伯爵令嬢の私ですが、冤罪で処刑されるらしいのでこれを機に人生やり直します

3章

48話 合流しました

｢まぁいいけど…リリィもそれを望んでいるらしいからな。ほらリリィ…大丈夫か？ちゃんと歩けるか？｣

　リリィは先程から、ライアーの元へ行きたそうにディルレッドの服の裾を小さく引っ張っていた。
体にほとんど力が入らないリリィからすれば、それが精一杯の意思表明だった。
自力でライアーの元へ戻る事は出来ず、こうして立っていることも辛いという中。
　目の前にライアーがいる。そう分かっているのに傍に行く事が出来ない。
そんなどうしようも無いもどかしさに、消えゆく心が焼かれそうになっているのだ。

｢お嬢様…まさか御自身で立つこともままならないくらい負傷してしまっているのですか？僕はそれを見抜けず……お嬢様の執事失格です…｣

　ライアーが涙をこぼして体を震わせるリリィに駆け寄って、その体を両手でしっかりと支える。

｢どうか、僕の事をお使いください。どんな風にでも構いません。お嬢様のためにこの身を尽くせるのなら…それは本望ですから｣
｢…ぅ………ライ、あー…｣

　リリィは心底安心したような表情を浮かべて、ライアーへと倒れ込みその体を預けた。
倒れ込んでくるリリィの動きに合わせて支えるために使っていた両手を離して、リリィの背中に回した。
リリィがまるで抱きつくような姿勢をとった事により、受け止めるのと同時に反射的にライアーも抱きしめ返したのだ。

｢…っ、らい、あー……ライアー…！もう、はなれちゃ…いや………っ｣

　小さくすすり泣く音に混じって聞こえてくるリリィの声。
それはリリィの残りわずかな心が全て込められた、小さな小さな叫び声だった。

｢──はい、僕は…僕はここに居ますよ、お嬢様。ずっと、もう、何があっても貴女とずっと一緒にいますから｣

　その嘆願に答えるようにライアーはぎゅっとリリィの背中を強く抱きしめた。
それと同時に、ライアーは自分の決断が間違っていた事を知った。
リリィのためを思ってとったその行動が、ほぼ全て裏目に出てしまった。
それらは今も続いていて、リリィを苦しめる事となってしまっていた。

　ライアーの心からの独白は、リリィだけでなくディルレッドへをも影響を与えた。
　
｢ライアー…ライアー……よかった…｣
(……確かに感動の再会なのかもしれないけど…めちゃくちゃ俺蚊帳の外じゃん。この人たち俺の事忘れてない？俺空気じゃん)

　リリィは安心に胸をなでおろしていた。
対してディルレッドは、自分だけが感じているその疎外感に身を縮こませている。
確かに今この瞬間のこの場において、ディルレッドは空気に等しかった。
何故なら今は、何度も言っているがライアーとリリィの感動的な再会を祝する状況だったからだ。