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3章
40話 仲良くしましょうよ
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「ふむ…これは俺の国ではかなりウケたジョークなんだが……この状況ではウケるものもウケないということか…にしてもリリィ、君はどうやら俺とあんまり関わりたく無いみたいだな」
ディルレッドが大真面目にふざけたことを言い出す。
すると突然核心に迫るような事も口にした。
それにより、リリィ肩を跳ね上がらせて咄嗟にディルレッドの顔を見上げた。
そこには、怒ってるわけでは無くむしろ笑っているディルレッドの顔があった。
「きっと貴女は俺と初対面だ。それなのに俺は出逢えたことに感激のあまり距離感を誤ってしまったようだからな…触らぬ神に祟りなしというし、そうやって関わりたくなさそうにしても不思議では無い」
ディルレッドはわざとらしく、妙に引っかかる言い方を選んだ。
まるでこれまでの自分の言動に自覚があるように話す。
しかしこの軽薄男、距離感を誤ったと言いながら離れるつもりは一切無いという。
まるで高慢な王侯貴族のように。どこまでも自分本位に行動していた。
この男はこの国とは海を隔てた先にある海上貿易国家から、この国の騎士団に入団しに来ていた。
先程の『俺の国』という発言は、そこから来たものだろう。
ディルレッドもまた、どこかの男のように遠い過去の日に見た1人の少女に心惹かれていた。
それは父親に連れられて行った、大きな国の王宮で開かれた絢爛豪華なパーティ。
おべっかを並べてゴマをする大人達に愛想笑いをするのにも疲れて、幼いディルレッドが1人で会場内を歩き回っていた時だった。
嘲笑い蔑むような衆目に晒されながらも令嬢らしく凛として佇む、赤い壁の花を見つけたのは。
声をかけようと思っただろう。しかし、ディルレッドが声をかける寸前にこの国の王子が何やら一悶着起こしてしまい、令嬢はその時点で会場を後にした。
だからディルレッドは声をかけられなかったのだ。
しかし、自国に帰ってもその令嬢の姿がどうしても記憶に残り続けた。
だからディルレッドはこの国にまた訪れたのだろう。
とどのつまり。彼の王子のように、この男もまた初恋を拗らせている相手にしない方がいいタイプのストーカーという事だ。
顔が整ってなければ許されないだろう所業をしているのだから。
とまぁ、そんな過去の思い出に固執した男の話術に、正気を保てていないリリィは簡単に引っかかってしまう。
(なんだろうこの人…すごく、変な感じがする……)
何となくそんな気がする。ただそれだけのふとした違和感のようなもの。
だがそれは確実にリリィの中に巣食い始めたのだ。
ただでさえ様々な感情に心を埋め尽くされてしまっているというのに、目の前の男が何者か分からない恐怖にまでも襲われてしまう。
だから離れたいのに離れられないというリリィのこの状況は、事実上の四面楚歌と言っても過言では無いだろう。
ディルレッドが大真面目にふざけたことを言い出す。
すると突然核心に迫るような事も口にした。
それにより、リリィ肩を跳ね上がらせて咄嗟にディルレッドの顔を見上げた。
そこには、怒ってるわけでは無くむしろ笑っているディルレッドの顔があった。
「きっと貴女は俺と初対面だ。それなのに俺は出逢えたことに感激のあまり距離感を誤ってしまったようだからな…触らぬ神に祟りなしというし、そうやって関わりたくなさそうにしても不思議では無い」
ディルレッドはわざとらしく、妙に引っかかる言い方を選んだ。
まるでこれまでの自分の言動に自覚があるように話す。
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まるで高慢な王侯貴族のように。どこまでも自分本位に行動していた。
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先程の『俺の国』という発言は、そこから来たものだろう。
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おべっかを並べてゴマをする大人達に愛想笑いをするのにも疲れて、幼いディルレッドが1人で会場内を歩き回っていた時だった。
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声をかけようと思っただろう。しかし、ディルレッドが声をかける寸前にこの国の王子が何やら一悶着起こしてしまい、令嬢はその時点で会場を後にした。
だからディルレッドは声をかけられなかったのだ。
しかし、自国に帰ってもその令嬢の姿がどうしても記憶に残り続けた。
だからディルレッドはこの国にまた訪れたのだろう。
とどのつまり。彼の王子のように、この男もまた初恋を拗らせている相手にしない方がいいタイプのストーカーという事だ。
顔が整ってなければ許されないだろう所業をしているのだから。
とまぁ、そんな過去の思い出に固執した男の話術に、正気を保てていないリリィは簡単に引っかかってしまう。
(なんだろうこの人…すごく、変な感じがする……)
何となくそんな気がする。ただそれだけのふとした違和感のようなもの。
だがそれは確実にリリィの中に巣食い始めたのだ。
ただでさえ様々な感情に心を埋め尽くされてしまっているというのに、目の前の男が何者か分からない恐怖にまでも襲われてしまう。
だから離れたいのに離れられないというリリィのこの状況は、事実上の四面楚歌と言っても過言では無いだろう。
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