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3章
22話 王都にて。セルナフィア視点続き
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その瞬間。わたしの脳は緊張状態へと移行した。
この男は、何故かお姉様の事を聞いてきた。
わたしがお姉様の妹だと気付かれたのか。
それにしては聞き方がおかしい。わたしがセルナフィアだと気づいているのなら、こんなただ伺うのではなく、もっと探るように聞くだろう。
だけどこれは、ただ知っているかと聞かれているだけに思える。
お姉様を探らなければならない事情が、彼にはあるのだろう。
──だけど、わたしはそれが許せない。
赤の他人にお姉様の事を知って欲しくない。
わたしのお姉様へと無闇矢鱈と踏み込む事が許せない。
聞き出さないと。彼から、その真意を。
「…えぇ。確かに知っています。だってその方は、先日公開処刑されてしまったのですから。ですが、それはあなたもご存知でしょう?」
「そうなんだが……もしかしたら、お嬢さんならセレスティア・アルセリアと関わりがあったかもしれないと思ったんだ。だってお嬢さん…貴族令嬢だろう?」
この人は、どういう訳か顔も何もかも隠したわたしの事を『貴族令嬢』だと見抜いた。
そしてそんな貴族令嬢だからこそ、同じく貴族令嬢だった──伯爵令嬢だったお姉様との関わりが何かあったのではと、彼はそう考えているのだろう。
実に不愉快だ。お姉様の事だけでなく、わたしの事情にまで土足で踏み込もうとしてくるなんて。
「……どうしてわたしが貴族令嬢だと思ったんですか?」
必死に怒りなどの感情を押し殺して、騎士の男に問い返す。
すると、彼はそのわたしの問に平然としながら答えた。
「そりゃあ…あんたのその喋り方とか、仕草とか、姿勢とか……貴族社会で生きてきたとしか思えなかったからだけど」
ああ…なるほど。貴族たるべしと教えこまれてきたものが今更抜けるはずもない。
その所作のひとつひとつを見抜かれたのか。
少し不安になったけれど、思ったよりも呆気ない理由にある意味安心した。
この男は、わたしの事を知らない。
だけどお姉様の事を探ろうとする理由はまだ分からない。
理由によっては、この男を──殺さないと。
『ほぅ、殺るのか?良いではないか…自分勝手な理由で無辜の民を殺す……ふっ…何と愉快な事か』
「そういう訳だから、何かセレスティア・アルセリアについて知ってることがあれば聞きたいんだけど…どうかい?」
頭に直接響く悪魔の笑い声と、耳に届く騎士の男の問い掛け。
はっきり言おう。話のタイミングが完璧に一致していたせいで、どちらも全く聞こえない。
悪魔さん…とりあえずあなたは黙っててくださると嬉しいのだけれど。
『おい貴様さっきから我の扱いが雑ではないか?』
静かにしててください。わたしは今彼と話をしているんです。
この男は、何故かお姉様の事を聞いてきた。
わたしがお姉様の妹だと気付かれたのか。
それにしては聞き方がおかしい。わたしがセルナフィアだと気づいているのなら、こんなただ伺うのではなく、もっと探るように聞くだろう。
だけどこれは、ただ知っているかと聞かれているだけに思える。
お姉様を探らなければならない事情が、彼にはあるのだろう。
──だけど、わたしはそれが許せない。
赤の他人にお姉様の事を知って欲しくない。
わたしのお姉様へと無闇矢鱈と踏み込む事が許せない。
聞き出さないと。彼から、その真意を。
「…えぇ。確かに知っています。だってその方は、先日公開処刑されてしまったのですから。ですが、それはあなたもご存知でしょう?」
「そうなんだが……もしかしたら、お嬢さんならセレスティア・アルセリアと関わりがあったかもしれないと思ったんだ。だってお嬢さん…貴族令嬢だろう?」
この人は、どういう訳か顔も何もかも隠したわたしの事を『貴族令嬢』だと見抜いた。
そしてそんな貴族令嬢だからこそ、同じく貴族令嬢だった──伯爵令嬢だったお姉様との関わりが何かあったのではと、彼はそう考えているのだろう。
実に不愉快だ。お姉様の事だけでなく、わたしの事情にまで土足で踏み込もうとしてくるなんて。
「……どうしてわたしが貴族令嬢だと思ったんですか?」
必死に怒りなどの感情を押し殺して、騎士の男に問い返す。
すると、彼はそのわたしの問に平然としながら答えた。
「そりゃあ…あんたのその喋り方とか、仕草とか、姿勢とか……貴族社会で生きてきたとしか思えなかったからだけど」
ああ…なるほど。貴族たるべしと教えこまれてきたものが今更抜けるはずもない。
その所作のひとつひとつを見抜かれたのか。
少し不安になったけれど、思ったよりも呆気ない理由にある意味安心した。
この男は、わたしの事を知らない。
だけどお姉様の事を探ろうとする理由はまだ分からない。
理由によっては、この男を──殺さないと。
『ほぅ、殺るのか?良いではないか…自分勝手な理由で無辜の民を殺す……ふっ…何と愉快な事か』
「そういう訳だから、何かセレスティア・アルセリアについて知ってることがあれば聞きたいんだけど…どうかい?」
頭に直接響く悪魔の笑い声と、耳に届く騎士の男の問い掛け。
はっきり言おう。話のタイミングが完璧に一致していたせいで、どちらも全く聞こえない。
悪魔さん…とりあえずあなたは黙っててくださると嬉しいのだけれど。
『おい貴様さっきから我の扱いが雑ではないか?』
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