上 下
69 / 116

18.真相-4 *

しおりを挟む


 その後、ヴィオラがそろそろ正気に戻るだろうという頃に、座った体勢で彼女を膝に跨らせて繋がった。ヴィオラはその時には半分覚醒していて、体もある程度動かせるようになってきていたようだ。そこを未だ抜けない薬酒の昂りに後押しされ、自ら腰を揺らめかせて快楽を追求していた。
 その状況で目覚めた彼女にイザークは、嘘の説明をした。ヴィオラの方から求めてきてくれたのだと。

 イザークはヴィオラのことをよく理解していた。彼女が、自分の重大な失態にどう反応するのかを。
 初めて結ばれた時、最も不吉な破瓜の相手をイザークにさせてしまったと、怯え、冷静な思考を失っていた。他人の失敗は的確に補えて、自分の軽微な失敗も即座に後始末できる。だがヴィオラは、自分が大変なことをしでかしたときだけは、大きな隙を見せるのだ。
 そうしてお膳立てすると、ヴィオラは泥酔して自分からイザークと事に及んだのだと誤解した。冷静な彼女であれば、自分があの程度で酔いつぶれはしないと気付き、酒に何か仕掛けがあると思い至ったかもしれない。
 しかし予想通り、ヴィオラはイザークの言葉を信じてしまった。

 ただの友と、そして年初の相手とこのような事態へ陥り、その絶望の深さは計り知れない。出会った時からこれまで、彼女からは多大な貢献を受けた。その恩と友情を裏切り、穢し、この道へ引きずり込んだ。
 ヴィオラは許しを乞い、せめて双方の合意に基づくものではなく、自分だけの責任にすることで、最も低俗とされる年初の相手との不貞という事実を回避しようとした。だがそのようなことはさせない。イザークもヴィオラの働きかけで愛情を持ったのだと、二人による不貞だと強調した。これでヴィオラは、自分がイザークを堕落させたのだと思っただろう。

(これでいい……)

 泣いて懇願するヴィオラをしばらく凌辱して解放したイザークは、彼女が立ち去るのを見送ってから、着衣を直し始めた。
 テーブルの上を横目で確認すると、二人で食事をした後の食器が残されている。事前に、給仕には食事が終わった頃合いに片付けにくるよう告げていた。しかし来ていない。
 まだ薬酒で半覚醒だったヴィオラを犯している時に、出入り口の方から微かに人の息を呑む音などが聞こえてきた。給仕は何が起きているかを見て引き返したのだ。今夜の給仕には、あえて口の軽い者を選んだ。王と秘書官が年初の相手同士不貞を行っていると知れば、嬉々としてすぐに口外するだろう。

 イザークの目的は、この一度ヴィオラを犯すことではない。それでは彼女はこのまま姿を消すだろう。
 ヴィオラの人間関係や社会的地位など全て損なわせた上で捕え、ここにいるしか道はないと思わせて囲う。仮に自死しようものならイザークも後を追うと脅す。そして、イザークが道を踏み外した責任は、ヴィオラにあると思い込ませる。
 それが、イザークがヴィオラを手にする唯一の方法として巡らせた策略だった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢のお兄様【WEB版】

ハジ
ファンタジー
悪役令嬢の兄に転生した男子高校生が可愛い妹の為に頑張るお話です。 本作は電子書籍(kindle unlimited)として出版しています。

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです

矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。 それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。 本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。 しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。 『シャロンと申します、お姉様』 彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。 家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。 自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。 『……今更見つかるなんて……』 ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。  これ以上、傷つくのは嫌だから……。 けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。 ――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。 ◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。 ※この作品の設定は架空のものです。 ※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです。 ※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっております。……本当に申し訳ございませんm(_ _;)m

【第二章開幕】男子大学生は二度召喚される

皇める
BL
  「シュウ……やっと会えた。もう二度と離さない。ずっと俺の側に居てくれ……」 「え……?待って、本当にユリウスなの!? 俺、どうやってまた異世界へ来れたの?」 今、俺を逃がさんとばかりに抱きしめている男の名はユリウス。一度目の異世界転移で出会った時はまだ5歳の子どもだったのに、目の前に居るユリウスは俺と同じくらいの歳の姿になっている。 どうして俺は二度目の異世界転移をしたんだ? ◇◆◇ 俺、葛城秋也は異世界ものの物語が大好きな、ごく普通の大学生1年だった。 しかしある日突然、異世界転移しそこで出会ったのが幼い獣人のユリウス。 母親を亡くしてひとりぼっちのユリウスとしばらく一緒に暮らしていた。 孤独と愛情に飢えていたユリウスに俺はたくさんの愛情を注いだ。 しかし、ある出来事がきっかけで俺は元の世界に帰還した。 ユリウスとの突然の別れ……またひとりぼっちにさせてしまった後悔と罪悪感。そしてもう二度と会えないと知り絶望した。 そんな中、まさかの二度目の異世界。 再会できたユリウスは大人になっていて、俺をめちゃくちゃ溺愛してくる。 え?俺を愛してる?恋人になって本当の家族になってほしい?? ちょっと待って?何が一体どうなってるの?? 溺愛激重めの執着束縛系獣人×押しに弱い綺麗系男子大学生 溺愛要素は第二章からの予定です。 少しヤンデレ要素ありの溺愛激重の攻めです。 【第一章・完結】 【第二章・連載中】 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めての作品で至らない点や拙い文章ですが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。よろしくお願いしたします。 ●第11回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけたら嬉しいです。 ●この作品は作者独自の設定と世界観のお話でご都合世界です。 ●なんちゃって貴族の世界なのでおかしいところがあってもスルーしてください。 ●誤字脱字は投稿前に確認してますが、見落としがある可能性があります。その時は教えていただいたら助かります。 ●この作品は一部残酷・過激な表現があります。ご注意ください。 ●R指定要素には※がつきます。 ●男性妊娠や出産などの描写があります。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

壁の花令嬢の最高の結婚

晴 菜葉
恋愛
 壁の花とは、舞踏会で誰にも声を掛けてもらえず壁に立っている適齢期の女性を示す。  社交デビューして五年、一向に声を掛けられないヴィンセント伯爵の実妹であるアメリアは、兄ハリー・レノワーズの悪友であるブランシェット子爵エデュアルト・パウエルの心ない言葉に傷ついていた。  ある日、アメリアに縁談話がくる。相手は三十歳上の財産家で、妻に暴力を働いてこれまでに三回離縁を繰り返していると噂の男だった。  アメリアは自棄になって家出を決行する。  行く当てもなく彷徨いていると、たまたま賭博場に行く途中のエデュアルトに出会した。  そんなとき、彼が暴漢に襲われてしまう。  助けたアメリアは、背中に消えない傷を負ってしまった。  乙女に一生の傷を背負わせてしまったエデュアルトは、心底反省しているようだ。 「俺が出来ることなら何だってする」  そこでアメリアは考える。  暴力を振るう亭主より、女にだらしない放蕩者の方がずっとマシ。 「では、私と契約結婚してください」 R18には※をしています。    

ひとりよがりなFalse Face

水戸けい
BL
 相模原恭平は幼馴染の小西譲に恋をしていた。そして譲もまた、恭平に想いを向けている。けれどそんなことを言えば関係が崩れてしまうのではと、互いに想いを隠して生活をしていた。  そんなとき、ひょんなことから恭平は女装をして譲と疑似恋人になることになった。乗り気の譲。戸惑いながらも、これがチャンスと考える恭平。  うまくかみ合わないふたりの気持ちは――。

処理中です...