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夢編
9.ルディの夢(2)
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自分の夢へ戻ろうとしたその時、経験したことのない引っ張られるような感覚があった。
何か、と思った時には、ルディは星空輝く大平原に立っていた。
(あ、夢)
すぐそばにはテントが張ってあり、焚火が煌々と燃えている。
そのテントは旅の間使っていたものだ。この平原での野営の光景にも見覚えがある。
鮮明な夢で、平原をそよぐ夜風を肌に感じ、青い草のにおいもした。
剣を少し抜いて刃に映る自分の顔を確かめると、ルディ自身の顔があった。
他人の夢なら相手の好みに応じてルディの姿に変化があるはず。それがないということはどうやら自分の夢のようだ。
しかし先ほどの引っ張られるような妙な感覚は何だったのかと首を傾げつつ、ルディは焚火の傍に座る人間の背中に目を留めた。この広い背中はジークのものだ。
さくさくと草を踏んで歩み寄り、隣に腰を下ろした。
座って焚火をぼんやり眺めているジークは、ルディが見たこともないほど憔悴した顔をしていた。
「どうしたの?」
ルディは顔を覗き込む。
その目は虚ろで、ルディの夢の中の存在とはいえ痛々しい。
「……ルディ?」
声をかけられて、ジークは緩慢とした動作でルディへ視線を合わせた。
そしてたっぷり三度ほど呼吸を置いてから、カッと眼を見開いた。
「ルディ!」
「うわっ」
ジークはまるでとびかかるようにルディを抱きしめた。
警戒していなかった相手の急な動きに、ルディは反応できず簡単に捕まってしまった。強すぎる抱擁は現実なら痛みを感じていただろうが、夢の中ではその心配もない。
「本当にどうしたの」
自分の生み出した夢の行いと理解していても、ルディは少し緊張していた。
現実で彼に抱きしめられたことなど、故郷の村で力尽きて倒れたあの時一度きりだ。あれは負傷者を運ぶための行動で、このように感極まった熱い抱擁ではなかった。
「ひどい夢だった。体が、俺のものではないようで、思う通りに動かなくて……。君を殺してしまうところだった」
身動きできないためルディにジークの表情は見えないが、声は気弱に震えていた。
夢の中に生き物が現れた場合、支離滅裂なことか、現実で実際に発言した内容を、そのまま口にすることが多い。ジークはこのような不思議なことは言ったことがない。内容からして前者であろうとルディは結論付けた。
それよりも、ジークが恐ろしい夢を見てルディに泣きついているようなこの状況が、彼に抱きしめられるために用意された筋立てに思えることが、気がかりだった。
「……変な夢。私の願望かな」
自身の願望がむき出しであったとしても、所詮夢。誰に迷惑をかけるわけでもない。
現実のジークへの申し訳なさが僅かに頭の隅にちらつくが、ルディはこの状況を受け入れて楽しむことにした。
何か、と思った時には、ルディは星空輝く大平原に立っていた。
(あ、夢)
すぐそばにはテントが張ってあり、焚火が煌々と燃えている。
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他人の夢なら相手の好みに応じてルディの姿に変化があるはず。それがないということはどうやら自分の夢のようだ。
しかし先ほどの引っ張られるような妙な感覚は何だったのかと首を傾げつつ、ルディは焚火の傍に座る人間の背中に目を留めた。この広い背中はジークのものだ。
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「どうしたの?」
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「……ルディ?」
声をかけられて、ジークは緩慢とした動作でルディへ視線を合わせた。
そしてたっぷり三度ほど呼吸を置いてから、カッと眼を見開いた。
「ルディ!」
「うわっ」
ジークはまるでとびかかるようにルディを抱きしめた。
警戒していなかった相手の急な動きに、ルディは反応できず簡単に捕まってしまった。強すぎる抱擁は現実なら痛みを感じていただろうが、夢の中ではその心配もない。
「本当にどうしたの」
自分の生み出した夢の行いと理解していても、ルディは少し緊張していた。
現実で彼に抱きしめられたことなど、故郷の村で力尽きて倒れたあの時一度きりだ。あれは負傷者を運ぶための行動で、このように感極まった熱い抱擁ではなかった。
「ひどい夢だった。体が、俺のものではないようで、思う通りに動かなくて……。君を殺してしまうところだった」
身動きできないためルディにジークの表情は見えないが、声は気弱に震えていた。
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それよりも、ジークが恐ろしい夢を見てルディに泣きついているようなこの状況が、彼に抱きしめられるために用意された筋立てに思えることが、気がかりだった。
「……変な夢。私の願望かな」
自身の願望がむき出しであったとしても、所詮夢。誰に迷惑をかけるわけでもない。
現実のジークへの申し訳なさが僅かに頭の隅にちらつくが、ルディはこの状況を受け入れて楽しむことにした。
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