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20.求婚-2
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シュルークがキアーと性交する仲になってしばらく経った頃。その夜も、あの物置部屋でお互いに満足するまでまぐわい、事後に二人で休んでいた。
裸のまま、キアーが半ば下敷きになるように、木枠だけの寝台で二人で横になり抱き合っている。シュルークはいつも先に帰ってもらって構わないと思っているが、キアーはしばらくそうやって過ごすことを望んだ。
「シュルーク、話があります」
今日はキアーの口数が少ないと少し不思議に感じていたシュルークは、改まってそう切り出した彼の顔を見た。
「何でしょうか、キアー様」
キアーは今ではシュルークを名前で呼んでいるが、シュルークの方は変わらず接している。
真剣な様子の彼に促され、二人で体を起こして向き合った。キアーは随分と熱っぽい眼差しでシュルークを見つめている。
「私の……、伴侶になってくれませんか」
「伴侶……?」
シュルークは、まさか性交する相手としか認識していなかったキアーから求婚されるとは思いもよらなかった。
少し驚くシュルークの手を、キアーが両手で包み込むように握る。
「この部屋で会うばかりの間柄でしたが、私は真剣にあなたとの将来を考えています」
「ですが、私は外出の許可が下りません」
夫婦用の宿舎はないので、普通、既婚者は王宮の外に住む。単身者でも恋人と会うなら王宮の外で逢瀬を重ねる。だがシュルークでは、そんな普通のことすら叶わない。あのファルハードが、結婚のお祝いに外出許可をくれるとも思えない。
「わかっています。聖職者から祝福を受けることはおろか、結婚しても形ばかりで結局こうして隠れて会うことしかできないかもしれません」
「それだけではありません。もし婚姻後も陛下からお召しがあれば、私はこれまでどおりに寝所へ向かいます」
一応平民のシュルークを違法に無報酬で労働させ、皇宮からの外出を許さず、極めつけは強姦した男である。法を恐れない権力者が、人妻になった途端に手を引くか興味を失うと期待するのは楽観的すぎる。そして寝室へ呼ばれたら、シュルークに拒否権はない。
「それでも、私はあなたを妻にしたい。たとえあなたが他の男に抱かれようと、構いません」
ある程度具体的な想像までしたうえでの求婚なのだろう。表情を曇らせながらも、キアーはしっかりと言いきった。
彼の思想がわかったところで、シュルークは考え込んだ。
一般的に婚姻は、家や血を存続させるために男女が子を生し育むうえで、住居や生計を一にし社会的にもその関係を認められる仕組みである。その過程で、夫婦がお互いを性的に独占することになる。
求婚したからにはキアーもそれらを望んでいるのかと思えば、外出制限を承知しているため婚姻で期待される多くに対する制限は受け入れている。性交から始まった関係のため性的な独占が一番の目的だろうかと念のため確認しても、他の男に抱かれて構わないと言う。確実に保障されるのは、お互いが夫婦だと社会的に主張できる点ぐらいだろう。
それでキアーが満足なら、シュルークも特段問題はない。シュルークは元々ファルハードに抱かれない夜の熱を発散させるために、キアーと関係し始めた。ファルハードを含む他の男との性交を制限されないのなら、シュルークに不利益は生じない。求婚を受けることでキアーが喜び、彼との良好な関係の維持に貢献し、さらに万が一この場を誰かに見られた場合の情状酌量の材料になるのなら、むしろ利益がある。
そう結論づけると、シュルークは顔で柔らかい笑みを形作った。
「いいですよ。よろしくお願いします」
裸のまま、キアーが半ば下敷きになるように、木枠だけの寝台で二人で横になり抱き合っている。シュルークはいつも先に帰ってもらって構わないと思っているが、キアーはしばらくそうやって過ごすことを望んだ。
「シュルーク、話があります」
今日はキアーの口数が少ないと少し不思議に感じていたシュルークは、改まってそう切り出した彼の顔を見た。
「何でしょうか、キアー様」
キアーは今ではシュルークを名前で呼んでいるが、シュルークの方は変わらず接している。
真剣な様子の彼に促され、二人で体を起こして向き合った。キアーは随分と熱っぽい眼差しでシュルークを見つめている。
「私の……、伴侶になってくれませんか」
「伴侶……?」
シュルークは、まさか性交する相手としか認識していなかったキアーから求婚されるとは思いもよらなかった。
少し驚くシュルークの手を、キアーが両手で包み込むように握る。
「この部屋で会うばかりの間柄でしたが、私は真剣にあなたとの将来を考えています」
「ですが、私は外出の許可が下りません」
夫婦用の宿舎はないので、普通、既婚者は王宮の外に住む。単身者でも恋人と会うなら王宮の外で逢瀬を重ねる。だがシュルークでは、そんな普通のことすら叶わない。あのファルハードが、結婚のお祝いに外出許可をくれるとも思えない。
「わかっています。聖職者から祝福を受けることはおろか、結婚しても形ばかりで結局こうして隠れて会うことしかできないかもしれません」
「それだけではありません。もし婚姻後も陛下からお召しがあれば、私はこれまでどおりに寝所へ向かいます」
一応平民のシュルークを違法に無報酬で労働させ、皇宮からの外出を許さず、極めつけは強姦した男である。法を恐れない権力者が、人妻になった途端に手を引くか興味を失うと期待するのは楽観的すぎる。そして寝室へ呼ばれたら、シュルークに拒否権はない。
「それでも、私はあなたを妻にしたい。たとえあなたが他の男に抱かれようと、構いません」
ある程度具体的な想像までしたうえでの求婚なのだろう。表情を曇らせながらも、キアーはしっかりと言いきった。
彼の思想がわかったところで、シュルークは考え込んだ。
一般的に婚姻は、家や血を存続させるために男女が子を生し育むうえで、住居や生計を一にし社会的にもその関係を認められる仕組みである。その過程で、夫婦がお互いを性的に独占することになる。
求婚したからにはキアーもそれらを望んでいるのかと思えば、外出制限を承知しているため婚姻で期待される多くに対する制限は受け入れている。性交から始まった関係のため性的な独占が一番の目的だろうかと念のため確認しても、他の男に抱かれて構わないと言う。確実に保障されるのは、お互いが夫婦だと社会的に主張できる点ぐらいだろう。
それでキアーが満足なら、シュルークも特段問題はない。シュルークは元々ファルハードに抱かれない夜の熱を発散させるために、キアーと関係し始めた。ファルハードを含む他の男との性交を制限されないのなら、シュルークに不利益は生じない。求婚を受けることでキアーが喜び、彼との良好な関係の維持に貢献し、さらに万が一この場を誰かに見られた場合の情状酌量の材料になるのなら、むしろ利益がある。
そう結論づけると、シュルークは顔で柔らかい笑みを形作った。
「いいですよ。よろしくお願いします」
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