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第二章 第一次〈ムーン〉制圧作戦編

第14話 決意

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タールランド国内の〈ムーン〉拠点制圧後、ズール帝国の外交官、サガミのもとへ、僕は今回の作戦の報告へ行った。勝ったということを聞き、サガミが涙を流しながら、僕の体を抱きしめたのが、僕の頭に残った。
心中、複雑だった。


それから、僕はずっと室内で考え事をしていた。僕は、カルメンの言った言葉が忘れられなかった。


『タイト、あなたはまだ若すぎる。例えて言うなら、“弱輩者”だ。まだまだ視野が狭すぎる。もっと広い了見で世界を見つめ直すことですね。』


理想の君主とは、民衆の先達となり、皆を率いていくことができる人物だ。

でも、理想と現実は違う。僕は、為政者としてまだまだである。

弱冠12歳にして、父や大臣から受け継いだこの王冠は、今さらになって重いものだと知らされた。僕は、もしかしたら君主に相応しくないのかもしれない。兄たちや大臣は、僕のことを君主として盛り立ててくれようとしている。でも、僕は、世界を知らない。少し、甘かったのかもしれない。

たとえ、僕が王代行の執政官だとしても、役職は同じ。民衆を、引っ張っていく必要がある。選択をあやまってはいけない。周りをよく見渡し、適切な決断を下す必要がある。だけど、それができなかった。

本当に反省だ。今回、結果的には〈ムーン〉の多数のメンバーを捕縛できたけれども、僕的には素直に喜ぶことができない。

最後に、僕が放ったロックブラストを、簡単に止められたことに、どこか恥ずかしさを感じていた。

なんてことばっかりを永遠ループに考えてしまうんだ。…………


コンコン

「失礼しますね。」

「………あれ?ハルーラ。今日って〈ムーン〉の拠点制圧記念パーティーの手伝いがあったんじゃ?」


部屋の入り口に立っているのは、僕のお屋敷のメイドさん、ハルーラだ。手には、カップを持っている。


「タイト様が心配で、他のメイドに任せて出てきちゃいました。」


彼女もまた、〈ムーン〉の被害者で、今回僕が拠点を制圧したという話を聞いて、とても喜んでいたのだ。


「それよりも……………大丈夫ですか?」

「ああ…………うん。」


僕は、上の空で返事してしまった。


「……………………………えいっ」

「ふわっ!?」


突然ハルーラが僕の体を起こしたので、ビックリした。


「うふふっ、ずっと同じ姿勢でいれば、気持ちもずっと落ち込んだ」ままですよ。」

「うん…………そうだね。ありがとう。」


いえいえ、と言うと、彼女は僕の前にティーカップを置く。

………ん?この香りは……


「お気づきになられました?」

「ああ、うん。確か、ハルーラの故郷にだけ生えているっていうハーブのお茶だっけ?」

「はい。マケノニアという薬草を1ヶ月かけて発酵させて作る、癒しのお茶です。こういう時に飲むと、心身ともにリラックスできますよ。」

「いただきます。」


一口、飲んでみる。すると、芳しい薬草の匂いが鼻を抜けていった。何故だろう。ただのお茶のはずなのに、なんだかだんだん体が軽くなっていく…


「マケノニアの薬草には、かつて女神様がかけた“解呪”の聖魔法が、込められているらしくて、私も、よく疲れた時に飲むんですよ。」

「うん。確かに、癒しのお茶だね。……なんだか、凄い心地いいよ。」

「うふふ、いつもの顔に戻りましたね♪」


ハルーラが嬉しそうに笑う。自分では気付かなかったが、心の中身が顔にまで出てしまっていたのだろう。

お茶を飲み、ほっと一息をつく。この平和な時間があるのは、父達が戦ったからだ。だけど、平和のためだとしても、僕は戦うのが嫌だ。でも、でもね。


「こうやって、みんなが笑って過ごせる国を、僕は作りたい。だから、これからも、タールランドの代表、執政官の役職を頑張るよ。」


平和のために戦うなんて、欺瞞かもしれない。

みんなのために戦うなんて、自己中かもしれない。

それでも、僕は自分の意思を貫いて、頑張りたい。

僕は、タールランド第三王子、執政官のタイト・タール。

改めて、これからも頑張ろう。


僕の顔をみて、隣でハルーラが嬉しそうにしていたのが、凄く印象に残っていた。

第二章 完
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