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16.待望-4 *
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「……陛下?」
物思いにふけるうちに、組み敷いた体を放置していたようだ。青白い肌に血を巡らせ汗ばむシュルークが、不思議そうに声をかけてきた。
「……声をかけるな」
「あっ……、は、い……」
潤んで絡みつく隘路に猛る自身で押し入り、己の快感を追求しつつも、彼女が反応する場所にも擦りつける。激しい行為は女の側の消耗が大きいため、ファルハードはいつもゆっくりと肌を重ねる。
奥深くの弱い場所へ触れるように押し捏ねれば、シュルークの吐息と微かな声はその都度熱く高まっていった。
「う……、あぁ、あ……」
一度目に凌辱したときは、目立った効果がなかったためそれで終わりにするつもりだった。しかしその後、どうも彼女が、また犯されるのではないかと僅かに怯える素振りを見せた。
ファルハードは普段女を痛めつけるようなことはしていない。常からシュルークにしたように妃たちを抱いていると思われるのは癪だった。それで何となく、二度目に寝台へ引き込んだのだ。
犯されることは受け入れ大人しくしつつも、固くなった体。それをファルハードは大勢を抱いてきた手管で解し、シュルークを未知の快楽で戸惑わせた。何をしても響かなかった彼女が、初めて揺らいだ瞬間でもあった。以前のシュルークとは違うが、ファルハードには感じるものがあった。
そして何より――、
「あっ、く、ぅ、くる……、んッ――!」
びくん、と体を震わせて、シュルークは絶頂を迎えた。
この時いつも、身を寄せているファルハードへ無意識にしがみつく。
「ん……、ぅ……」
ファルハードの男根を締めつける膣壁は、まだひくひくと強く痙攣しており、その絶頂の余韻の波が来るたびにシュルークは呻き声を漏らす。
繋がった場所と触れ合う肌に集中し、残り二度三度と抽送を繰り返すと、ファルハードも彼女の中で達した。
「ふぅ……、ふぅ……」
絶頂の緊張から弛緩へ移ったシュルークは、高まった心拍を落ち着けるため、ようやく深く息をする。
だが平常心にはほど遠く、自分がファルハードの首へ縋りつくように、両肩へ腕を回していることには気がついていない。
その無自覚のままに、シュルークの手は、ファルハードの耳の後ろをそっと撫でた。
――大好きよ。
媚も、男女の性愛も含まない、透明すぎる愛の言葉が、もう何年も経つのにあの時のままで頭の中へ響く。
最初にそうされた時はやめろと言った。女官長は命令には忠実だ。それでも行為の果ての無我へ達すると、シュルークはファルハードにしがみついて、耳の後ろを撫でる。後から咎めても、本人に自覚はない。
この変わった場所を撫でる行動は、シュルークが飼い犬にしていたことである。つまりこれは、彼女のどこかに、失われたはずの記憶が眠っている証左に他ならなかった。
消えてなどいない。表層にはなくとも、彼女の中に残存する。
完全に消えたならまだしも、残っているならいつか戻るかもしれない。ならば、まだ処刑するには早い。消えかけていた道が、また見えるようになった気がした。
そうしてファルハードはシュルークを繰り返し寝台に上げ、彼女の記憶の欠片を垣間見て、自らの決断に間違いがないことを確認するようになった。
シュルークの胎内へ種を放ち終えてからも、そのまま抱き合っていると、やがて彼女の息遣いが穏やかになり、しがみつく腕の力が抜けてきた。
追い出さなくても、朝までには勝手に目を覚まして帰っていく。だからファルハードは、彼女を起こさず、自分もそのまま眠りに就いた。
物思いにふけるうちに、組み敷いた体を放置していたようだ。青白い肌に血を巡らせ汗ばむシュルークが、不思議そうに声をかけてきた。
「……声をかけるな」
「あっ……、は、い……」
潤んで絡みつく隘路に猛る自身で押し入り、己の快感を追求しつつも、彼女が反応する場所にも擦りつける。激しい行為は女の側の消耗が大きいため、ファルハードはいつもゆっくりと肌を重ねる。
奥深くの弱い場所へ触れるように押し捏ねれば、シュルークの吐息と微かな声はその都度熱く高まっていった。
「う……、あぁ、あ……」
一度目に凌辱したときは、目立った効果がなかったためそれで終わりにするつもりだった。しかしその後、どうも彼女が、また犯されるのではないかと僅かに怯える素振りを見せた。
ファルハードは普段女を痛めつけるようなことはしていない。常からシュルークにしたように妃たちを抱いていると思われるのは癪だった。それで何となく、二度目に寝台へ引き込んだのだ。
犯されることは受け入れ大人しくしつつも、固くなった体。それをファルハードは大勢を抱いてきた手管で解し、シュルークを未知の快楽で戸惑わせた。何をしても響かなかった彼女が、初めて揺らいだ瞬間でもあった。以前のシュルークとは違うが、ファルハードには感じるものがあった。
そして何より――、
「あっ、く、ぅ、くる……、んッ――!」
びくん、と体を震わせて、シュルークは絶頂を迎えた。
この時いつも、身を寄せているファルハードへ無意識にしがみつく。
「ん……、ぅ……」
ファルハードの男根を締めつける膣壁は、まだひくひくと強く痙攣しており、その絶頂の余韻の波が来るたびにシュルークは呻き声を漏らす。
繋がった場所と触れ合う肌に集中し、残り二度三度と抽送を繰り返すと、ファルハードも彼女の中で達した。
「ふぅ……、ふぅ……」
絶頂の緊張から弛緩へ移ったシュルークは、高まった心拍を落ち着けるため、ようやく深く息をする。
だが平常心にはほど遠く、自分がファルハードの首へ縋りつくように、両肩へ腕を回していることには気がついていない。
その無自覚のままに、シュルークの手は、ファルハードの耳の後ろをそっと撫でた。
――大好きよ。
媚も、男女の性愛も含まない、透明すぎる愛の言葉が、もう何年も経つのにあの時のままで頭の中へ響く。
最初にそうされた時はやめろと言った。女官長は命令には忠実だ。それでも行為の果ての無我へ達すると、シュルークはファルハードにしがみついて、耳の後ろを撫でる。後から咎めても、本人に自覚はない。
この変わった場所を撫でる行動は、シュルークが飼い犬にしていたことである。つまりこれは、彼女のどこかに、失われたはずの記憶が眠っている証左に他ならなかった。
消えてなどいない。表層にはなくとも、彼女の中に残存する。
完全に消えたならまだしも、残っているならいつか戻るかもしれない。ならば、まだ処刑するには早い。消えかけていた道が、また見えるようになった気がした。
そうしてファルハードはシュルークを繰り返し寝台に上げ、彼女の記憶の欠片を垣間見て、自らの決断に間違いがないことを確認するようになった。
シュルークの胎内へ種を放ち終えてからも、そのまま抱き合っていると、やがて彼女の息遣いが穏やかになり、しがみつく腕の力が抜けてきた。
追い出さなくても、朝までには勝手に目を覚まして帰っていく。だからファルハードは、彼女を起こさず、自分もそのまま眠りに就いた。
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