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2章
小話 回想、エルリデュース視点
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オレは幼い頃、忌み子といわれていた。
王家の血筋の者に与えられるはずの、神の御加護がオレには与えられていなかったから。
ずっと親や兄たちに敬遠されて生きていた。
城に仕える者達も、腫れ物に触るかのようにオレに接しているのかと思えば、影ではやれ忌み子と誹るばかり。
親や兄たちに相談もできない。仲間なんていない。信頼できる人もいない。
オレは、今までもこれからもずっと独りで生きていくのだと思っていた。
7歳くらいの時、王宮で開かれたパーティにあの女がいた。
それと同時にあの女の噂を耳にした。美しい金の髪を持つアルセリア伯爵家に産まれた、異端の赤毛の令嬢。
絢爛豪華で人の溢れるパーティ会場で壁の花となっていたあの女を見て、オレはふと思った。
──あぁ、あの女も…オレとおなじなんだ。
「なぁ、そこのお前……お前も独りなんだよな?オレと一緒だな」
やっと見つけた、オレとおなじ人間。
どうにかして仲良くなりたかった。だから、オレにしては珍しく、そうやって歩み寄ってみた。
でも、あの女はオレに何を言われようが全てを否定した。まるで、それが当然だと言わんばかりに。
やっと見つけたおなじ種類の人間。
仲間ができる、理解し合える人をようやく見つけられたと思っていた。
だけど違った。勇気を出して歩み寄ろうとしたら、その歩みを阻まれ拒まれた。
手を取り合えると思って手を差し出せば、その手を振り払われた。
「1人ぼっちのわたしに同情して、話しかけてくださったのでしよう?でも、わたしは慣れてるので大丈夫です。わたしに関わっては、あなた様の外聞が傷ついてしまいますから…早く、わたしから離れてください」
そう言ってあの女は微笑んだ。
──ちがう。同情なんかしてない。
オレは、オレは、ただ……お前となら手を取り合えるって思っただけなんだ。
オレとおなじような境遇に生きるおなじような人間。
オレたちなら、お互いの苦しみや辛さを理解し合えるって…そう、思っただけなのに。
なんで、なんでお前はそんな風に笑えるんだ。
散々嫌味を言われて、嫌われて、ないがしろにされて、道具のように扱われて…なんでまだ笑えるんだ。
オレとおなじじゃないのか?
オレとおなじなのに、お前はオレのことを笑うのか?拒絶するのか?
どうしてお前は──独りぼっちなのに笑っていられるんだ?
やっと仲間を見つけられたと思ったのに。
その人間はオレとおなじなのに、オレと全然違った。
まるで、この地獄のような人生を受け入れているようだった。
どうしようもなくあの女にむかついた。
最初からすべてを諦めているようなあの女が。
どうしようもないと何もかも受け入れているようなあの女が。
仕方が無いと下手くそに笑うあの女が。
どうしようもなく、オレは──あの女がすきになった。
それからというもの、あの女の事はできる限り考えないようにした。
あの女の事は忘れた方がいい。そう判断したから。
…忘れられるはずが無かった。何をしても忘れられなかった。
宮廷魔道士に頼んで忘却魔法をかけてもらった事もあった。
それでも、またすぐにあの女のことを思い出してしまった。
今でもあの時の、何もかもを諦めたように笑うあの女の顔が脳裏にこびり付いている。
どれだけ取り繕っても、どう足掻いてもオレは独りぼっちなのだと言いたげに。
ずっと、あの笑顔が忘れられなかった。
王家の血筋の者に与えられるはずの、神の御加護がオレには与えられていなかったから。
ずっと親や兄たちに敬遠されて生きていた。
城に仕える者達も、腫れ物に触るかのようにオレに接しているのかと思えば、影ではやれ忌み子と誹るばかり。
親や兄たちに相談もできない。仲間なんていない。信頼できる人もいない。
オレは、今までもこれからもずっと独りで生きていくのだと思っていた。
7歳くらいの時、王宮で開かれたパーティにあの女がいた。
それと同時にあの女の噂を耳にした。美しい金の髪を持つアルセリア伯爵家に産まれた、異端の赤毛の令嬢。
絢爛豪華で人の溢れるパーティ会場で壁の花となっていたあの女を見て、オレはふと思った。
──あぁ、あの女も…オレとおなじなんだ。
「なぁ、そこのお前……お前も独りなんだよな?オレと一緒だな」
やっと見つけた、オレとおなじ人間。
どうにかして仲良くなりたかった。だから、オレにしては珍しく、そうやって歩み寄ってみた。
でも、あの女はオレに何を言われようが全てを否定した。まるで、それが当然だと言わんばかりに。
やっと見つけたおなじ種類の人間。
仲間ができる、理解し合える人をようやく見つけられたと思っていた。
だけど違った。勇気を出して歩み寄ろうとしたら、その歩みを阻まれ拒まれた。
手を取り合えると思って手を差し出せば、その手を振り払われた。
「1人ぼっちのわたしに同情して、話しかけてくださったのでしよう?でも、わたしは慣れてるので大丈夫です。わたしに関わっては、あなた様の外聞が傷ついてしまいますから…早く、わたしから離れてください」
そう言ってあの女は微笑んだ。
──ちがう。同情なんかしてない。
オレは、オレは、ただ……お前となら手を取り合えるって思っただけなんだ。
オレとおなじような境遇に生きるおなじような人間。
オレたちなら、お互いの苦しみや辛さを理解し合えるって…そう、思っただけなのに。
なんで、なんでお前はそんな風に笑えるんだ。
散々嫌味を言われて、嫌われて、ないがしろにされて、道具のように扱われて…なんでまだ笑えるんだ。
オレとおなじじゃないのか?
オレとおなじなのに、お前はオレのことを笑うのか?拒絶するのか?
どうしてお前は──独りぼっちなのに笑っていられるんだ?
やっと仲間を見つけられたと思ったのに。
その人間はオレとおなじなのに、オレと全然違った。
まるで、この地獄のような人生を受け入れているようだった。
どうしようもなくあの女にむかついた。
最初からすべてを諦めているようなあの女が。
どうしようもないと何もかも受け入れているようなあの女が。
仕方が無いと下手くそに笑うあの女が。
どうしようもなく、オレは──あの女がすきになった。
それからというもの、あの女の事はできる限り考えないようにした。
あの女の事は忘れた方がいい。そう判断したから。
…忘れられるはずが無かった。何をしても忘れられなかった。
宮廷魔道士に頼んで忘却魔法をかけてもらった事もあった。
それでも、またすぐにあの女のことを思い出してしまった。
今でもあの時の、何もかもを諦めたように笑うあの女の顔が脳裏にこびり付いている。
どれだけ取り繕っても、どう足掻いてもオレは独りぼっちなのだと言いたげに。
ずっと、あの笑顔が忘れられなかった。
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