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第8章 パパとボク
パパの匂いを頼りに
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大きな扉へと入った私達は、大きな光へと包まれた。
あまりの眩しさに目を瞑る程の光。
しばらくして目を開けると、そこには昭和の街があった。
ただの昭和の街ではない、のどかな自然達がある街だ。
「ここが…、あの世…?」
「おばあちゃんの家がある所に似てる!」
レンタローは大きい声ではしゃぎ出した。
「おばあちゃんの家…?」
私は困ったように首を傾げた。
長く生きてきた私は、昭和の街を見た事はあるが、おばあちゃんの家と言われると分からない。
何が違うのだろうか。
そんな風に考えていると、レンタローが犬のように鼻をヒクヒクさせている姿が横目で見えた。
「何してるの?」
「パパの匂いがする!」
「パパの匂い…?」
「うん!こっち!!」
レンタローは私の手を思いっきり掴み、パパの匂いというやつを頼りに走り出した。
その時、なんだか不思議な気持ちになった。
小さい身体で頼りないのに、どこか温かさを感じてしまう。
こんな感覚を私は知っている。
どこかで感じた事がある。
婆さんの時でも前山恵の時でもない。
親友を想う井上紗綾や西宮光太の時でもない。
他の誰かから感じた事のある温かさ。
今まで会ってきた人間の事を思い出しながら走っていると、急にレンタローが足を止めた。
「…?どうした?」
私が不思議に思って聞くと、息切れをするレンタローが一点を見つめている。
その目線の先へと私も目を向けると、そこには1人の男が海を眺めている後ろ姿があった。
「ハァ…、ハァ…、パパ…?」
レンタローの息切れした声が小さく呟く。
その声は男にも届いていたらしく、彼はゆっくりと振り向き、その顔はとても驚いていたが、目に涙を浮かべていた。
「廉太郎…。」
「パパ…!」
2人はいきなり走り出したかと思うと、思いっきり抱きしめ合って泣いていた。
「うわあああぁぁぁぁぁぁん!パパああああああああぁぁぁ。」
「廉太郎…、廉太郎…。」
レンタローがあんなに大泣きしている姿を初めて見たが、その姿だけでもどんなに父親に会いたかったかが分かる。
そして父親も、レンタローを愛しているのが分かるくらい強く抱きしめている。
「会いたかったよおおおぉぉぉぉ。」
レンタローは父親の大きな腕に抱かれながら、大粒の涙を流していた。
「パパも会いたかった…。」
お互いを確かめ合うように名前を呼び合う親子。
やっと出会えたことへの嬉しさから走り出した少年。
子どもの小さい声が、我が子のものだとすぐに気づいた父親。
これが愛情である事はすぐに分かった。
愛情だと分かったからこそ、私は一筋の涙を流しているのだと思う。
「廉太郎、どうやって来たんだ?まさか、死んだのか?」
父親はレンタローを膝の上に乗せながら話をする。
「うん!僕死んでるよ!」
死んでいる事などどうでもいいと言うように見せるレンタローの笑顔。
「でもね、1人で来たんじゃなくて、このお姉ちゃんが一緒に来てくれたの!」
レンタローが私の方を微笑みながら見つめると、父親も私を見た。
「君は…。」
父親は私の存在が何なのか分かっていない。
だからレンタローとどういう関係なのかも知らない。
「私は死んだ人間の魂をあの世に送る存在。レンタローが昔の父親に会いたがってたから手を貸した。」
「君は悪い人では無さそうだね。」
「別にレンタローに何かしようと思ってるわけじゃないよ。ただレンタローといると不思議な気持ちになるからさ、それを知りたくて一緒にいる。」
「不思議な気持ち?」
父親は首を傾げる。
「うん、なんだか最近身体がおかしいんだ。身体と心が上手く一致しない病気なのかもしれない。それを知りたいんだ。」
私が困った様子で足元を見ていると、父親が私の頭に手を置いてきた。
「…!」
「大丈夫、それはきっと病気じゃないさ。」
「病気じゃない?」
「君がどんな存在なのかはよく分からないけど、心が芽生えている証拠だよ。」
頭に置かれただけだった手は、優しく撫でる手に変わり、その瞬間また不思議な気持ちになった。
「これは…、この辺がムズムズする。」
私が胸の辺りに手を置き呟くと、父親は微笑んだ。
「それは、きっと恥ずかしいって気持ちだよ。」
あまりの眩しさに目を瞑る程の光。
しばらくして目を開けると、そこには昭和の街があった。
ただの昭和の街ではない、のどかな自然達がある街だ。
「ここが…、あの世…?」
「おばあちゃんの家がある所に似てる!」
レンタローは大きい声ではしゃぎ出した。
「おばあちゃんの家…?」
私は困ったように首を傾げた。
長く生きてきた私は、昭和の街を見た事はあるが、おばあちゃんの家と言われると分からない。
何が違うのだろうか。
そんな風に考えていると、レンタローが犬のように鼻をヒクヒクさせている姿が横目で見えた。
「何してるの?」
「パパの匂いがする!」
「パパの匂い…?」
「うん!こっち!!」
レンタローは私の手を思いっきり掴み、パパの匂いというやつを頼りに走り出した。
その時、なんだか不思議な気持ちになった。
小さい身体で頼りないのに、どこか温かさを感じてしまう。
こんな感覚を私は知っている。
どこかで感じた事がある。
婆さんの時でも前山恵の時でもない。
親友を想う井上紗綾や西宮光太の時でもない。
他の誰かから感じた事のある温かさ。
今まで会ってきた人間の事を思い出しながら走っていると、急にレンタローが足を止めた。
「…?どうした?」
私が不思議に思って聞くと、息切れをするレンタローが一点を見つめている。
その目線の先へと私も目を向けると、そこには1人の男が海を眺めている後ろ姿があった。
「ハァ…、ハァ…、パパ…?」
レンタローの息切れした声が小さく呟く。
その声は男にも届いていたらしく、彼はゆっくりと振り向き、その顔はとても驚いていたが、目に涙を浮かべていた。
「廉太郎…。」
「パパ…!」
2人はいきなり走り出したかと思うと、思いっきり抱きしめ合って泣いていた。
「うわあああぁぁぁぁぁぁん!パパああああああああぁぁぁ。」
「廉太郎…、廉太郎…。」
レンタローがあんなに大泣きしている姿を初めて見たが、その姿だけでもどんなに父親に会いたかったかが分かる。
そして父親も、レンタローを愛しているのが分かるくらい強く抱きしめている。
「会いたかったよおおおぉぉぉぉ。」
レンタローは父親の大きな腕に抱かれながら、大粒の涙を流していた。
「パパも会いたかった…。」
お互いを確かめ合うように名前を呼び合う親子。
やっと出会えたことへの嬉しさから走り出した少年。
子どもの小さい声が、我が子のものだとすぐに気づいた父親。
これが愛情である事はすぐに分かった。
愛情だと分かったからこそ、私は一筋の涙を流しているのだと思う。
「廉太郎、どうやって来たんだ?まさか、死んだのか?」
父親はレンタローを膝の上に乗せながら話をする。
「うん!僕死んでるよ!」
死んでいる事などどうでもいいと言うように見せるレンタローの笑顔。
「でもね、1人で来たんじゃなくて、このお姉ちゃんが一緒に来てくれたの!」
レンタローが私の方を微笑みながら見つめると、父親も私を見た。
「君は…。」
父親は私の存在が何なのか分かっていない。
だからレンタローとどういう関係なのかも知らない。
「私は死んだ人間の魂をあの世に送る存在。レンタローが昔の父親に会いたがってたから手を貸した。」
「君は悪い人では無さそうだね。」
「別にレンタローに何かしようと思ってるわけじゃないよ。ただレンタローといると不思議な気持ちになるからさ、それを知りたくて一緒にいる。」
「不思議な気持ち?」
父親は首を傾げる。
「うん、なんだか最近身体がおかしいんだ。身体と心が上手く一致しない病気なのかもしれない。それを知りたいんだ。」
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「…!」
「大丈夫、それはきっと病気じゃないさ。」
「病気じゃない?」
「君がどんな存在なのかはよく分からないけど、心が芽生えている証拠だよ。」
頭に置かれただけだった手は、優しく撫でる手に変わり、その瞬間また不思議な気持ちになった。
「これは…、この辺がムズムズする。」
私が胸の辺りに手を置き呟くと、父親は微笑んだ。
「それは、きっと恥ずかしいって気持ちだよ。」
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