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夢じゃなかった編
18.逃げられない(2)
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ドラゴンが回復し更なる被害を招くため、ジークの魂が取り込まれることはあってはならない。
「でも、ドラゴンを殺すことはしたくない」
「君が手を貸さない限りドラゴンに俺の魂を食われることはないし、瀕死のドラゴンは放っておいても死ぬだろう」
「ドラゴンが死んだら、その体に宿る魂は消えるの。そうなれば、今度こそあなたの魂も死んでしまう」
魂を保持する入れ物がなくなり、ジークの魂もドラゴンと共に消えることになる。
「ドラゴンを生かすなんて……。君を殺そうとした夢は、あれは現実だったんだろう?」
ジークはルディに、体の自由がきかず彼女を殺しかける夢を見たと話していた。それは人里を襲うドラゴンと共有した視覚を、ジークが夢と認識していたのだ。
「回復すれば、ドラゴンはまたああして人を襲う。君も殺す」
五体満足だった時のドラゴンは、魔王の玉座の前室を守る敵としてジークたちへ立ちはだかった。十分な備えをしたうえで、まずは四人でしばらく体力を削り、ようやく生まれた隙を突いて、ゲオルグたちはジークとルディを先へ送り出してくれた。
万全の状態の複数名で臨まねばならなかった敵に、まだ消耗しているルディ一人で敵うはずがない。
「まだ方法はある。集落でドラゴンは私を殺そうとして、でも寸前でやめた。あれはあなたじゃないの?」
ルディへ食らいつこうとしたその牙を、ドラゴンはまるで急に体が動かなくなったような素振りで止めた。今はルディの夢魔の能力を利用するために懐柔しようとしているが、あの時は明らかに殺意があった。
ジークがその光景を覚えているのであれば、止めたのは彼が何かしたのではないかとルディは考えていた。
「いや……。確かに、夢とは思ったが、どうにかやめさせられないか、必死に体を動かそうと念じていた。あれは、俺が止めたのか?」
「そうかもしれない。ドラゴンは私に、ジークのふりをして、ドラゴンから体の主導権を奪ったと言っていた。それは嘘だけど、主導権を奪い合うこと自体はあり得ることなんじゃないかな。現にあなたはドラゴンの動きを止めた。あれはほんの少しの間だけ体を乗っ取れたんだよ」
ドラゴンの体をジークが完全に支配できれば、人を襲うことはなくなる。そうなればドラゴンを死なせず、回復しても構わない状況になる。
「だが、あれ以降ドラゴンの視覚らしきものは全く見えなくなった。意識はずっとこの夢の中でしか覚醒していない。一瞬乗っ取ったのを警戒されて、二度と無いように押え込まれているのかもしれない」
本来の体の持ち主の魂に優位性があるのだとすれば、ジークが一瞬支配を勝ち取れたのは偶然で、この先再度の奇跡は期待しない方がいいだろう。
「力ずくで奪うしかないと思う」
「一体どうやって? 俺はこの夢しか意識がないんだ」
「ドラゴンの魂だけを破壊するの。そうすればドラゴンの肉体には、あなたの魂しか入っていないことになる。ドラゴンの体はあなたのものになるはず」
「でも、ドラゴンを殺すことはしたくない」
「君が手を貸さない限りドラゴンに俺の魂を食われることはないし、瀕死のドラゴンは放っておいても死ぬだろう」
「ドラゴンが死んだら、その体に宿る魂は消えるの。そうなれば、今度こそあなたの魂も死んでしまう」
魂を保持する入れ物がなくなり、ジークの魂もドラゴンと共に消えることになる。
「ドラゴンを生かすなんて……。君を殺そうとした夢は、あれは現実だったんだろう?」
ジークはルディに、体の自由がきかず彼女を殺しかける夢を見たと話していた。それは人里を襲うドラゴンと共有した視覚を、ジークが夢と認識していたのだ。
「回復すれば、ドラゴンはまたああして人を襲う。君も殺す」
五体満足だった時のドラゴンは、魔王の玉座の前室を守る敵としてジークたちへ立ちはだかった。十分な備えをしたうえで、まずは四人でしばらく体力を削り、ようやく生まれた隙を突いて、ゲオルグたちはジークとルディを先へ送り出してくれた。
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「いや……。確かに、夢とは思ったが、どうにかやめさせられないか、必死に体を動かそうと念じていた。あれは、俺が止めたのか?」
「そうかもしれない。ドラゴンは私に、ジークのふりをして、ドラゴンから体の主導権を奪ったと言っていた。それは嘘だけど、主導権を奪い合うこと自体はあり得ることなんじゃないかな。現にあなたはドラゴンの動きを止めた。あれはほんの少しの間だけ体を乗っ取れたんだよ」
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「力ずくで奪うしかないと思う」
「一体どうやって? 俺はこの夢しか意識がないんだ」
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