を。
だからずっと女友達だと思っているだろう。
「おはよう、雅。」
僕達はいつも通り挨拶を交し、同じ歩幅で学校へと足を進める。
「ねぇ樹、またバスケで点を取りまくったんでしょ?凄いね!」
「いや、あんなの練習すれば誰でもできるよ。」
「そんな事無いよ、時期部長は樹かなぁ。」
「いやいや、無いよ。」
「否定ばっか…。」
雅が不満そうにそう呟く。
それが気まづくて、僕は違う話題を振った。
「そう言えば雅は学力テスト学年トップだっけ?」
「あ~、たくさん勉強したからね。」
「どうする?天才すぎて凄い高校とか大学に行けちゃうんじゃないの?」
「無い無い、私なんて中学校でトップなだけだから。」
「否定ばっか。」
僕達は今の会話全てが繰り返されていることに気づき、顔を見合わせて笑った。
この時間が好きだ。
他愛も無い会話をしていると学校に着いた。
僕達は同じクラスではない。
だから学校に着くと、違う靴箱へと進み、違うクラスへと向かう。
お互い手を振り教室に入る。
授業中。
雅が体育で外に出ている。
僕は窓際の席だから、それがよく見える。
本当に彼女は綺麗だ。
きっと色んな男からモテているのだろう。
そんな妄想が時に僕の胸を締め付ける。
もし、僕以外の誰かが雅の隣にいたら…。
きっと嫉妬で死んでしまう。
重いだろうか。
僕のこの気持ちは、今日も爆発する事無く、蝉の声に溶け込んでいくんだろう。
「暑い…。」
僕はボソッと呟いた。
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