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第四章 波乱の内政・外交編

第14話 “いくさごっこ”

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チャールート金山で勝利を納めたタールランド軍は、次々にスムジア山脈に拠点を置いているスムジア王国軍を撤退させる。だが、スムジア王国軍はかなりの粘りがあり、将軍ハーレインが投降した後も、激しい戦いが繰り広げられていた。

「隙を突いていけっ! 絶対に盾を離すなよっ!!」

小隊長の声が響く。タールランド王国側は、これまでの経験や元々遊牧民だということもあり、耐久力はある。だが、ここまで長引いてくると、さすがの遊牧民でも音をあげるものが多く出てきた。対して、スムジア王国側も、

「耐えろ、耐え忍ぶのだ!!」

と、まるで籠城戦のように、一歩も引こうとしない。何かを待っているかのようだった。



ハーレイン将軍を拘束し、タールランド王国軍の本拠地へと連れ帰ったジークは、部下に何かを持ってこさせていた。二人の将校が、負傷者の名簿と、地図を持ってきた。そして、本拠地にいる遊軍に補充を命じた。その様子で察した参謀のヘンリーは、ジークに告げる。

「将軍、負傷者が一番多く出ているところへの補充をするよりもまず、元々人数が少なく、援軍の要請が出ている西側に配置すべきです。」

ジークは微笑んで言う。

「焦るな。西側には既に一人の優秀な魔術師が駆けつけている。それに………もうそろそろ頃合いだ。」



スムジア山脈西側の谷付近。スムジア兵が、タールランド王国軍の負傷者を追って、山の中まで入ってきていた。一人の若い男が、目を光らせて言う。

「徹底的に追い詰めろ。一人でも逃してみろ、お前らの首が飛ぶぞ。」
「おお!!!!」

西側に主におかれたのは、魔法使いの軍。しかも、全員が魔法の使い手だ。スムジア王国軍が、〈ムーン〉による支配を受けていることの象徴でもある。そんな彼らの隊長は、余裕さえ見せながら、山の中を歩いていた。
山の中を一心不乱に追いかけてきたが、やがて足跡が途絶え、兵士の声も聞こえなくなった。

「痕跡がなくなりました。どうされますか。」
「慌てるな。“追跡チェイス”!!」

黒い光が辺り一体を灯す。すると、さっきまで見えなかった血の跡や、足を引きずった跡などがはっきりと目に浮かんできた。

「よし、お前らはあっちを探せ。俺らはまた別の所を探る。」

と言って、何人かの部下を引き連れて、足跡とは反対方向を探しにいく。

「隊長、こちら側には何の痕跡もありませんが?」
「だからだ。何もない方に隠れている可能性だってある。」
「ですが、彼らは魔法を扱えない凡人。我々が街道に仕掛けた罠さえ見抜けなかった駐留兵もいるのです。その差は歴然では?」

と笑いながら進む部下とは対照的に、隊長と呼ばれている男は、冷静さを保ちながら歩みを進めている。突然、遠くで何かが崩れる音がした。

「………っ、まさかっ!!」
「隊長、どうされたのですか??? ちょっと、隊長!!」

数人の部隊は、先程のところまで急いで引き返した。
先程まであったはずの崖はなく、仲間である魔法使いたちは、みな岩の下敷きになっていた。身体強化呪文をかけていたために、そこまで強烈な一撃ではなかったが、身体強化に魔力を割いているために、岩の重さで身動きが取れなくなっていた。隊長は、非常に慌てていた。

「ほう、お前がこの魔法なんちゃら軍の大将か。」

巨大な岩の上で大きく笑う人物が一人。後光を得て、より一層大きく見えていた。

「やられたな。これはこれは、我々の作戦を流用したやり方をするとは。」
「そうだな。まんまパクっただけなのに、これだけ上物が取れたから上出来だ。」

互いに睨み合う。

「まあ、いい。この戦はあと数時間で終わる。それまで私はゆっくりと見物しているとするか。」

といい、仲間たちを残して立ち去ろうとする。

「待て。あんたの部下がどうなってもいいのか?」

だが、慈愛という心を一蹴し、鼻で笑った。

「そうだな。正直言って、戦ごっこには飽きたな。じゃあな。」

といい、閃光とともに何処かに消え去った。残された敵の魔法使いたちは落胆し、下を向く。それを見かねて、ジークは呼び掛ける。

「…………お前らのことを許しはしないが、本拠地へと戻ってきてもらおう。」

こうして、負傷者を脇に抱えつつ、本拠地へと戻った。



「スムジア王国西部、タールランド王国によって制圧されました!」

報告役が、アリウスに報告する。緊迫した顔とはこれまた対照的に、アリウスは笑っていた。

「そうですか、西部が制圧されましたか。」

宰相の小飼とおぼしき忍が、怪訝な顔をしてアリウスに告げる。

「お言葉ですが、アリウス様。このままでは、では我々が負けてしまいます。」
「そうですね。そろそろ頃合いですか。」

ふんぞり返っていた王の席を立ち、忍に言いはなった。

、しっかりとお届けしてくださいね。」



ジークが到着してまもなく気づいたが、テントの中も周りも、本拠地は慌ただしかった。

「どうした、何かあったのか?」
「それが、このようなものが届いたらしくて……。」
「…………?」

宛名を見る。タイト宛か。差出人は………アリウス?

「なんだこれは?」
「そ、それが………和解しようという申し出が来たのです。」
「な、なんだって!?」
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