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第6章 Sin and punishment for falling in love
死神と柚希だけの世界
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「死神…?」
やっぱりそういう反応になるよね。
私はこれまで様々な生きた人間の前に現れた事があるが、皆同じような反応をする。
驚くのは当たり前の事だから仕方がないのだが、毎回驚かれると私も反応に困ってしまう。
私は苦笑いをしながら扉の近くからベッドに向かって話をする。
「そうだよ、驚くよね。ごめんね!」
私が手を合わせて目を思いっきり瞑り大きな声で謝った。
すると可愛い笑い声が聞こえてきた。
今度は私が驚いて目を開けると、男の子は私の方を優しい顔で見ながら、手招きをした。
「こっちに来て、僕いつも1人だから退屈なんだ。お話しよう。」
私はそんな事を言われたのが初めてで、何だか照れてしまい、顔を赤くしながらベッドへと近づいた。
ベッドの近くには椅子があり、私はそれに腰を掛ける。
「あの…、怖くない?」
私が恐る恐る聞くと、男の子は少し考えるような顔をした後、また優しい顔つきに戻り、「さっきは驚いたけど怖くないよ。」と答えてくれた。
「君死神って言ったよね?って事は僕はあと少しで死んじゃうんだよね。」
男の子は自分の命が長くないことを悟り、しゅんとした顔で自分の手元を見ている。
「そうなんだ、私は君の命が残りわずかって事を伝えるために来たんだ。」
「どのくらいなの?僕は後どのくらい生きられる?僕はいつ死んじゃうの?」
その問いかけに私は言葉を詰まらせた。
「ごめん、答えられないんだ。仕事をする上での掟で…。本当にごめん。」
私が悲しそうな声で答えると、男の子は手元を見ていた顔を上げ、私に微笑んだ。
「謝らないで、ルールなら仕方がないよ!」
私はその子の顔を見た時に胸が苦しくなった。
こんなにいい子がなぜ、早くにこの世を去らなければならないのか。
死神の仕事はやりがいがあり、楽しいものではあるが、こんな風にいい人と関わると悲しくなる時がある。
私はこの気持ちに呑まれないよう早くこの場から立ち去ろうと思い、椅子から腰を上げた。
すると、
「僕は柚希!加賀柚希って言います!」
私は驚いて、中途半端に立ち上がったまま止まってしまっている。
「え…?あ、うん。」
返事もまともに出来ていない。
「さっきも言ったけど、僕いつも1人で退屈なんだ。良かったら明日も来て。」
「え!?」
私は返事に困ってしまい、その場から動けずにいる。
本当は一言「うん。」と言ってあげたいのだが、私の仕事では必要以上に生きた人間と関わりを持つことは許されていない。
それができるのは私よりも上のランクの死神だけだ。
「べ、別の死神に頼んであげようか?」
私がそう答えると、柚希は寂しい顔になった。
「君じゃないんだ…。じゃー別にいいや。」
「え~…。」
なぜ私にこだわるのかは分からない。
しかし柚希は明らかに嫌がっている。
私の仕事は、寿命が残りわずかだと伝える事。
それは分かっている。
分かってはいるが、私は人間を大切にしたいという気持ちがある。
「考えておくよ。」
私はそれだけ言い残して、部屋を出た。
やっぱりそういう反応になるよね。
私はこれまで様々な生きた人間の前に現れた事があるが、皆同じような反応をする。
驚くのは当たり前の事だから仕方がないのだが、毎回驚かれると私も反応に困ってしまう。
私は苦笑いをしながら扉の近くからベッドに向かって話をする。
「そうだよ、驚くよね。ごめんね!」
私が手を合わせて目を思いっきり瞑り大きな声で謝った。
すると可愛い笑い声が聞こえてきた。
今度は私が驚いて目を開けると、男の子は私の方を優しい顔で見ながら、手招きをした。
「こっちに来て、僕いつも1人だから退屈なんだ。お話しよう。」
私はそんな事を言われたのが初めてで、何だか照れてしまい、顔を赤くしながらベッドへと近づいた。
ベッドの近くには椅子があり、私はそれに腰を掛ける。
「あの…、怖くない?」
私が恐る恐る聞くと、男の子は少し考えるような顔をした後、また優しい顔つきに戻り、「さっきは驚いたけど怖くないよ。」と答えてくれた。
「君死神って言ったよね?って事は僕はあと少しで死んじゃうんだよね。」
男の子は自分の命が長くないことを悟り、しゅんとした顔で自分の手元を見ている。
「そうなんだ、私は君の命が残りわずかって事を伝えるために来たんだ。」
「どのくらいなの?僕は後どのくらい生きられる?僕はいつ死んじゃうの?」
その問いかけに私は言葉を詰まらせた。
「ごめん、答えられないんだ。仕事をする上での掟で…。本当にごめん。」
私が悲しそうな声で答えると、男の子は手元を見ていた顔を上げ、私に微笑んだ。
「謝らないで、ルールなら仕方がないよ!」
私はその子の顔を見た時に胸が苦しくなった。
こんなにいい子がなぜ、早くにこの世を去らなければならないのか。
死神の仕事はやりがいがあり、楽しいものではあるが、こんな風にいい人と関わると悲しくなる時がある。
私はこの気持ちに呑まれないよう早くこの場から立ち去ろうと思い、椅子から腰を上げた。
すると、
「僕は柚希!加賀柚希って言います!」
私は驚いて、中途半端に立ち上がったまま止まってしまっている。
「え…?あ、うん。」
返事もまともに出来ていない。
「さっきも言ったけど、僕いつも1人で退屈なんだ。良かったら明日も来て。」
「え!?」
私は返事に困ってしまい、その場から動けずにいる。
本当は一言「うん。」と言ってあげたいのだが、私の仕事では必要以上に生きた人間と関わりを持つことは許されていない。
それができるのは私よりも上のランクの死神だけだ。
「べ、別の死神に頼んであげようか?」
私がそう答えると、柚希は寂しい顔になった。
「君じゃないんだ…。じゃー別にいいや。」
「え~…。」
なぜ私にこだわるのかは分からない。
しかし柚希は明らかに嫌がっている。
私の仕事は、寿命が残りわずかだと伝える事。
それは分かっている。
分かってはいるが、私は人間を大切にしたいという気持ちがある。
「考えておくよ。」
私はそれだけ言い残して、部屋を出た。
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