天使ちゃん、こちらです！

天使の怒り

エマの隠し事

「エマ！君の部屋を片付けてもいいかな？」
「うん、お願いね！」
二人は結婚した後、大きな家を買った。
彼らだけでは寂しいくらいの家。
でもいつかは子どもも出来るだろうから、その内そんな事は気にならなくなるだろう。
一緒に暮らし始めて気づいた事がある。
エマは料理が得意だが、掃除は苦手のようだ。
だから定期的にジェイソンが掃除をしている。
ボクがずっと前から愛している彼も、これまでと同じ優しいお医者さんだ。
一つ変わったのは、家を掃除するようになり、家事が得意になった事だ。


ボクはジェイソンと一緒にエマの部屋へと向かう。
扉を開け、部屋の掃除をする。
「エマってば、また飲み物をそのままにして…。」
少し呆れ気味だったが、それでも笑顔のジェイソン。
やっぱり優しい人だ。
愛しい人の為なら何でも出来るのだろう。
彼が掃除をしている姿を、しばらく空中でうっとりと見惚れていた。
そのせいだろう、ぼーっとしていたボクは、飛び方を忘れたのか本棚に当たってしまい、本を盛大に倒してしまった。
ドサドサッ…。
「何だ…？」
驚いた彼は床に散乱した本を見た。
「ごめんなさい！ボクこんな事するつもり無くて！」
聞こえない声で必死に謝る。
「何で倒れたんだ…？」
不思議そうに首を傾げながら本を手に取るジェイソン。
そしてその手に取った本から封筒が落ちてきた。
彼はその手紙の宛名を見ると、顔色が徐々に青くなっていく。
ボクもその宛名を除き、ジェイソンと同じ反応をした。
「僕の愛するエマ、恋人ルーカスより…。」
小さく呟く彼。
これは完璧に不倫の手紙だった。
ジェイソンはそれから他の本も調べた。
すると本に一通ずつ隠されているかのように手紙が挟まっており、宛名は全てルーカスという男からだ。
ボクはエマに腹が立った。
煮えたぎるような熱を覚え、憎しみに近い感情を抱いた。
「エマのやつ…、ジェイソンにこんな事隠してたのか。」
怒りを覚えるボクの横で、彼は膝をついて下を向く。
「大丈夫だよ、ボクがいる。」
鼻をすすりながら泣く声だけが、静かな部屋に響いていた。