【R-18】【完結】勇者はドラゴンに食い殺された

夢じゃなかった編

16.立てた旗を取りに行く(2)

「とぼけるのはやめてくれ」

　ジークはゲオルグの慌てている理由が分からないふりをしたが、それは分からないはずなどない、明らかなことであった。
　素性を知らずに勧誘してしまったが、半魔の彼女は聖教会の教義で許されない存在のため、仲間にするなどもってのほかだからだ。

「俺は聖教会の洗礼を受けていないから、教義に従う必要はない。預かった聖剣で魔王討伐のための旅をしているのは、人としてそうすべきと思っているからだ」

　これはヘルトルディスと出会ってから、聖教会へ明言するようになったことだ。
　急に勇者が反抗的になったと聖教会は震撼し、慌てて人員を派遣してきた。そして監視役のつもりか旅の仲間として随行させるようになった。フローラとゲオルグになるまで、そりが合わなかったり実力不足だったりで数人交替している。
　あれ以来半魔と出くわしたことがなかったので衝突にまでは至っていなかったが、今回は避けられそうにない。

「聖教会の教義では、半魔は存在が許されないんだ」
「知っている。だが殺せとは書いてないだろう。排除を指示する文言がないなら、仲間に加わってもらっても問題ないんじゃないか」
「それは詭弁だ！」
「ならどんな理由で俺の仲間の選択の自由を制限するつもりなんだ。……俺は、相手へ余計な先入観を持ちたくない。だから君とフローラが聖教会から派遣されてきた監視役だとしても、それで穿った見方をするのではなく、君たちと過ごした中での言動でどんな人物か判断してきた」
「ジーク……」

　二人は敬虔な聖教会の教徒で、勇者のくせに教義無視宣言をして反抗的なジークに対し、小言を並べはするが基本的に善良で思いやりのある人間だ。だからジークは監視役である二人と進んで対立せず、ある程度彼らの顔を立てつつ友情を育んできたつもりだ。

「彼女に対してもそうしたい。これまでの彼女の動きから、半魔であっても人間側で、この旅についてこられる実力を持っていると期待できる。しばらく過ごして、彼女が信用できるか一緒に判断してくれないか」
「だが……」
「よいではありませんか」

　言い淀むゲオルグに代わり、これまで静観していたフローラが口を開いた。

「すぐに半魔への考えを改めることは、率直に申し上げて難しいです。けれど、現状私たち三人では戦力に不安があります。ここは彼女に協力していただき、その中で理解を深めていけばいいでしょう」

　ゲオルグは、上司でもあるフローラの言葉を受け入れて、彼女を仲間にすることに再度同意した。

　翌朝彼女、そこで名前を聞いたのだがルディは、改めて仲間に勧誘されて少し驚きつつ、どこかほっとしているように見えた。