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第一章 裏切りの王都編
第2話 不穏
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僕の家は、中央広場から歩いて5分の所にある。父は宮廷に住んでおり、僕のいるところからかなり離れた場所にあるために、めったに会うことはない。
門をくぐると、目の前に1人の男が立っているのが見える。
「ただいま~。」
「お帰りなさいませ。いかがでしたか?お久しぶりのお外は。」
彼はホスロ。父の古い友人で、執政の補佐をする大臣を務めている。昔から忙しい父に代わって、12年もの間僕を育ててくれた、僕にとっては第2の父とも言えるくらいにお世話になった人だ。母は、僕が幼い頃に病気で亡くなってしまったらしく、像や絵が残っていないために、どんな人なのか僕は知らない。
「やっぱり、市場は楽しいね。色々な物が各地から集まっていて。」
「そうですな。」
ホスロはニコニコしている。
なぜホスロがお久しぶりの外と言ったのかというと、この前まではバッタの魔物が大量発生していたからだ。
一般人に怪我を負わせ、ひどい時には殺されてしまう。
だから、みな大量発生の時期は家に引きこもりの生活を送る。僕も、家でずっと退屈だったんだよね。
「さてと、タイト様ももう成人の年。儀式の2日後からは、この辺の土地の領主となるのですから、執政のお勉強をなさらなければなりませんからな。さあ、部屋に戻ってやりましょう。」
「ええ……」
第三王子の僕は、今年で隠居してしまうというホスロから土地を継いで、このメーデという領を統治することになる。そのための勉強や引き継ぎを、ホスロにみっちりと叩き込んでもらっている。…僕もホスロみたいに安息の生活をしたいんだけどなあ。
「さ、さ。もう少しでメーデの歴史を学び終わるのですからな、しっかりとやっていきましょうぞ♪」
ホスロは、昔から人に何かを教えたりするのが好きらしく、スゴいノリノリだ。…………………手段は問わないけど。
「はは、ははは…」
さて、何時間かかるんだろ。
◇
所変わって、王都ダモス。建物の一角に、黒服の集団が集まっていた。
「こんなに上手く事が運ぶとはな。内政にどれだけ穴があるのだろうなぁ。」
1人、男が口を開く。
「あの男は昔から間抜けだ。反抗勢力に対して何の処罰もしないとは。こうして我々が計画遂行のために動いているのを知らずにな…」
頭領とおぼしき男が口をにぱぁと薄気味悪く開いて言う。
「くっくっくっ…さぁ、総仕上げを始めよう。50年前の恨みを晴らすのだ………全ては……」
「「我らが主君のために。」」
◇
ちゅん、ちゅん………
窓の外で……朝鳥が鳴いてる……
………あれ?いつの間に寝たんだっけか。
確か、ホスロに魔法で色々叩き込まれて…うーん…
「お目覚めですかな?」
聞き覚えのある声……
「ああ、ホスロか。昨日いつの間にか寝ちゃったみたいだね。」
「急に意識を失ったように眠ってしまわれたのですからな。驚きましたよ。」
コーヒーカップを片手に呑気な事を言っている。
それって本当に意識を失ったんじゃ…どれだけ強い魔法をかけたんだよ。
「さ、食事の支度ができてるようですからな。早くいらしてくだされ。」
「はーい。」
僕は眼を擦りながら、階段を降りていった。
「……で、なんでまだいるの?公務は?」
「ああ、こんな時間になってしまったので、朝食をいただいてから王宮に行きますよ。」
「そ、そう。」
ホスロは、僕のお屋敷のメイドさんが作ってくれるオムレツが好きだ。だから、理由をつけてはちゃっかり朝ごはんを食べていくのだ。
さてと…儀式はとうとう明日か…一体なんの職業適性が出るんだろうか。まあ、どのみちホスロの土地を継ぐつもりではいるけどね。
午前中は特にやることがなかったので、庭をぶらぶらした後に図書館へと向かった。この図書館は、父が民衆のためにみずからのポケットマネーで作ったもので、毎日たくさんの人が通っている。おかげで、他のどの国よりも識字率は高い。僕はそこで、あるものを探していた。その本というのが、大昔のお偉い魔法使いが死ぬ前に残した魔導書で、世界に3つしかないらしい。しかも、魔法を知らない人がそれを読むだけで、たちまち魔法を唱えられるようになってしまうという素晴らしい魔法道具なのだ。それを、骨董好きの父が掘り出し物市で見つけて買った。最初は胡散臭い本にしか見えなかったらしいが、店主の『ワケあり』という言葉に妙に納得して購入を決断したらしい(?)。
それを、図書館の棚にしまったらしいのだが、平民がそれを読むと、肉体が耐えきれないレベルの魔法も使えるようになってしまい危険だから、回収するようにホスロから頼まれている。
一体どこにしまったのだろうか。
「あ………………」
数十分後、本はあっさりと見つかった。
『危険な本』棚にあった。危ないからそんなの作るんじゃねえよ。同じ棚にあるタイトルは…
『初めての拷問』
よし、帰ろう。
この本を読んで犯罪者増えなきゃいいけど。
午後は自室でゆっくり休もうと思い、メイドさんにおやつを届けるよう頼んで廊下を歩いていた。
窓の外を見ると、厚い雲が広がっているのが見えた。今にも雨が降りだしそうな嫌な雲だ。
ドアを開け中に入ると…そこにはホスロが顔をぐちゃぐちゃにして立っていた。何があったのだろう、胸騒ぎがする。
「ど、どうしたの?」
「……ルーク様がっ………………暗殺されましたっ…!」
「え…………」
僕は、手に持っていたカップを落としてしまった。
静かな部屋にパリーンという音が響く。
…………………父が…………………死んだ……?
とても、信じられなかった。
門をくぐると、目の前に1人の男が立っているのが見える。
「ただいま~。」
「お帰りなさいませ。いかがでしたか?お久しぶりのお外は。」
彼はホスロ。父の古い友人で、執政の補佐をする大臣を務めている。昔から忙しい父に代わって、12年もの間僕を育ててくれた、僕にとっては第2の父とも言えるくらいにお世話になった人だ。母は、僕が幼い頃に病気で亡くなってしまったらしく、像や絵が残っていないために、どんな人なのか僕は知らない。
「やっぱり、市場は楽しいね。色々な物が各地から集まっていて。」
「そうですな。」
ホスロはニコニコしている。
なぜホスロがお久しぶりの外と言ったのかというと、この前まではバッタの魔物が大量発生していたからだ。
一般人に怪我を負わせ、ひどい時には殺されてしまう。
だから、みな大量発生の時期は家に引きこもりの生活を送る。僕も、家でずっと退屈だったんだよね。
「さてと、タイト様ももう成人の年。儀式の2日後からは、この辺の土地の領主となるのですから、執政のお勉強をなさらなければなりませんからな。さあ、部屋に戻ってやりましょう。」
「ええ……」
第三王子の僕は、今年で隠居してしまうというホスロから土地を継いで、このメーデという領を統治することになる。そのための勉強や引き継ぎを、ホスロにみっちりと叩き込んでもらっている。…僕もホスロみたいに安息の生活をしたいんだけどなあ。
「さ、さ。もう少しでメーデの歴史を学び終わるのですからな、しっかりとやっていきましょうぞ♪」
ホスロは、昔から人に何かを教えたりするのが好きらしく、スゴいノリノリだ。…………………手段は問わないけど。
「はは、ははは…」
さて、何時間かかるんだろ。
◇
所変わって、王都ダモス。建物の一角に、黒服の集団が集まっていた。
「こんなに上手く事が運ぶとはな。内政にどれだけ穴があるのだろうなぁ。」
1人、男が口を開く。
「あの男は昔から間抜けだ。反抗勢力に対して何の処罰もしないとは。こうして我々が計画遂行のために動いているのを知らずにな…」
頭領とおぼしき男が口をにぱぁと薄気味悪く開いて言う。
「くっくっくっ…さぁ、総仕上げを始めよう。50年前の恨みを晴らすのだ………全ては……」
「「我らが主君のために。」」
◇
ちゅん、ちゅん………
窓の外で……朝鳥が鳴いてる……
………あれ?いつの間に寝たんだっけか。
確か、ホスロに魔法で色々叩き込まれて…うーん…
「お目覚めですかな?」
聞き覚えのある声……
「ああ、ホスロか。昨日いつの間にか寝ちゃったみたいだね。」
「急に意識を失ったように眠ってしまわれたのですからな。驚きましたよ。」
コーヒーカップを片手に呑気な事を言っている。
それって本当に意識を失ったんじゃ…どれだけ強い魔法をかけたんだよ。
「さ、食事の支度ができてるようですからな。早くいらしてくだされ。」
「はーい。」
僕は眼を擦りながら、階段を降りていった。
「……で、なんでまだいるの?公務は?」
「ああ、こんな時間になってしまったので、朝食をいただいてから王宮に行きますよ。」
「そ、そう。」
ホスロは、僕のお屋敷のメイドさんが作ってくれるオムレツが好きだ。だから、理由をつけてはちゃっかり朝ごはんを食べていくのだ。
さてと…儀式はとうとう明日か…一体なんの職業適性が出るんだろうか。まあ、どのみちホスロの土地を継ぐつもりではいるけどね。
午前中は特にやることがなかったので、庭をぶらぶらした後に図書館へと向かった。この図書館は、父が民衆のためにみずからのポケットマネーで作ったもので、毎日たくさんの人が通っている。おかげで、他のどの国よりも識字率は高い。僕はそこで、あるものを探していた。その本というのが、大昔のお偉い魔法使いが死ぬ前に残した魔導書で、世界に3つしかないらしい。しかも、魔法を知らない人がそれを読むだけで、たちまち魔法を唱えられるようになってしまうという素晴らしい魔法道具なのだ。それを、骨董好きの父が掘り出し物市で見つけて買った。最初は胡散臭い本にしか見えなかったらしいが、店主の『ワケあり』という言葉に妙に納得して購入を決断したらしい(?)。
それを、図書館の棚にしまったらしいのだが、平民がそれを読むと、肉体が耐えきれないレベルの魔法も使えるようになってしまい危険だから、回収するようにホスロから頼まれている。
一体どこにしまったのだろうか。
「あ………………」
数十分後、本はあっさりと見つかった。
『危険な本』棚にあった。危ないからそんなの作るんじゃねえよ。同じ棚にあるタイトルは…
『初めての拷問』
よし、帰ろう。
この本を読んで犯罪者増えなきゃいいけど。
午後は自室でゆっくり休もうと思い、メイドさんにおやつを届けるよう頼んで廊下を歩いていた。
窓の外を見ると、厚い雲が広がっているのが見えた。今にも雨が降りだしそうな嫌な雲だ。
ドアを開け中に入ると…そこにはホスロが顔をぐちゃぐちゃにして立っていた。何があったのだろう、胸騒ぎがする。
「ど、どうしたの?」
「……ルーク様がっ………………暗殺されましたっ…!」
「え…………」
僕は、手に持っていたカップを落としてしまった。
静かな部屋にパリーンという音が響く。
…………………父が…………………死んだ……?
とても、信じられなかった。
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