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第1章 あなたには綺麗な花束を
私は死んだのですか?
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「おい・・・、おい・・・、」
あら、誰かが私を呼んでいる。
誰かしらね、気持ちよく眠っていたのに。
でもまだ寝ていたいし、起きなくてもいいわよね・・・。
私は自分にそう言い聞かせて、またゆっくりと意識を手放していく。
「おい!!起きろ婆さん!!」
ハッ!!
私はその声で飛び起きた。
私の心臓がバクバクしているのと同時に辺りを見回すと、そこにはドアを背中に担いでいる1人の女の子が座っていた。
「ちょっとあなたビックリするじゃない!心臓が止まるかと思ったわ!」
私は実際にはそんなに驚いていなかったが、何者か分からない彼女にそうやって文句をぶつけると、彼女は怪訝そうな顔をした。
「あんたもう心臓止まってるじゃん。」
年寄りって不思議ね、何を言われても驚かなくなってしまうもの。
驚くべきポイントはあったが、何も思わなくなってしまっていた。
私はもう一度辺りを見回すとそこは病院で、ベッドには私が眠っているということが分かった。
「あら、私が寝ているわ。結構綺麗な顔じゃない!」
「そう?私にはしわくちゃの婆さんにしか見えないけど。」
「失礼ね、あなたもいずれはこうなるのよ?」
「ならないよ、私は歳を取らない。」
この世には歳を取らないなんて人もいるものなのね。
彼女のその言葉を聞いて、1番に思ったのはその事。
そして私は本題に入ることにした。
「でー?あなたは誰なの?」
私は生意気な態度をとる彼女に、ニヤニヤしながら尋ねた。
「んー、何者かって聞かれたら難しい。私もよくは分かってないから。」
「自分の事なのに分からないの?」
「じゃーあんたは自分の事100%分かる?何の為に産まれて、何の為に生きてたか分かるの?」
「そういう言い方をされると難しいわね。」
「でしょ、そういう感じ。でも一つだけ言えるのは私は死者の魂をあの世に送る仕事をしてるって事。」
死者の魂・・・、ってことは私は死んでいるのね。
なるほど、彼女は死んだ私を迎えに来た死神ってことか。
「あなた、死神なの?」
「死神?そんなんじゃないと思う。私はただ魂をあの世に送るだけ。」
自分の事を死神ではないと感じている彼女は、暇そうに頬杖をつき、窓の外を見ている。
「名前はなんて言うの?」
「分からない、知らない。」
「自分の名前なのに分からないの?」
「誰からも教えて貰ってない、だから知らない。」
私は名前が無いという彼女を少し可哀想だと思った。
だって、名前はその人にとっての最初のプレゼントだもの。
だから名前が無いことは、とても寂しい事。
私がこの子にあった呼び名は無いかとお世辞を焼こうとしたら、彼女は突然立ち上がって私の方を向いた。
「さぁ、そろそろ行こうか。」
そう言った彼女は背中に担いでいたドアをドスンっと床に置き扉を開けた。
扉を開ければ、そこには上へと続く階段。
このドアのデザインはというと、黒をベースにしていて赤色で何かの模様が描いてある。
こんないかにも怪しげなドアをくぐって、階段を登れというの?
なんて子なのかしら。
「この階段を登れば、あんたはあの世に行ける。」
「あの世に行ったあとはどうなるの?」
「さぁね、その後の事はよく分からないけど、天国やら地獄やらが決まってるんじゃない?」
「ふーん・・・。」
私はそんな無責任な発言をする彼女を少し睨んだ。
しかし彼女はそんな私の目線なんか気にせず、早く階段を登れと言わんばかりに顔を見てくる。
正直、この階段を今登るべきか凄く迷っている。
悩んで悩んで、悩み倒した末・・・、
「私、まだあの世には行かないわ!」
「は?」
私の出した答えに、彼女は少し目を丸くしていた。
私は続けた。
「だって、まだ孫と仲直りしてないもの。それなのにあの世になんか行けないわ!」
「あのさ、婆さんはもう死んでるの。分かる?仲直りなんてどうやってする気?」
「それは死神のあなたなら何とかできるでしょ?」
「私は死神じゃないし、何にもできない。私の仕事は死者の魂をあの世に送るだけ、仮に何かできたとしても何であんたに力をかさなきゃいけないわけ?」
「冷たいこと言わないの!」
「無理、さっさと階段登って。」
彼女の冷たい視線と言葉で私は負けそうになったけど、孫との喧嘩に比べたらなんて事ないわね。
私は婆さん特有のワガママをする事にした。
「嫌よ、孫と仲直りするまでは絶対に行かないから。」
このワガママを私は何十分と続けただろうか。
かなり長い時間、彼女との口喧嘩は続いていた。
でも、彼女もまだまだね。
私のワガママが面倒くさくなったのか折れてくれた。
「分かった、仲直りすればいい。まぁできないと思うけど。」
「あらやだ!ありがとうねー!」
私は扉を閉め、背中にドアを担ぎ直している彼女に、大袈裟に感謝した。
「じゃー、孫の所に行くわよ!!」
孫と仲直りできても、できなくても、時間が来たらあの世へ行く。
そういう約束で私達は孫のいる場所へと向かった。
あら、誰かが私を呼んでいる。
誰かしらね、気持ちよく眠っていたのに。
でもまだ寝ていたいし、起きなくてもいいわよね・・・。
私は自分にそう言い聞かせて、またゆっくりと意識を手放していく。
「おい!!起きろ婆さん!!」
ハッ!!
私はその声で飛び起きた。
私の心臓がバクバクしているのと同時に辺りを見回すと、そこにはドアを背中に担いでいる1人の女の子が座っていた。
「ちょっとあなたビックリするじゃない!心臓が止まるかと思ったわ!」
私は実際にはそんなに驚いていなかったが、何者か分からない彼女にそうやって文句をぶつけると、彼女は怪訝そうな顔をした。
「あんたもう心臓止まってるじゃん。」
年寄りって不思議ね、何を言われても驚かなくなってしまうもの。
驚くべきポイントはあったが、何も思わなくなってしまっていた。
私はもう一度辺りを見回すとそこは病院で、ベッドには私が眠っているということが分かった。
「あら、私が寝ているわ。結構綺麗な顔じゃない!」
「そう?私にはしわくちゃの婆さんにしか見えないけど。」
「失礼ね、あなたもいずれはこうなるのよ?」
「ならないよ、私は歳を取らない。」
この世には歳を取らないなんて人もいるものなのね。
彼女のその言葉を聞いて、1番に思ったのはその事。
そして私は本題に入ることにした。
「でー?あなたは誰なの?」
私は生意気な態度をとる彼女に、ニヤニヤしながら尋ねた。
「んー、何者かって聞かれたら難しい。私もよくは分かってないから。」
「自分の事なのに分からないの?」
「じゃーあんたは自分の事100%分かる?何の為に産まれて、何の為に生きてたか分かるの?」
「そういう言い方をされると難しいわね。」
「でしょ、そういう感じ。でも一つだけ言えるのは私は死者の魂をあの世に送る仕事をしてるって事。」
死者の魂・・・、ってことは私は死んでいるのね。
なるほど、彼女は死んだ私を迎えに来た死神ってことか。
「あなた、死神なの?」
「死神?そんなんじゃないと思う。私はただ魂をあの世に送るだけ。」
自分の事を死神ではないと感じている彼女は、暇そうに頬杖をつき、窓の外を見ている。
「名前はなんて言うの?」
「分からない、知らない。」
「自分の名前なのに分からないの?」
「誰からも教えて貰ってない、だから知らない。」
私は名前が無いという彼女を少し可哀想だと思った。
だって、名前はその人にとっての最初のプレゼントだもの。
だから名前が無いことは、とても寂しい事。
私がこの子にあった呼び名は無いかとお世辞を焼こうとしたら、彼女は突然立ち上がって私の方を向いた。
「さぁ、そろそろ行こうか。」
そう言った彼女は背中に担いでいたドアをドスンっと床に置き扉を開けた。
扉を開ければ、そこには上へと続く階段。
このドアのデザインはというと、黒をベースにしていて赤色で何かの模様が描いてある。
こんないかにも怪しげなドアをくぐって、階段を登れというの?
なんて子なのかしら。
「この階段を登れば、あんたはあの世に行ける。」
「あの世に行ったあとはどうなるの?」
「さぁね、その後の事はよく分からないけど、天国やら地獄やらが決まってるんじゃない?」
「ふーん・・・。」
私はそんな無責任な発言をする彼女を少し睨んだ。
しかし彼女はそんな私の目線なんか気にせず、早く階段を登れと言わんばかりに顔を見てくる。
正直、この階段を今登るべきか凄く迷っている。
悩んで悩んで、悩み倒した末・・・、
「私、まだあの世には行かないわ!」
「は?」
私の出した答えに、彼女は少し目を丸くしていた。
私は続けた。
「だって、まだ孫と仲直りしてないもの。それなのにあの世になんか行けないわ!」
「あのさ、婆さんはもう死んでるの。分かる?仲直りなんてどうやってする気?」
「それは死神のあなたなら何とかできるでしょ?」
「私は死神じゃないし、何にもできない。私の仕事は死者の魂をあの世に送るだけ、仮に何かできたとしても何であんたに力をかさなきゃいけないわけ?」
「冷たいこと言わないの!」
「無理、さっさと階段登って。」
彼女の冷たい視線と言葉で私は負けそうになったけど、孫との喧嘩に比べたらなんて事ないわね。
私は婆さん特有のワガママをする事にした。
「嫌よ、孫と仲直りするまでは絶対に行かないから。」
このワガママを私は何十分と続けただろうか。
かなり長い時間、彼女との口喧嘩は続いていた。
でも、彼女もまだまだね。
私のワガママが面倒くさくなったのか折れてくれた。
「分かった、仲直りすればいい。まぁできないと思うけど。」
「あらやだ!ありがとうねー!」
私は扉を閉め、背中にドアを担ぎ直している彼女に、大袈裟に感謝した。
「じゃー、孫の所に行くわよ!!」
孫と仲直りできても、できなくても、時間が来たらあの世へ行く。
そういう約束で私達は孫のいる場所へと向かった。
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〈あらすじ〉
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