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2章

小話 回想、エルリデュース視点続き

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 それから2年間、オレは社交界に頻繁に足を運んでは横柄な態度を取り、積極的に周りの人間からの顰蹙を買っていった。

 結果は上々。オレは見事に、民衆から『顔と地位と財産以外取り柄のない自分勝手なクソ王子』と呼ばれる事に成功した。

 あの女を処刑するための偽の罪状も用意した。
それを裏付ける証拠や資料も用意した。
後はオレが、この手であの女を殺すだけだ。

 何も知らない衛兵を巻き込んでセレスティア・アルセリアを包囲する。
もし抵抗されたら無理やり取り押さえるつもりだったのだが、あの女は無抵抗に捕まった。

 ──また、あの日のように全てを諦めたように微笑みながら。

 あの女とその執事の男を投獄して、そこに兵は配置しないようにした。

 この隙にどうにかして逃亡してくれと祈る事しかオレには出来なかった。

 魔法を使って城を抜け出しても問題無いよう、昨夜のうちに予め事故を装って城壁に展開されている魔法障壁は壊しておいた。
完全な修復には丸2日はかかる。だから今しかない。

 処刑はなるべく早く行わなければならなかった。
あまりにも執行までに時間が空くと、何らかの妨害を受ける可能性がある。
しかし、あの女には逃亡して貰わないといけない。

 だからこそ、朝に投獄しておよそ夕方に処刑する事とした。
それがオレに出来る最大限の時間稼ぎだった。

 処刑の時刻が目前となった際に、牢獄へと行くとそこには変わらずあの女と執事の男がいた。
オレはあの女だけを連れて処刑場へと向かった。
 本当に逃げられたのか疑わしい。ここに居るこの女は確かにセレスティア・アルセリアだ。

 だがしかし、これは
見た目は本当にセレスティア・アルセリアそのものなのだが、雰囲気が違う。
あの女はこんな顔をしない。そんな風に笑わない。

 ハルドフ曰く執事の男は魔法に異様に長けた者だったらしい。
大方、この女は執事の男が魔法で姿形を変えた別の何かなのだろう。
その割には精巧すぎる気がするが……それほどにあの執事の男が優秀ということか。

 これがあの女では無いと分かった以上、心置き無く処刑を執行できる。

 面白半分で見物に来た民衆を前に立ち、断頭台の上に立つ。

「これより第三王子暗殺未遂及び国家反逆罪により、大罪人セレスティア・アルセリアの処刑を執り行う!!」

 オレ自ら処刑の開始を高らかに告げる。
それに合わせ、衛兵によって連れてこられた1人の女が断頭台へとその朱い頭を置く。

 初めて見た時から、忘れることは無かった。
忘れられなかった。その髪の色も、微笑みも。声も、仕草も。

「その大罪、死をもって償うがいい。セレスティア・アルセリア!」

 溢れ出しそうになる感情を無理やり押し込めて、精一杯力の限り叫ぶ。
ダンッと大きな音を立てて刃が落とされる。

 瞬く間に断頭台は血溜まりとなり、そこに転がる朱い頭に視線を落とす。

 たとえ偽物だと分かっていても。辛いものは辛かった。
これ程までに苦痛な事は今まで無かった。
今まで味わってきた全ての痛みや苦しさよりも、今この時の苦しさの方が酷く、辛い。

「セレスティア・アルセリアはここに死んだ!!この女はもうこの世にいない!」

 これで、お前はもう自由だ。
セレスティア・アルセリアでは無い別の誰かとなって、自由に生きてくれ。

 これで、お前の因果やら枷やらを断ち切れたはずだ。
だからもう何にも縛られず、やりたい事をやって好き勝手に生きてくれ。

 これはオレの自己満足だ。勝手な押し付けだ。お前のためだとか言ったオレのエゴだ。
オレの分も、自由になってくれ。

さようなら──だいきらいだいすきだったセレスティア。
 
 もうあんな風に笑うなよ、セレスティアでは無い別の誰かさん。
何せこのオレがここまでしてやったんだ。
だから──。


「──精々幸せになって笑って生きてみせろよ、笑顔下手くそ女」










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